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 DeNAの2軍練習施設「DOCK」。17年目のベテラン伊藤光捕手は、ここでリハビリ中だ。きょう10日、練習を終えると「順調です。元気ですよ」と笑顔を見せた。

 10月16日の巨人とのCSファイナルステージ初戦練習中。伊藤は「左ふくらはぎ肉離れ」を発症。26年ぶり日本一を目指す戦いの途中で、無念の戦線離脱となった。「ピリッときた感じ。いけるかなと思ったんですが総合的判断で抹消となりました」。悔しさはある。だが、このとき戦友たちはすぐに伊藤に声を掛けた。「球場には来て下さいよ」。

 その声がけの1人に主将の牧がいた。伊藤も「正直(負傷したばかりで)どこにいても一緒かなと。うれしかったです」と東京ドームに足を運び続けた。4勝2敗で勝ち抜け。敵地でナインとともに喜びをわかちあった。

 とはいえ、日本シリーズ、ソフトバンクとの「みずほペイペイドーム」での戦いはテレビ観戦となった。その伊藤に、東京ドームで声がけした牧からLINEで連絡が入った。

 「打てねえ…」。日本シリーズ第4戦を終え、17打数2安打、打率・118。2連敗から2連勝した戦いで、主将には「カヤの外」感があった。

 自宅にいる伊藤に吐露。返信した。「(打席での)呼吸を大事にしたほういいんじゃないか」。伊藤は、過去に呼吸法を学んだことがある。「牧は力んで(打席で)グッと息が止まっているように見えた」。捕手の眼力でスラッガーの不調の一因を見抜いた。

 そして第5戦。牧は1―0の4回第3打席でこの日2安打目の左越えシリーズ1号3ランを放った。「ホントに打ったよ」。その一打にテレビの前で伊藤は腰が浮いた。試合後に牧はアドバイスをくれた同学年の知野とともに伊藤の名前を出した。「言葉をもらいすっきりしました」。

 伊藤がその事実を知ったのは翌日。自身の名が新聞に踊った。「いらんことを言うな」。牧にすぐLINEを送ったが、記者に明かしたときの声は弾んでいた。

 26年ぶり日本一をつかんだ舞台裏には、先輩後輩の壁をこえ主将を「サポート」した、ベンチ外のベテランの「一体感」もあった。

 伊藤はリハビリを続ける。「日本一になったことは素晴らしい。力はある。あとはリーグ優勝。そこに向け僕もやっていく」。そう言って「呼吸」を整えた。「打てねえ」を解き放った35歳は日本一メンバーと来季を戦うことを心待ちにしている。

 (大木 穂高)