世界レベルで活躍する有名ビジネスパーソンは、どんな読書をしているのでしょうか?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

日本のビジネスパーソンは、休日を「休息」の時間と考えて、体を休めたり、ストレスの発散を心がけたりしていますが、必ずしも思い通りにはなっていません。休みが明けても、疲れは依然として残ったままと感じている人がたくさんいると思います。

一方、世界の一流は、休日を「何もしない時間」と考えるのではなく、「積極的にエネルギーをチャージする時間」(休養)と「知的エネルギーを蓄える時間」(教養)と位置づけています。世界の一流の休み方を知って、休日の解像度を上げることは、自分の休み方を見つめ直すきっかけになります。

マイクロソフトで役員を務めた越川慎司氏の新刊『世界の一流は「休日」に何をしているのか』をもとに、3回にわたり解説します。

本から知識を深め、発想力を高める

現代はインターネット全盛の時代ですが、グローバル・ビジネスの最前線で働くビジネスパーソンの多くは、読書を通じて知識や知見を深めています。

世界レベルで活躍する有名ビジネスパーソンは、どんな読書をしているのか? 彼らの読書との向き合い方を紹介します。

ビル・ゲイツ 毎週1冊のペースで本を読んでいる

マイクロソフト創業者で、「Windows」の生みの親として知られるビル・ゲイツは、毎週1冊(年間50冊)のペースで本を読んでいます。その大半がノンフィクションで、公衆衛生やエンジニアリング、疾病や科学など、ジャンルは多岐にわたります。

週末には話題の小説を読むこともあり、興味が湧いてくると、深夜まで一気に読んでしまうといいます。ゲイツは毎年11月末になると「今年読んだ最高の本」を紹介しており、そのリストに掲載されると、すぐにアメリカでベストセラーになります。

イーロン・マスク 歴史や哲学の本で広範な知識を得ている

スペースXやテスラCEOのイーロン・マスクは、9歳のときにブリタニカ百科事典の全巻を読破したと伝えられています。若い頃にはSF小説に熱中したこともあり、毎日10時間を読書に費やして、1日2冊のペースで読書三昧の毎日を送っていたといいます。

現在はロケット関連の本を中心に、休日には歴史や哲学、科学の本を読んで広範な知識を得ているそうです。

マーク・ザッカーバーグ 読書を通じて異なる文化や歴史を学ぶ

IT大手メタ(旧フェイスブック)CEOのマーク・ザッカーバーグは、2週間に最低1冊の本を読むことを習慣にしており、「異なる文化、信仰、歴史、テクノロジーについて学ぶことを重視している」といいます。

ザッカーバーグは、「本を読むことで、我われは1つのテーマを十分に追求し、深く没頭することができる。今のどのメディアもかなわない」と話しており、できる限り読書の時間を増やしているそうです。

ウォーレン・バフェット 読書で得た知識を投資に活用する

世界的に名前を知られた投資家で「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェットは、1日5〜6時間は読書の時間を作り、週末のほとんどを読書に費やすことで知られています。

投資に活かす前提で盆栽の本を読むなど、投資とは無関係な本を大量に読むことで、洞察に基づく投資判断に活用しているのです。

その旺盛な知識欲は、94歳となった現在も(2024年10月時点)衰えを知らず、世界中の投資家が、彼の好奇心の向かう先に注目しています。

世界の一流に共通するのは、読書を通じて知識を深めることで、発想力や創造力を鍛えていることです。彼らにとって、読書は未来を見通すための望遠鏡の役目を果たしているのだと思います。

世界の一流ビジネスパーソンの「教養」を支えているのは、膨大な量の読書です。好奇心が旺盛な彼らは、未知の世界や知らない分野の本を読むことでビジネス脳を刺激していますが、彼らの読書には大きな特徴があります。

漠然と膨大な知識を積み重ねるのではなく、どんな本を読む場合でも必ず「アウトプット」(出力)を意識していることです。

読書を知識の習得と考えてしまうと、どうしても情報のインプット(入力)が先行することになりますが、彼らは「アウトプットありきのインプット」を重要視することで、読書を自分の「武器」にしているのです。

彼らに共通するのは、「自分の環境にどう活かせるか?」という意識を持って読書をしていることです。本を読み終えたら、「この知識を明日の仕事にどう反映させるか?」と考え始めて、すぐにそれをアクションに移しているのが彼らの特徴です。

それを驚異的な速度で、何度も繰り返すことによって、新たな知識を蓄え、自分のスキルをブラッシュアップしています。

読書を娯楽で終わらせない工夫

インプットとアウトプットの隙間を空けないことが、彼らの一番の特徴といえるかもしれません。

この視点を持っていないと、情報をインプットすることだけが目的となって、読書は自己満足のための「娯楽」で終わることになります。

「本を100冊くらい読んだけど、何も学びがなかった……」というのは、こうしたことによって起こります。これが「娯楽」と「教養」の違いといえるかもしれません。

グローバル企業のエグゼクティブには、どんなときでも、小さなメモ帳とペンを携帯する習慣があります。仕事中はもちろん、移動で飛行機に乗っていたり、休日の間もメモ帳とペンを手放さず、思いついたアイデアや、気になったことを書き込んでいました。

読書のときも、備忘録として簡単なメモにまとめることで、物忘れや勘違いを防いでいるといいます。

本にマーカーで線を引いても、時間が経ってしまうと、記憶として残らなくなるため、彼らは簡潔にメモをすることを習慣にしているのです。こうした小さな工夫が、大きな可能性を生み出しているのだと思います。

弊社が日本企業で著しい成果を出している一流ビジネスパーソン962人に調査したところ、彼らは1年で平均43.2冊の読書をしていることがわかりました。

これに対して、成果が平凡な社員の年間読書量は平均2.4冊ですから、一流社員は一般社員の18倍も読書をしていることになります。

一流ビジネスパーソンの「5対2の法則」


この違いは、そのまま知識欲や好奇心、情報量の違いとなるため、この数字の差が仕事の成果にリアルに現れていると考えることができます。

日本の一流ビジネスパーソンは、多忙な毎日を送っているため、平日に読書をする時間的な余裕はありませんが、一般社員と比べて有給休暇の消化率が高いこともあり、有給休暇や夏季休暇、年末年始の休みなどに集中して読書をする傾向が見られます。

彼らが読んでいるのは、仕事と関係のあるビジネス書が中心ですが、最近の追跡調査によって、その読書傾向には「5対2の法則」があることがわかっています。

彼らは平均すると1週間に1冊くらいのペースで読書をしていますが、多くが一度に平均7冊をまとめ買いしており、その内訳が話題のビジネス書5冊に対して、小説や図鑑など自分が興味のある本が2冊となっているのです。

(越川 慎司 : クロスリバー代表取締役)