岡田監督の采配もまた、大きな意味を持つ──前回の原稿で書いたことはある意味でそのとおりとなり、予想していなかった反応もピッチ上に現れてきた。６月24日に行われたデンマーク戦が終わっての感想である。

引き分け以上でも決勝トーナメント進出が決まるこの試合で、岡田監督はシステムを４−２−３−１に変更してきた。中盤は阿部と遠藤のダブルボランチとなり、右から長谷部、大久保、松井が並び、本田が１トップに入る。とはいえ、きっちりとした４−２−３−１には見えにくいところがあり、それがそのまま立ち上がりの混乱を招いていた。

トップ下のトマソンをあれだけフリーにすれば、決定機を作られてしまうのは必然で、ひとつのマークのズレが違うゾーンへ悪影響を及ぼしていく。左ＭＦのカーレンベルクがポジションを下げ、連動して左サイドバックのＳ・ポウルセンが攻め上がってくる日本の右サイドは、キックオフ直後から混乱に陥っていた。「精神的に守りにはいるな」というメッセージとしてのシステム変更が、マイナスに作用してしまったのだ。

ここで失点を献上していたら、結果はおそらく違うものになっていただろう。だが、日本のゴールネットが揺れることはなく、逆に決定機を作ることができていた。綱渡りをするような展開でありながら、試合前のアドバンテージは保たれていたのである。

そして、本田が試合を動かす。ジャブラニを操れずにいる選手が多いなかで、驚異的なブレ球を蹴り込んだ一撃は、30メートル以上の距離があったことを考えても鮮烈である。「ＧＫが逆に動いてくれたんで、狙いどおりだった」という左足シュートには、文句のつけようがない。

遠藤のＦＫも効果的だった。不用意な反則はできないとい意識を相手ＤＦに刷り込ませた意味でも、立て続けにネットを揺すったのは黄金の価値があった。

グループリーグ突破の条件を優位にした日本は、後半の立ち上がりをしのだことでさらに立場を強める。変化が訪れたのはここからだ。後半早々からパワープレーに転じてきた相手の攻撃をしのぐだけでなく、追加点を狙う姿勢を見せていくのである。

デンマークが前がかりになってきたことを考えれば、カウンターをとろうとするのは当然ではある。だが、守備重視の戦略を堅持することに精いっぱいで、攻撃に人数をかけられなかった過去２試合に比べると、思い切った飛び出しが繰り出されていたのは確かだろう。遠藤や阿部の攻め上がりは誰の目にも明らかだっただろうが、ＣＢの中澤も意欲を示していたのはオランダ戦まで見られなかったもの──人もボールも動く全員攻撃・全員守備を標榜していたかつての姿を思い描かせた。これはもう、選手自身の判断によるものだ。

守ることで可能性を切り開いてきたチームは、W杯を勝ち抜くためのコンセプトを保ちながら、さらに一歩前へ踏み出そうとしている。パラグアイ戦はこれまでの３試合と違う構図になることが予想されるが、「いまは簡単にやられる気がしない」というゲームキャプテン長谷部のコメントは、確かな説得力を持っている。

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