(※写真はイメージです/PIXTA)

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内閣府の「令和6年度 高齢社会対策総合調査」によると、高齢者が今後優先的にお金を使いたいものとして、約4人に1人(25.8%)が「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げています。また、実際に子や孫の生活費を「負担している」人も25.2%に上ります。可愛い孫のためにできる限りの援助をしてあげたいと思うのは、多くの祖父母に共通する願いでしょう。しかし、そうはいっても一筋縄ではいかないのが、家族間での金銭が絡む関わりです。事例をご紹介します。※事例の人物名はすべて仮名です。

良好だと思っていた、長男夫婦との関係

ともに67歳のマツさんとショウノスケさんのリタイア生活は、余裕のある暮らしではありませんが、お互いに声を掛け合いながら丁寧に家計をやりくりしていました。年金は夫婦で月18万円。日々の食費や光熱費、時折の通院費を払うと手元にそれほど多くは残りません。ですが、現役時代の貯蓄を取り崩すことなく、慎ましい暮らしを送っています。

二人の長男であるショウゴさん(仮名/46歳)は6年前にマナさん(仮名/38歳)と妊娠を機に結婚し、現在は都内のマンションで暮らしています。マツさんは、長男の結婚前、40歳目前にもかかわらず独身であることを心配していたため、年が離れた妻だけれど、ようやく家庭を持つことができたと安堵していました。マナさんは明るい性格で、時折ざっくばらんすぎる物言いが気にはなるものの、遠方に住んでいるため、頻繁に会う機会はありません。ですが、互いに気を遣いすぎずに、付かず離れずのいい距離感を保てていると前向きに捉えるようにしていました。

そんななか、長男夫婦のところにある子ども(マツさんにとっては孫)が、来春に小学校への入学を控えることになりました。マツさんはショウノスケさんと「入学祝いには、5万円くらい包んで渡そうか」と、少しずつ準備を進めていたそうです。

意味不明な郵便物が届く

ある平日の昼下がり。息子夫婦の名前で郵便物が自宅に届きました。事前になにも聞かされていなかったので、不思議に思いながらを開封すると、マツさんは言葉を失い、その場に凍りつきました。

中から出てきたのは、老舗の鞄職人が手がける高級ランドセルのパンフレットでした。そして、そのパンフレットの裏側にクリップでしっかりと留められていたのは、マナさんの直筆で「お支払期日:今月末」と付箋が貼られた、金額「180,000円」のコンビニ払込用紙だったのです。

「これは、これを買えっていうこと……?」とマツさんがショウノスケさんのほうをみると、ショウノスケさんも怪訝な顔をします。

意を決して、まずは息子の携帯に電話を掛けましたが、出ません。次に嫁に掛けてみると、すぐに応答がありました。

嫁の先回り

ランドセルのパンフレットが届いたことをマナさんに伝えると、彼女はこう答えました。

「お義母さんが孫のランドセルについてあれこれ悩まれるといけないと思い、私のほうで一番人気の限定モデルを先着順で予約しておきました! お二方からの最高のプレゼント、子どももきっと大喜びします! お支払いは同封の用紙で大丈夫ですので、よろしくお願いいたしますね」

驚いたマツさんは、なにもいえません。そのあとも嫁はなにかいっていたようですが、耳に入りませんでした。電話を切ると、長男のショウゴさんに何度も電話をかけますが、やはり出ません。夜になってようやく折り返しがくると、話をすることができました。すると、「マナも悪気があってやったわけじゃないし、せっかく予約してくれたんだからさ。お祝いなんだから、それくらい払ってやってよ」とショウゴさんはいい、実家の懐事情をまったく理解していない暢気な言葉に頭を抱えます。

月18万円の年金で暮らす高齢夫婦にとって、18万円の突発的な出費は、ちょうど1ヵ月分の生活費が丸々吹き飛ぶことを意味します。「お祝いは気持ちの範囲で」と考えていたマツさんたちの計画は、嫁の独断による先回りによって根底から覆されてしまいました。

「親世代は余裕がある」という勘違い

40歳を過ぎてようやく家庭を持った息子夫婦への安心感は、皮肉にも「親の懐事情を想像できない子どものままだった」という冷徹な現実によって打ち砕かれました。子育て世代の経済的な大変さは事実だとしても、「親世代は年金をもらっているから余裕があるはずだ」という子ども側の勝手な思い込みは、時に悪意のない刃となって高齢の親を追い詰めます。

孫への可愛さや身内の世間体を優先して、一度でもこの「18万円の請求書」に応じてしまえば、若者側の「実家に頼ればなんとかなる」という甘えを肯定することになりかねません。現役時代にどれほど真面目に蓄えても、身内のノンキな経済感覚に付き合っていては、老後資金などあっという間に底をついてしまうでしょう。