この記事をまとめると

■ちょっとしたことでもクルマの運転にまつわる危険な行動は多くある

■うっかり行った行為で重大な危険につながることも

■ついやってしまいがちな行為とその対策をいくつか紹介する

ついうっかり……が命取りに!?

 シートベルトを締めないまま、運転席シートの背もたれを超絶寝かせた状態にセットし、片手運転でスマホ通話しながら、ムカついたクルマを煽りまくる──なんていう「絵に描いたような危険運転」をしている人など、ほとんどいないだろう(いるのかもしれないが……)。

 だが「ついうっかり」や「いつもの癖で……」的なニュアンスで、よく考えたらけっこう危険な行為を運転中、気づかぬうちにしてしまっている人は少なくないはずだ。

「うっかり」あるいは「癖で」やってしまう場合が多い行為のひとつは、「走行中のシートポジション変更」だろうか。

 まぁ電動調整式のシートであれば、さほどの問題に結びつくこともないはずだが、手動調整式シートの場合は「シート位置を少しだけ後ろにしよう」と思ってレバーを引き上げた瞬間、たとえば路面状況によってクルマが大きく跳ね、その拍子でシートがガッと一番後ろまで全下がりとなってしまい「ブレーキペダルに足が届かない!」となってしまう可能性がある。

 また、「背もたれの角度を少しだけ寝かせようかな?」とした場合も、手動調整式の場合は先ほどと同様にガッと全倒しになってしまい、端から見ると「ドライバーがいきなり消えた!」みたいになるリスクもあるだろう。とくに手動調整式シートの場合は、走行中の背もたれ調整は行うべきでない。

 さらに「運転中のステアリング位置調整」もなかなか危険である。ステアリングのチルトおよびテレスコピックの調整可能範囲は、シートの調整可能範囲ほど広いわけではない。

 だが何らかの理由によって想定以上にステアリング位置が急激に変わってしまうと、瞬間的にではあるが、クルマはコントロール不能な状態に陥る。そんなときたまたま、すぐ前方に道路を横断中の子どもがいたら……考えるだけでもおそろしい話である。ステアリング位置の調整は、あらかじめ済ませておこう。

 他人さまの服装を、とくに女性の衣服についてとやかくいうのははばかられる時代だ。しかしそれでもやはり「ロングスカートを着用しての運転」はやや危険であるため、やめておいたほうがいいと思われる。「ある程度長いロングスカート」はさておき、「超長めのロングスカート」は、クルマを運転するうえでもっとも大切な装置である「ブレーキペダル」の動きを阻害する要因になりかねないからだ。

 また「超長めのロングスカート」は、ドアを閉めた際にスカートの裾まですべてを車内に収容したつもりで、「じつはスカートの一部がドアに挟まったまま外に出ていた」ということもあり得る。

 車両の外側にはみ出ていたスカートが道路上の構造物に引っかかってしまった場合でも、構造物よりスカートの布地のほうが弱い場合がほとんどであるため(つまり、まずはスカートのほうが破れることになるため)、大怪我につながることはたぶんないだろう(あくまで、たぶん)。だが構造物に引っかかったスカートに身体が引っ張られ、Bピラーの内側などに側頭部をしたたかにぶつけてしまうなどのリスクはある。

 女性の衣服についてとやかくいいたくはないのだが、まぁ超ロングスカートの着用は、クルマの運転中は控えたほうがいいはずだ。

ガソリンスタンドにも危険は潜んでいる

 また、そのほかにも筆者がしばしば訪れるセルフ方式のガソリンスタンドには、「最近、給油ホースをクルマに差したまま走り出されるお客さまが散見されます。大変危険ですので、必ず給油ホースを元の位置に戻したことをご確認のうえ、ご出発ください」といった感じの張り紙がある。

 さすがにこれについては「うっかりじゃなくて、もはや耄碌(もうろく)だろ! 免許返納しろや!」と思うわけだが、セルフ方式のガソリンスタンドにおいて「給油キャップを締め忘れたまま出発してしまった」といううっかりは、現役層のドライバーでもたまにやってしまうのかもしれない。

 給油キャップを締め忘れたまま走ってしまうと、まずは走行する際の振動によって燃料タンクからガソリンや軽油が漏れ出し、これがボディに長い間付着すると、ボディの変色や塗装のはがれが発生してしまう。変色と塗装はがれだけで済めばまだマシ(?)なのだが、最悪の場合には、気化したガソリンが何らかの火種に触れることで爆発を起こす可能性もある。

 それゆえ──いうまでもないことではあるのだが、セルフ方式のガソリンスタンドで給油した際には、給油キャップとロック板を絶対に締め忘れないようにする必要がある。

 ちなみに筆者の場合はセルフでの給油を終えたあと、有人スタンドのスタッフさんがいっているのを真似して「キャップOK、ロックOK!」と、毎回モゴモゴつぶやきながら指差し確認をしている。カッコ悪い姿かもしれないが、物忘れが激しくなってきた中高年にとってはかなり有効な手法だと確信している。もしよければ、ぜひ真似してください。

 さらにそのほかでは「カーオーディオの音量がデカすぎる」という危険行為もあるだろう。さすがに「イヤホンで音楽を聴きながら運転してます」というドライバーはいないと思うが(……いませんよね?)、けっこうな音量でYOASOBIなどをズンドコ鳴らしているクルマにはしばしば遭遇する。

 2011年5月1日に改正された神奈川県の道路交通法施行細則では、「大音量で、又はイヤホン若しくはヘッドホンを使用して音楽等を聴く等安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態で自動車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと」とある。

 もちろん常識的な範囲で音楽やラジオを楽しむぶんには違反にならないが、警音器(クラクション)や緊急自動車のサイレン、警察官による指示などが聞こえない状況は対象となるようだ。

 しかし、そういった道交法施行細則うんぬん以前に、「周囲の音が聞こえる状態にしておく」というのは、ドライバーにとっては「周囲をよく見る」というのと同じぐらい、重要かつ当たり前なことであるはず。とくに住宅街などではカーオーディオのボリュームをぐっと下げるか、いっそOFFにして、できればちょいと窓も開けて、死角にいる自転車のチャリチャリ音などが聞こえないかを常に確認しておくことが、いってはなんだが「安全運行の極意」のひとつだ。