メーカーに関係なくスマートホームデバイスを相互運用するための標準規格・Matterの新バージョン「Matter 1.4」がリリースされました。Matter 1.4ではマルチ管理者機能の強化によってユーザーエクスペリエンスが向上するほか、エネルギー管理機能も改善されるとのことです。

Matter 1.4 Enables More Capable Smart Homes - CSA-IOT

https://csa-iot.org/newsroom/matter-1-4-enables-more-capable-smart-homes/



The Matter smart home standard gains support for more devices, including heat pumps and solar panels - The Verge

https://www.theverge.com/2024/11/7/24289972/matter-smart-home-standard-1-4-spec-new-features-device-types

2024年11月7日、Google・Amazon・Appleなどが参加する標準団体のConnectivity Standards Alliance(CSA)が、Matter 1.4のリリースを発表しました。CSAは、「Matter 1.4はEnhanced Multi-Admin機能により、デバイスベンダーとプラットフォームがマルチエコシステムのユーザーエクスペリエンスを改善するための機能強化を導入しています」と述べています。また、ホームルーターとアクセスポイントによるネットワークインフラストラクチャーの強化や、エネルギー管理機能の強化といった改善も行われているとのことです。

◆マルチ管理者機能の強化

Matter 1.4では、Enhanced Multi-Adminという機能が追加されました。Matterではスマートホームデバイスを複数のスマートホームシステムに接続可能ですが、複数システムを運用する上で各デバイスを個別に接続することは面倒な作業でした。

Enhanced Multi-Adminの導入によって、単一ユーザーの同意で既存デバイスを複数のスマートホームシステムと自動的に接続できるようになり、デバイスの相互運用性が向上します。たとえば、新しいスマートライトをiPhoneで一度セットアップしてApple Homeで制御できるようにすれば、同時にルームメイトのAndroidスマートフォンからGoogle Homeで制御可能になるというわけです。

CSAのマーケティング委員長であるダニエル・モネタ氏は、Enhanced Multi-Adminは異なるエコシステム(Fabric)の相互通信を承認する「Fabric Sync」というシステムによって可能になったと説明しています。モネタ氏によると、「すべての大手企業」がこのソリューションの開発に積極的に関与しており、2025年中には大手企業のスマートホームデバイスがEnhanced Multi-Adminに対応することが期待できるとのことです。



◆ホームルーターとアクセスポイントによるネットワークインフラストラクチャーの強化

新たにホームルーターやモデム、アクセスポイントなどのデバイスを、Matterベースのスマートホームシステムをサポートするように設計したり、アップグレードしたりできるようになりました。Matter認定のホームルーターやアクセスポイント(HRAP)デバイスは、Wi-Fiアクセスポイントと通信プロトコル「Thread」ボーダールーターの役割を担い、Matterデバイスに必要なインフラストラクチャーを強化するとされています。

◆エネルギー管理機能の強化

Matter 1.4ではエネルギー管理機能が強化されており、新たにヒートポンプ・給湯器・バッテリーエネルギー貯蔵システム・太陽光発電デバイスといったデバイスが追加されたほか、サーモスタットや電気自動車の充電装置の機能強化も行われています。

すでにMatter 1.3でスマートホームデバイスのエネルギーレポート機能が追加され、ユーザーは電力消費量についてのデータを入手可能になっていました。Matter 1.4では使用するエネルギー量に基づいてデバイスをオン/オフしたり、電力需要のピーク時にエネルギー消費量を調整したり、グリッド全体あるいはデバイスの電力源を切り替えたり可能になるとのことです。



また、Matter 1.4では照明やファンなどの非スマートホームデバイスを制御する壁内スイッチも追加されたほか、レーダーなどのセンシングテクノロジーの機能もサポートされました。しかし、防犯カメラは将来的にMatterへ追加する計画はあるものの、Matter 1.4では追加されていません。

なお、今回のリリースはあくまで仕様にすぎないため、デバイスメーカーやプラットフォームがMatter 1.4を製品やエコシステムに統合するには、しばらく時間がかかるとみられます。海外メディアのThe VergeがApple・Google・Amazon・Samsungに連絡を取り、Matter 1.4の新機能とデバイスタイプを採用する予定があるか尋ねたところ、記事作成時点ではAmazonとGoogleからMatter 1.4を採用する予定だと回答がありました。

Amazonの広報担当者であるコナー・ライス氏は、「Matter 1.4のアップデートは2025年初めにサポートしているEchoおよびEeroデバイスに展開されます。今後デバイスメーカーが新製品をリリースするのに合わせて、新機能やMatterデバイスタイプのサポートを追加していく予定です」とコメントしました。