約10年ぶりにブームとなっている、アサイーボウル。平成がハワイ発なら、今回は韓国発のブームなのが特徴だ(筆者撮影)

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水分を除去したクリーミーで濃厚なヨーグルトが、グリーク(=ギリシャ風)ヨーグルト。店ではフルーツやハチミツ、シリアルなどのトッピングとともに盛られて提供されることが多い(筆者撮影)

「令和のアサイーブーム」が来た

11月5日に「2024ユーキャン新語・流行語大賞」候補30語が発表。その中に「アサイーボウル」が入った。

アサイーとは、ブラジル原産のスーパーフードとして知られるフルーツで、そのアサイーのペーストとともにフルーツやシリアルを盛り付けたのがアサイーボウルだ。

アサイーボウルは2010年代半ばに一度ブームとなったが、現在は一時期と比べたら下火になっていた。久しぶりにこの名前を聞くとともに、「なぜ今さら?」と思った人も少なくないはずだ。

昔のブームが「平成のアサイーブーム」とするなら、実は今、「令和のアサイーブーム」と呼べるブームが再び来ているのだ。

【画像8枚】「手のひらサイズで2000円近く」「小腹が満たされる程度のボリューム感」…約10年ぶりにブームの「アサイーボウル」。令和と平成の違いとは?

この「令和のアサイーブーム」の源流は韓国だ。近年、韓国のカフェでアサイーボウルが流行しており、日本にその流れが上陸し、Z世代の女性を中心に人気を得ている。

多くのカフェではアサイーボウルとともに、同じく韓国で流行中の「グリークヨーグルト」とともにラインナップされており、この2つがセットで人気となっている。「平成のアサイーブーム」はハワイの朝食ブームから派生しており、この点が大きな違いだ。

話題のアサイーボウルを実食!

今、渋谷や原宿、新大久保などではグリークヨーグルトやアサイーボウルの専門店が次々にオープンしている。

そこで筆者は「令和のアサイーブーム」を体験すべく、今年8月に原宿にオープンしたアサイーボウル専門店「I♡ACAI(アイラブアサイー)」に行ってみた。

YouTubeやSNSで人気のインフルエンサー、中町綾がプロデュースしたとあって話題になっている。


原宿の路地、入り口は奥まった場所にある(筆者撮影)

若者が行き交う原宿の路地、やや奥まった場所に「I♡ACAI」はある。客層はほぼ20歳前後の女性客。テイクアウトも可能だが、今回はイートインで「スタンダードアサイーボウル」を注文。

直径15センチほど、手のひらにのるサイズのプラカップで提供される。イチゴやブルーベリー、バナナ、グラノーラの下にはアサイーのペーストが盛り付けられている。


「I♡ACAI」のメニュー表。アサイーボウルの他にはグリークヨーグルトもある(筆者撮影)

アサイーはその鮮やかな紫色からベリーのような酸味を想像されがちだが、実際にはそこまで酸っぱくはなく、クセのない味わい。ほどよい甘さが加えられており食べやすく、フルーツのトッピングも見た通りの味、という感じだ。

分量は小腹が満たされる程度。女性がデザートや朝食として楽しむぶんには十分だ。



注文した「スタンダードアサイーボウル」(税込み1600円)(筆者撮影)

店内は青と白を基調とした韓国カフェ風のスタイリッシュなデザインで、トレンドが意識されている。インフルエンサーがプロデュースしたという付加価値も相まってここでアサイーボウルを食べるという体験がウケているようだ。

同店のアサイーボウルの価格は1個1600〜1900円で、追加トッピングも可能。ドリンクも注文すると、客単価は2000円を超えると考えられる。

他の店のアサイーボウルについて調べてみても、専門店は概してこれくらいの価格帯が多い。見たところ注文後に素材を盛り付けるくらいで提供でき、職人不要のオペレーションで運営コストは低そうな業態だ。

ラーメンが「1000円の壁」を超えるのにあれだけ苦労した中、アサイーボウルは軽々と超えているのを見ると、ブームおそるべしと感じた。

大手企業もアサイー商品を投入

小規模店のみならず、大手企業もアサイーに注目している。

ファミリーマートではアサイー入り「果肉を楽しむブルーベリーミルク」を10月中旬から発売。

ジョナサンでもドリンクメニューに「アサイーバナナ」が10月24日からラインナップ。かっぱ寿司でも11月7日から期間限定でアサイーボウルが提供される。


ファミリーマートの「果肉を楽しむブルーベリーミルク」(筆者撮影)


(画像:かっぱ寿司のプレスリリースより)

スターバックスでも一部店舗限定で展開する「My フルーツ³ フラペチーノ」シリーズの中で、「アサイー&ブルーベリー」を10月23日から期間限定で発売した。

発売の数日後に販売を行う店舗を訪れてみると、残念ながら売り切れ。スタッフいわく入荷は数日先になってしまうとのことで、ありつけなかった。


看板には「アサイー品切れ」の札が。筆者以外にも売切を残念がる若者の姿があった(筆者撮影)

ブームの証拠に、今年に入ってアサイー商品の企画・販売を手がけるフルッタフルッタの業績が好調だ。

先述のファミリーマートやジョナサン、かっぱ寿司の商品のアサイーを供給しているのも同社だ。業務用のみならず、同社の家庭用アサイー商品「お家でアサイーボウル」は、今年の9月出荷量は前年比1323%を記録。

驚異的な売り上げを見せるが、そもそも同社は「平成のアサイーブーム」とともに業績を伸ばしたものの、ブームの落ち着きとともに近年は赤字が続いていた。

そこに今回の「令和のアサイーブーム」という思わぬ(?)助け舟だ。同社の業績はアサイーブームの勢いと強い相関関係にある。

最近のあらゆるブームは韓国から、もしくは過去のリバイバル

近年、飲食に限らず世の中で起こるブームは、海外で流行ったものの日本上陸、もしくは昔に流行ったもののリバイバルのどちらかというパターンが多い。

アサイーボウルは、昔の流行のリバイバルであり、かつ海外からの上陸であるという両方を満たしている。

先述した通り、2010年代の「平成アサイーブーム」はハワイ由来だ。アサイーボウルはもともとハワイの食文化。ハワイ系のパンケーキやポキ丼など、はじめハワイにまつわる料理に注目が集まり、ハワイアンカフェも増えた。

当時は円高でハワイ旅行に行きやすかったことも影響しているのではないだろうか。

一方で韓国からきている「令和のアサイーブーム」だが、最近の若者のトレンドは食に限らずアイドルやドラマなどのエンタメ、コスメや美容、ファッションなど、あらゆるトレンドが韓国発だ。

例えば、Z世代のファッショントレンドを牽引するアパレル企業のyutoriも韓国ビジネスに熱視線を送っており、韓国のファッションブランド「マリテフランソワジルボー」との業務提携を結んだと10月に発表したばかり。

また、韓国の人気ブランド「マルディメクルディ」は日本でも人気を博しており、近頃は渋谷や下北沢を歩いていると同ブランドの服を来た人と必ずすれ違うほどだ。

昔流行ったもののリバイバルのブームも、さまざまなジャンルで起こっている。エンタメ分野なら2000年代初頭に放映されていた人気リアリティ番組「マネーの虎」が今、YouTubeで「令和の虎」としてリバイバルされて再人気だ。

またファッションでも「平成レトロ」や「Y2K」と称した平成初期のファッションをリバイバルしたスタイルがZ世代に広がっている。

食の分野でもリバイバルの例は枚挙に暇がない。プリンやナポリタン、クリームソーダなどの純喫茶ブーム。ネオ大衆酒場も、昔ながらの大衆酒場を老若男女入りやすくしたリバイバル版と言える。

このパターンは、当時を知る大人からは「懐かしい」、知らない若者には新鮮に映り、両面から支持を得られるのがポイントだ。

再現性のあるものしか流行らない、つまらない世の中に?

海外で流行った、昔流行ったということは、人々を引き付ける魅力あるコンテンツだという証拠になっており、勝率の高い、いわば「再現性」のあるコンテンツということだ。

世の中でどんどん効率化や無駄を省くことに意識が向く中で、「間違いない」「失敗しない」ものが注目されるのは当然の流れか。まったく未知のものは受け入れられるかわからず、リスクが高いのはわかる。

とはいえ、少しでも成功可能性の高いもの、再現性のあるものを、と安全牌ばかり狙いにいく世の中も、少しつまらないような気もする。

(大関 まなみ : フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人)