【解説】「106万円の壁」見直しでメリット・デメリットは?「103万円の壁」に先にある「130万円の壁」の問題も
「106万円の壁」の見直しでどういったメリット・デメリットが出てくるのかみていきます。
メリットは、従業員・事業主も将来もらえる年金額が増えるといわれています。
デメリットは、従業員の場合は保険料が増えるため手取りが減るのではというところ、事業主は保険料を従業員と分担するため負担が増えるといわれています。
SPキャスター・中村竜太郎氏:
せっかく見直しをしているわけですから、メリットよりもデメリットが極力小さい方がいいわけですから、そこは今一度、ちゃんとシステム作りを考え直した方がいいと思います。
「106万円の壁」の見直しの狙いについて、社労士で税理士の渋田貴正氏に聞きました。
狙いとしては、徴収する保険料を増やすことで「社会保険財政の安定化」「老後の備え」を手厚くするメリットがあるということです。
一方で、負担が増えるため保険料の支払いが大変になってくるわけです。
15日の部会では、働く側が少しでも手取りの金額が減ることを避けるために、事業主の負担を増やすという案が出ています。
現在の保険料の負担は、事業主と従業員が双方50%で折半するのが原則としてありますが、15日の部会で出た新たな案は、合意があれば「事業主60%−従業員40%」「事業主70%−従業員30%」「事業主80%−従業員20%」と事業主の負担を増やし、従業員の負担を軽減していくという案になっています。
青井実キャスター:
話し合って合意があればということですが、事業主側の負担がどんどん増えてしまいそうな気がするのですが。
話し合って合意があればということですが、事業主側の負担がどんどん増えてしまうのではないかというところで、90人以上のパート従業員がいる訪問看護の会社を取材しました。
「訪問看護ステーション ブロッサム」は、「お金の問題は確かにあるが、従業員のリストラはしたくない。働き方を一緒に考えながらお付き合いしていく」ということでした。
ただ、訪問看護ならではの悩みもあり、サービスの利用者にとっては“年収の壁”というのは関係ない話のため、「問題があることによって利用者に負担を与えてしまうおそれもある」と話してくれました。
青井実キャスター:
1人あたり働ける時間が増えて、例えば従業員の人数を減らすとなったら困るわけですし、従業員を助けようとした仕組みが作られるのはいいことですが、しわ寄せもあるわけで。
会社の負担が増えることで、結果的に働く側に不利益がないようにしてもらいたいですよね?
SPキャスター・中村竜太郎氏:
日本は圧倒的に中小企業が多いわけです。そうなると、こういった負担の割合によっては事業主も結構な負担がかかってしまう。
今出ているような5対5という比例もあると思いますが、会社の規模であったり、業績によって柔軟に配分を変えていくといった考え方も必要なんじゃないかと思います。
忘れてはいけないのが、「103万円の壁」「106万円の壁」その先にある「130万円の壁」と1つの壁がクリアになっても、また次の壁があります。
厚労省は「第3号被保険者制度」について、「会社員や公務員の扶養に入っている配偶者の制度については、今後さらに縮小の方向に向かっていく。ただ、中には働くことが難しい人もいて、制度のあり方や今後のステップを考えていくのがさらに今後の論点になってくる」と言っています。
SPキャスター・中村竜太郎氏:
なるべく最大限我々も納得できるようなシステム作りをいろいろ議論しながら進めていってほしいと思いますね。
青井実キャスター:
年金という形で未来に欲しい人もいれば、今欲しいという人もいますし、家庭が共働きだったりといろんな家庭のケースがあるので、誰かがこぼれ落ちないように、誰かが損をしないように一生懸命考えていただきたいなと思います。