イタリア代表は2日、ユーロ2008予選において、アウェイでフェロー諸島と対戦する。フェロー諸島は予選グループBでここまで6戦6敗、もちろん勝点0でダントツの最下位(1得点、23失点)。予選全体で他に勝点0は4チームあるが(サンマリノ、アンドラ、エストニア、ルクセンブルク)、そもそも「フェロー諸島」とは一体どんな国でどんなサッカー環境なのか。

 北大西洋に位置するこの地域には主に22の島々があり、そこで漁業を糧にしている4万8千人ほどが住んでいる。遠い昔にノルウェーの侵略を受け、14世紀から今日に至るまで国防、政治の面でデンマークの強い影響下にある。極寒の厳しい気候の中、年中吹きつける強風と雨のせいで、フェロー諸島リーグでは人工芝のグラウンドでなければプレーできない。代表チームはほぼ全員が国内でプレーし、そのレベルはセミプロに留まる。ミラン、インテルなどイタリアのビッグクラブが、欧州カップ戦で足を踏み入れる日など永遠に来ないであろう、最果ての地。「フェロー」とは太古のバイキング語で「羊たちの島」という意味らしい。

 今回、FIFA世界ランキング1位のアッズーリ(伊代表の愛称)がプレーする「トルスボルー」スタジアムは、収容人数わずか6000人強。同ランク185位(199カ国中)にふさわしい牧歌的風情が漂う。2日は伊代表にとって絶対に落とせない一戦だが、フェロー諸島の民にとっては、れっきとした公式戦でW杯王者と相対する晴れの舞台。ホームの声援を受ける羊たちが獅子となって、世界チャンピオンたちを慌てさせることはあるのだろうか。

弓削高志