勝利はおよそ二つに分類される。内容の伴った勝利と、結果だけが評価される勝利だ。
ホームのテストマッチに求められるのはどちらか。内容の伴った勝利であることは言うまでもない。中２日の連戦や日本国内を襲う猛暑、さらにはケガ人の続出による控え選手の少なさといったエクスキューズはもちろん承知である。国内組と海外組の区別はなしに、このタイミングでケガをしたくないという心理が働くのはしかたのないことだろう。

エクスキューズはいくらでもあるのだが、相手はＦＩＦＡランキング１１９位である。強さを見せつけてしかるべきゲームだったから、２−１では辛勝という評価を免れない。

南アフリカ・ワールドカップのチームは、ともすれば臆病にも受け取れる慎重な試合運びを出発点に、少しずつ大胆さを加えていった。１−０で勝利したパラグアイ戦にしても、アグレッシブさのなかに注意深さが織り交ぜられていた。ワールドカップに比べてシステムと人選が攻撃的で、システムに縛られない伸び伸びとした印象を与えたものの、ボール支配率でもシュート数でもパラグアイに先行されている。日産スタジアムで戦ったチームには、国際試合を戦ううえで必要な警戒心があった。

ひるがえってグアテマラ戦である。彼我の実力を考慮すれば、慎重さではなく大胆さが先行するのは妥当である。少しぐらい強引にでもシュートへ持ち込む姿勢はあっていい。23本のシュートを浴びせ、11度の決定機でわずか２点しか奪えなかったのはあまりにお粗末だが、「なぜそこでパスを出すのか」という消極性を感じさせなかったことは評価したい。この日のゲームで見せた責任感を、どんな相手でも発揮してほしいと思う。

しかしながら、積極さと高慢さは似て非なるものであある。シュートを打てるシーンでなおパスを廻したり、テクニックを披露するかのように相手をかわそうとするのは、試合が必要とするプレーではない。ゲームへのリスペクトを欠いた高慢さの表出だ。

個人的にとても残念だったのは、積極性ではなくエゴと受け取れるプレーでボールを失ったり、攻守が入れ替わった際の周囲の反応だった。誰も怒らないのである。天を仰いだり、叫んだりする選手はいても、チームメイトにダイレクトに感情をぶつけるシーンはほとんど見ることができなかった。

その原因については別の機会に検証していくとして、14本のシュートを打ちながら２点に終わった前半に、活発な意見交換なり前向きな衝突が交わされていたら──結果は違ったものになったと思うのだ。本田や香川、森本や乾らの才能豊かな選手たちが、もっと正面からぶつかっていくことで、グアテマラのような相手とのテストマッチでも価値を高めることはできたと思うのである。
モチベーションをあげたり、力を振り絞るのが難しい状況だったとしても、選手たちのどこかさばさばとした雰囲気が僕には残念だった。（了）