【解説】“時速194km走行”は「危険」か「過失」か…ポイントは「制御が困難だったか」 法務省の検討会で基準の明確化への動きも

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大分市で2021年2月、右折中の車に時速194kmで直進してきた車が衝突し、50歳の男性が死亡した。
事故の裁判では、この高速走行が危険運転か過失運転かが争点となり、基準の明確化が議論されている。

時速194kmの死亡事故…危険運転か過失運転か

2021年2月、大分市の県道交差点で右折中の車が猛スピードで直進してきた車と衝突し、右折していた小柳憲さん(当時50)が死亡した。

直進する車を運転していたのは、当時19歳の男で、衝突した時のスピードは、時速194kmだった。
12日の裁判では、時速194kmでの走行は、危険運転か過失運転かが争点となった。

宮司愛海キャスター:
「危険運転」の対象になる行為は、「酒・薬物で正常な運転が困難」、「進行の制御が困難な高速度」、「無免許運転など」、「通行妨害・あおり運転」、「信号無視」、「通行禁止道路を進行」の大きく分けて6つがあります。今回の裁判のポイントとなるのは、「進行の制御が困難な高速度」です。

宮司キャスター:
今回の裁判で検察側は、現場の県道にはわだちや凹凸があり、時速194kmで走った場合、車体が大きく揺れ、ハンドル操作を誤るおそれがあったいう点で、「危険運転」を主張しています。弁護側は、県道に危険な障害物はなく、被告は車線からはみ出すことなく、まっすぐ走っていたということで、「危険運転でない」と主張しています。

青井実キャスター:
ーー同じような事故で、危険運転かどうかが争われたケースは過去にもありましたよね?

宮司キャスター:
例えば2018年、三重・津市の国道で男が車を時速146kmで走らせタクシーと衝突し、4人を死亡させた事故がありました。危険運転致死傷の罪が適用されるかが注目されましたが、判決では「過失運転致死傷罪」が適用されました。

「危険運転」の対象は、「スピード」について明記されておらず、「時速何km以上なら危険運転」などのルールはありません。

「1.5倍や2倍は“危険運転”」明確化の議論に慎重論も

青井キャスター:
ーー今回は、時速200km近いスピードでの死亡事故で、裁判で双方の主張が分かれていますが、分かりやすいラインを作ることはできないのでしょうか?

宮司キャスター:
明確化について動きもあります。法務省が「危険運転致死傷罪」の法改正などを議論する検討会を立ち上げています。その中で、法定速度の1.5倍や2倍のスピードを出していた事故は「危険運転」に該当させようという意見が出ています。

ただ一方で、「道路の形状や、状況察知の困難さが影響するため、速度のみでは推し量れない」などの慎重論も出ています。

交通事故鑑定人の中島博史さんは、危険運転のルール明確化について、「速度だけで考えた場合、法定速度の2倍を目安にして危険運転と判断してよいと思う。速度が2倍を超えると、進行方向に何らかの事象があっても、安全に停止することは事実上不可能」という見解でした。

青井キャスター:
ーーあいまいな基準を明確にしようとする議論ですが、山口さん、どう考えますか?

スペシャルキャスター・山口真由さん:
結果が重大なので、明確化したいっていう気持ちはすごくよく分かるんですが、法律家としては一律化には反対せざるを得ないというふうに思います。

今、最高裁が言うような、わずかな操作ミスで逸脱してしまうということを基準に、道路がまっすぐだったのか、カーブしているのか、幅はどのぐらいなのか、車の性能、そういうことを具体的に判断していかないと、2倍のちょっと手前だったらいいのかとか、そういう難しい判断がやっぱり出てきてしまうのではないかと思います。

青井キャスター:
ーー例えば制限速度時速40km道路で2倍って、時速80kmですよね。そうすると、なかなか危険と言えない速度だったりする感覚もあるかもしれないですよね。

スペシャルキャスター・山口真由さん:
普通に時速80kmで走ってる道って、実はあったりもするんですよね。非常に刑罰が重たいだけに、結果も重たいだけに、とても難しい問題だと思うんですよね。

青井キャスター:
だから、一概に速度だけでは推し量れない側面もあります。この法務省の検討会でも深い議論がされていると思いますが、しっかりと議論していただきたいと思います。
(「イット!」11月12日放送より)