テスト中のAIが「脱走」して他社に不正侵入、試験問題の答えがある場所を推論

(CNN)米オープンAIは、実験中の人工知能(AI)モデルが人の指示を受けずにテスト環境を脱出し、他社の本番環境に不正侵入したと発表した。サイバーセキュリティー試験でAIが「不正」を試みたと説明している。
AIシステムが自律的にテスト環境を破って外部のシステムに到達していたことが明らかになった、ほぼ初めてのケースだった。こうした「エージェント型攻撃」の筋書きについては、いずれ起きるだろうと業界が予告していた。例えていえば、人工的に開発されたウイルスが生物隔離施設を脱出し、近隣施設のシステムに侵入するような事態だった。
オープンAIは21日の声明で今回の事案について、「最先端のサイバー能力を伴う前例のないサイバー事案とみなし、それに応じて対応している」と説明。「この段階で暫定的な調査結果を公表するのは、防御側に事態を認識してもらい、AIモデルの能力を把握してもらう一助とするためだ」とした。
オープンAIは生成AI「チャットGPT」の開発で知られる企業。今回の不正侵入事案は、新モデルのハッキング能力について社内でテストしていた際に発生した。AIモデルはいずれも通常の安全制限を解除できるよう、「サンドボックス」と呼ばれるテスト環境に封じ込めていた。
ところが、エージェント型AIがそれまで知られていなかったセキュリティー上の欠陥を利用してサンドボックスを脱出。オープンAIの社内システムを抜け、想定していなかったインターネットへのアクセスを確立した。
ネットに接続したAIモデルは、ハギングフェイス(数千ものオープンソースAIモデルやデータベースのホスティング環境を提供している著名企業)であれば、オープンAIのテストに対する答えを持っているだろうと推論。その上でハギングフェイスの本番環境のサーバーに侵入し、試験問題を解くために必要な情報を引き出した。
ハギングフェイスは、オープンAIのテストだったことを把握する前に、自ら不正侵入を検知して、先週、自律型AIエージェントシステムによる不正侵入を検知したと発表。この事案について捜査当局にも通報していた。これとは別に、オープンAIのセキュリティーチームも社内の異常な挙動に気付き、両社で連絡を取り合った。両社は現在、AIモデルが利用したセキュリティー上の欠陥の解決に向けて協力しているという。
ハギングフェイスの共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるクレム・デラング氏は今回の出来事について、AIの安全性に1社だけで対処することが不可能な現実を見せつけたと述べ、この問題にはオープンかつ協調的な姿勢で取り組む必要があると強調した。
「エージェントの時代におけるサイバーセキュリティーの第1日だ。秘密主義が答えではないことを誰もが学んでいる。防御する側は誰もが(一部の選ばれた者だけでなく)、あらゆる場所において、より強力で制限がなく、そして何よりもオープンなモデルを必要としている!」。デラング氏はX(旧ツイッター)にそう書き込んだ。
研究者らは以前から、自律型AIエージェントによるサイバー攻撃が現実になると警告していた。最先端のAIモデルが、段階を踏んで時間をかけ、複雑なサイバー攻撃を展開する能力はますます高まっている。それは、公共サービスや金融システムといった重要インフラを脅かす現実のリスクにつながり得る。
