時速194キロでの死亡事故は「危険運転」じゃないの? 焦点は「過失か・危険か」 懲役7年と20年で違い、元警察官が解説 判決は28日に
SNSでは「どう考えても危険だろ」「過失運転という前例を作っちゃダメ」などの声
大分市の県道を時速194キロで走行して他の車両に衝突し、死亡事故を起こした被告の初公判が2024年11月5日に開かれました。
裁判では被告の運転が「危険運転」に当たるかどうかが争点とされていますが、一体どのような行為が該当するのでしょうか。
2021年2月に大分県大分市の県道を時速194キロで走行し死亡事故を起こしたとして、危険運転致死罪に問われている当時19歳の被告の初公判が11月5日、大分地方裁判所で開かれました。
この事故は法定速度が時速60キロの県道を被告がその3倍を超える時速194キロで走行した上、交差点内を右折してきた他の車両に衝突して、運転をしていた当時50歳の男性を死亡させたものです。
検察は当初、被告を過失運転致死罪で在宅起訴していましたが、男性の遺族から厳罰を求める2万8000人あまりの署名が提出されたことを受けて再捜査をおこない、2022年12月に起訴内容を危険運転致死罪へ変更しました。
過失運転致死罪が最大7年の懲役刑となるのに対し、危険運転致死罪は最大20年の懲役刑と、より重い罰則を科されます。
しかし、これまで危険運転致死罪の適用には慎重な判断がおこなわれてきました。
たとえば時速100キロをゆうに超える猛スピードの運転によって発生した福井県福井市内の死亡事故(2020年11月)や三重県津市の死亡事故(2018年12月)では、ドライバーが危険運転致死傷罪などに問われたものの、いずれも過失運転致死傷罪の判決が言い渡されました。
今回の事故もそれらと同様に、時速194キロで走行していた被告の運転が「危険運転」と「過失運転」のどちらに該当するのかが争点となっています。
そもそも危険運転致死傷罪に該当する行為については、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称:自動車運転処罰法)第2条に規定されており、以下のような行為が挙げられます。
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●アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
●進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
●進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(無免許運転など)
●他の人や車両を妨害するような運転行為(割込み、幅寄せなど)
●信号を殊更に無視し、なおかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
●通行禁止道路を進行し、なおかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
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今回の事故では時速194キロで走行したことが上記の「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に当たるかどうかがポイントとなっています。
なおクルマの制御が困難な高速度とは法律上、「速度が速すぎるために、道路状況などに応じて自動車の進行を制御し、進路に沿って進行することが困難となるような速度」と考えられています。
つまり単純に「時速●キロ以上なら危険運転」というように速度だけで決定できるものではなく、道路の形状や路面の状況、クルマの性能などさまざまな点を考慮して判断されるといえるでしょう。
検察は「時速194キロで走行すれば路面の状況から車体に大きな揺れが生じ、ハンドルやブレーキ操作を誤るおそれがある」として、事故当時はクルマの制御が困難だったと主張しています。
その一方で弁護側は、被告が「衝突するまでは車線から逸脱することなく直進できていた」ことを理由に危険運転致死罪は適用されず、過失運転致死罪が成立すると反論しています。
この事故に関してSNS上では「194キロ出して人が亡くなっているのに過失運転だったらおかしい」、「事故をしている時点で制御できてない」、「194キロで走行しても危険運転に当たらないなんて前例を作ったらダメ」などの厳しい意見が聞かれました。
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今回の裁判員裁判は11月5日を含め6回にわたって審理され、11月15日に結審、28日に判決が言い渡される予定です。
判決は今後の事故裁判にも影響を与えるものとみられ、時速194キロという猛スピードによる事故が「危険運転」と判断されるのか、その行方に注目が集まっています。