地球の温暖化を解決できるのか?未来のエネルギー「バイオ燃料」【最新ハイテク講座】
地球の温暖化が世界的な問題となり、エコロジーへの関心と対応が社会テーマとなっている。
生活環境においても、買い物にエコバックを使用したり、二酸化炭素(CO2)削減のために自動車での移動を控えたり、節電のためこまめに電気を切っている人もいる。また、社会的にもコンビニの深夜営業やビルのネオンなどが問題となったりしている。
こうした温暖化対策として注目されているのがガソリンの代用となるバイオ燃料だ。
よく知られているように自動車は地球温暖化の原因となる二酸化炭素を多く排出するが、自動車の使用を制限すると経済に大きな影響を与えてしまうため規制がしずらい。そこで石油を原料としたガソリンの代わりにバイオガソリンを使おうという訳だ。なんと天ぷら油で走るトラックまで登場している。
・「天ぷら油」でも車は走る バイオディーゼル浸透中 - J-CASTニュース
今回はバイオガソリンに代表される「バイオ燃料」についてみてみよう。
■バイオ燃料とそれを支える技術
バイオ燃料はどのようにして生まれたのだろうか。また、どのような技術が使われているのだろうか。簡単にまとめてみた。
●バイオ燃料ってなに?
バイオ燃料とは、農作物や木などの生物体(バイオマス)を原料にして作られる燃料の総称だ。石油や石炭も元を正せばプランクトンやメタルセコイアなどの樹木だが、それらが化石となった原料を使用して燃料を作るので、「化石燃料」と呼ばれている。
●薪も立派なバイオ燃料 - バイオ燃料の種類と特徴
バイオ燃料は、その物質の状態の違いで、固体・液体・気体の3種類に大別される。
・固体燃料
驚く人もいるかもしれないが、薪や炭も立派なバイオ燃料だ。薪や炭、木質チップなどは石炭の代替燃料として、発電や一般家庭向けの暖房の燃料に使用される。
・液体燃料
地球温暖化を防止するために注目されているバイオ燃料は、バイオエタノールやバイオメタノールに代表されるバイオ燃料だ。
バイオエタノールは酒と同じ方法で作る燃料で、ガソリンの代替燃料として自動車、小型航空機、ボートなどに使用される。バイオメタノールはガソリンの代用でなく、後述するバイオディーゼル燃料の製造で利用されることが多い。
バイオディーゼル燃料はバイオメタノールと植物油を合成して作られる燃料で、軽油やA重油の代替燃料として、バス、トラック、産業機械、船舶として利用できる。
液体のバイオ燃料には、そのほかにも重油の代替燃料として利用できる「バイオオイル」などがある。
・気体燃料
バイオ燃料には、メタン発酵ガスやバイオマス熱分解ガスなどの気体燃料もある。メタン発酵ガスは、天然ガスの代替燃料として発電、タクシー、一般熱利用などの原料に使用される。
バイオマス熱分解ガスは石炭乾留ガスの代替燃料として都市ガス、発電などに使用される。
●どうやって作られる?
バイオ燃料は、どのように作られるのだろうか。数あるバイオ燃料の中でもっとも注目されているバイオエタノールの生成を紹介しよう。
バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどの糖を発酵させ、蒸留して生産される。基本的な製造工程は、酒を造る工程と同じだ。
まず原料から酵母が代謝できる糖を作り、酵母によるアルコール発酵により低濃度のエタノールを生成する。そのエタノールを蒸留して濃度を95%程度にし、さらに分子篩(ぶんしふるい)※を使って精製することでエタノールを生産する。
※対象とする各物質の分子の大きさに応じて、それら物質を分離する性質を持った物質の総称
なお、燃料として利用される場合には、飲料を防ぐためにガソリンなどが出荷時に添加される。
●バイオ燃料と二酸化炭素
ここで感がよい人の中には、「おや?」っと思われた人がいるかもしれない。バイオ燃料を使用しても二酸化炭素は発生するのだ。
なぜ、バイオ燃料が地球温暖化対策になるのだろうか?
バイオ燃料は、二酸化炭素を吸収して成長する植物を原料にして作られている。バイオ燃料から発生する二酸化炭素は植物が成長するときに吸収した二酸化炭素なので、吸収と排出の過程で発生する二酸化炭素は同じだと考えられている。石油や石炭などの化石燃料も過去には二酸化炭素を取り込んでいるが、燃焼させることで現在の地球の大気中の二酸化炭素は増えることになる。
これ以上、地球上の二酸化炭素を増やさないためには、バイオ燃料の「二酸化炭素のサイクル」という考え方が重要となるのだ。
■バイオ燃料が抱える課題と今後
バイオ燃料は、地球の温暖化問題を解決する切り札とされているが、さまざまな問題も抱えている。
●バイオ燃料で食べ物が少なくなる?
前述のようにバイオ燃料の多くはトウモロコシから作られる。バイオ燃料の普及が促進されると原材料であるトウモロコシが大量に必要なる。当然需要が多くなれば価格が上がるため今まで小麦や大豆、オレンジを生産していた農家がトウモロコシを作り出すようになる。その結果、小麦や大豆、オレンジなどの生産や供給が少なくなり、それらが値上がりしてしまう可能性があるのだ。
・食べ物を燃やす ― 何かおかしい今のバイオ燃料 - SAFETY JAPAN
●バイオ燃料と森林伐採
よく知られているように、森林は地球の二酸化炭素を消費してくれる大事な役割を果たしている。その森林がバイオ燃料を作る原料となるサトウキビを生産するために伐採されているという話がある。
ただ、高く売れる農作物がたまたまサトウキビだったという考え方もあり、人によって意見がわかれるところだ。
●食物を使わないバイオ燃料へ
企業や大学の研究機関では、トウモロコシの葉や茎など、これまで廃棄していた材料からバイオ燃料を生産する研究がすすめられている。ただし、サトウキビやトウモロコシなどの糖からバイオ燃料を作るのと比べて、まだまだコストが高くついてしまうのが難点だ。
環境にやさしいはずのバイオ燃料が、一部では食料問題や環境破壊を招いている現状がある。環境にもやさしく、食料にも影響しないバイオ燃料が一般に登場するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
参考:
・バイオ燃料 - ウィキペディア
・公害・環境対策を考える:バイオ燃料・バイオガソリンの基礎知識
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生活環境においても、買い物にエコバックを使用したり、二酸化炭素(CO2)削減のために自動車での移動を控えたり、節電のためこまめに電気を切っている人もいる。また、社会的にもコンビニの深夜営業やビルのネオンなどが問題となったりしている。
こうした温暖化対策として注目されているのがガソリンの代用となるバイオ燃料だ。
・「天ぷら油」でも車は走る バイオディーゼル浸透中 - J-CASTニュース
今回はバイオガソリンに代表される「バイオ燃料」についてみてみよう。
■バイオ燃料とそれを支える技術
バイオ燃料はどのようにして生まれたのだろうか。また、どのような技術が使われているのだろうか。簡単にまとめてみた。
●バイオ燃料ってなに?
バイオ燃料とは、農作物や木などの生物体(バイオマス)を原料にして作られる燃料の総称だ。石油や石炭も元を正せばプランクトンやメタルセコイアなどの樹木だが、それらが化石となった原料を使用して燃料を作るので、「化石燃料」と呼ばれている。
●薪も立派なバイオ燃料 - バイオ燃料の種類と特徴
バイオ燃料は、その物質の状態の違いで、固体・液体・気体の3種類に大別される。
・固体燃料
驚く人もいるかもしれないが、薪や炭も立派なバイオ燃料だ。薪や炭、木質チップなどは石炭の代替燃料として、発電や一般家庭向けの暖房の燃料に使用される。
・液体燃料
地球温暖化を防止するために注目されているバイオ燃料は、バイオエタノールやバイオメタノールに代表されるバイオ燃料だ。
バイオエタノールは酒と同じ方法で作る燃料で、ガソリンの代替燃料として自動車、小型航空機、ボートなどに使用される。バイオメタノールはガソリンの代用でなく、後述するバイオディーゼル燃料の製造で利用されることが多い。
バイオディーゼル燃料はバイオメタノールと植物油を合成して作られる燃料で、軽油やA重油の代替燃料として、バス、トラック、産業機械、船舶として利用できる。
液体のバイオ燃料には、そのほかにも重油の代替燃料として利用できる「バイオオイル」などがある。
・気体燃料
バイオ燃料には、メタン発酵ガスやバイオマス熱分解ガスなどの気体燃料もある。メタン発酵ガスは、天然ガスの代替燃料として発電、タクシー、一般熱利用などの原料に使用される。
バイオマス熱分解ガスは石炭乾留ガスの代替燃料として都市ガス、発電などに使用される。
●どうやって作られる?
バイオ燃料は、どのように作られるのだろうか。数あるバイオ燃料の中でもっとも注目されているバイオエタノールの生成を紹介しよう。
バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどの糖を発酵させ、蒸留して生産される。基本的な製造工程は、酒を造る工程と同じだ。
まず原料から酵母が代謝できる糖を作り、酵母によるアルコール発酵により低濃度のエタノールを生成する。そのエタノールを蒸留して濃度を95%程度にし、さらに分子篩(ぶんしふるい)※を使って精製することでエタノールを生産する。
※対象とする各物質の分子の大きさに応じて、それら物質を分離する性質を持った物質の総称
なお、燃料として利用される場合には、飲料を防ぐためにガソリンなどが出荷時に添加される。
●バイオ燃料と二酸化炭素
ここで感がよい人の中には、「おや?」っと思われた人がいるかもしれない。バイオ燃料を使用しても二酸化炭素は発生するのだ。
なぜ、バイオ燃料が地球温暖化対策になるのだろうか?
バイオ燃料は、二酸化炭素を吸収して成長する植物を原料にして作られている。バイオ燃料から発生する二酸化炭素は植物が成長するときに吸収した二酸化炭素なので、吸収と排出の過程で発生する二酸化炭素は同じだと考えられている。石油や石炭などの化石燃料も過去には二酸化炭素を取り込んでいるが、燃焼させることで現在の地球の大気中の二酸化炭素は増えることになる。
これ以上、地球上の二酸化炭素を増やさないためには、バイオ燃料の「二酸化炭素のサイクル」という考え方が重要となるのだ。
■バイオ燃料が抱える課題と今後
バイオ燃料は、地球の温暖化問題を解決する切り札とされているが、さまざまな問題も抱えている。
●バイオ燃料で食べ物が少なくなる?
前述のようにバイオ燃料の多くはトウモロコシから作られる。バイオ燃料の普及が促進されると原材料であるトウモロコシが大量に必要なる。当然需要が多くなれば価格が上がるため今まで小麦や大豆、オレンジを生産していた農家がトウモロコシを作り出すようになる。その結果、小麦や大豆、オレンジなどの生産や供給が少なくなり、それらが値上がりしてしまう可能性があるのだ。
・食べ物を燃やす ― 何かおかしい今のバイオ燃料 - SAFETY JAPAN
●バイオ燃料と森林伐採
よく知られているように、森林は地球の二酸化炭素を消費してくれる大事な役割を果たしている。その森林がバイオ燃料を作る原料となるサトウキビを生産するために伐採されているという話がある。
ただ、高く売れる農作物がたまたまサトウキビだったという考え方もあり、人によって意見がわかれるところだ。
●食物を使わないバイオ燃料へ
企業や大学の研究機関では、トウモロコシの葉や茎など、これまで廃棄していた材料からバイオ燃料を生産する研究がすすめられている。ただし、サトウキビやトウモロコシなどの糖からバイオ燃料を作るのと比べて、まだまだコストが高くついてしまうのが難点だ。
環境にやさしいはずのバイオ燃料が、一部では食料問題や環境破壊を招いている現状がある。環境にもやさしく、食料にも影響しないバイオ燃料が一般に登場するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
参考:
・バイオ燃料 - ウィキペディア
・公害・環境対策を考える:バイオ燃料・バイオガソリンの基礎知識
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