自民関係者「辞めないなら辞めさせるしかない」次の総理に2人の名前「茂木、そして」…石破おろし本格化は「補正予算通った後」

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 10月27日に投開票が実施された第50回衆議院選挙で、自公が過半数割れした。しかし、石破総理は責任を取らず、総理の座に「居座り」続けているままだ。ジャーナリストの池谷悟氏が、崩壊寸前の石破政権の現状をレポートするーー。

結局は極めて自民党的な人物だった石破茂

「仕組まれたか」

 絶望した石破茂総理側近がそう声をかすめたーー。

 自民党が歴史的大敗を喫した先の衆議院解散総選挙だが、一体あれは何だったのだろうか。もともと解散権の濫用については否定的立場をとっていた石破総理だが、総理就任後真っ先にやったことは衆議院の解散とこれまでの主義・主張の封印だ。

 総裁選中に日米地位協定の改定や「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想は、すでに事実上封印されている。さらに、前向きだったはずの選択的夫婦別姓や富裕層への課税強化についても、その姿勢は明らかに消極的となっている。

 これまで”自民党内野党”として自民党執行部を公然と批判し続けてきた。その姿勢に疑問を感じる国民もいただろうが、一方で「自民党の良心」などと持ち上げられることもあった。だが、結局は極めて自民党的な人物であった。

国民人気が高いはずだった石破総理だったが、支持率はいきなり2割台を記録

 はっきり言って石破総理は「支持率が高いうち」に選挙を仕掛けただけだ。新しい総理の誕生直後は、新政権への期待感の高まりから支持率は高く出やすい。だからこそすぐに解散に打って出た。

 当初、就任直後に選挙をすれば、試算では自民単独過半数を辛うじて確保できるという見込みもあったという。それが最終的に散々な結果になってしまった。

「国民人気が高い」と言われてきた石破総理だが、各メディア世論調査では就任直後とは思えないほど低い内閣支持率をたたき出した。時事通信が実施した世論調査(10月)に至っては28%といきなり政権維持の「危険水域」とされる2割台という数字が出た。かろうじて岸田文雄内閣の最後となった9月の内閣支持率(18.7%)は上回ったが、発足時としては2000年以降の歴代内閣で最低を更新した。国民人気が高いとは一体誰が言ったのだろう。ちっとも高くないではないか。

 そんな石破首相の選挙戦だが、各メディアの情勢調査をみると日に日に悪化していった。最初は「自民党単独過半数割れ」という見立てから「自公過半数を巡る戦い」となり「自公過半数割れ」と変遷していった。選挙が進むにつれてどんどんと立場が悪化していった。一体何が狂わせたのか。

自分が撃たれるようになると感情的になった石破

 それが記事冒頭の発言だ。

 あくまでも石破周辺では「しんぶん赤旗のスクープ」が大敗の要因だと主張している。”裏金議員”として今回自民党から公認を得られなかった元自民の候補の支部に対しても政党助成金から2000万円の支部政党交付金を支給していたことが明らかになった。これに対して各メディアも追随し、石破総理を批判した。これに対して石破総理は候補者が自身の選挙運動に使うことができないと説明。その上で「事実を曲解し、誤解を誘導する」「報道に誠に憤りを覚える」「裏公認との指摘は一切当たらない」とメディアに反論した。が、これには「何を逆ギレしているんですか」「石破首相の”報道に憤りを覚える”に本当に”怒りを覚える”」とSNSでは怒りの声が溢れた。これまでひたすらネットの声と一緒に政権執行部を後ろから鉄砲撃ち続けた石破だが、自分が撃たれるようになると感情的になってしまった。その姿を哀れに思えた国民も多かったであろう。

なぜ非公認候補に2000万円を支払ってしまったのか

 で、だ。そもそもなぜ非公認候補に2000万円を支払ってしまったのか。例え法的に問題がないとはいえ(そもそも法的に問題ないことは最初から議論にもなっていないが)、なぜそんな紛らわしい、誤解を招くようなことをするのか。

 実は自民党政党職員の”ドン”とされる人物が、森山裕幹事長にろくに説明もしないまま非公認候補たちに入金したのだという。メディアが報じたあとにその職員に連絡をとろうと電話してもつながらず、しばらくたってから体の具合を理由に連絡が取りにくい旨連絡があったとされる。石破サイドはこの一連の入金に関しては何等かの意図が自民党内で働いたのではないかと疑っている。

 しかし選挙戦を思い出してみると赤旗が初報を出したのは10月23日、公示は15日で投開票は27日だった。すでに選挙期間の半分以上が経過しておりその前から自民にとって厳しい選挙結果になるだろうという予兆が出ていた。そもそも石破総理が自らの署名入りで「緊急通達」という檄文を関係者に送ったのは21日だ。当然、石破首相は情勢が厳しいがゆえにこの檄文を送ったのであって、そのあとに起きた「赤旗スクープ」を敗因にするのはあまりにも調子がいい。

 元閣僚経験者は石破自民の敗因についてきっぱり「何がやりたいのか国民に全く伝わってなかった」と指摘する。「国民の生活をどうよくするのかという経済観点のビジョンもなければ、この国をどうしたいのかという国家感もなかった。国民にとって、『裏金問題があっても、それでも自民党だ』と思えるようなメリットが全くなかった。本人は張りぼての『国民人気』でなんとかなるとでも思ったのでしょう」。

石破の檄文も虚しく国民にそっぽを向かれた自民党

 先の檄文にはこうも記載されていた。

「全党一丸となって国民のために決戦に勝利しよう。この後半戦、 私も死にもの狂いで全国を駆け回る。各位におかれても必ず勝利を掴み取るため全力を尽くしてご奮闘いただくようお願いしたい」

 自民党の逆風の中行われた今回の選挙では大物議員も多数落選した。現場は言われるまでもなく「勝利を掴み取るため全力」だったであろう。それよりも「この後半戦、 私も死にもの狂いで全国を駆け回る」と言っていたが、石破総理は前半戦、死にもの狂いで全国を駆け回っていなかったのだろうか。自民党にとって厳しい選挙になることなど誰もがわかっていたはずだが、どこか石破政権は国民の怒りを軽視し、選挙を楽観視していたようにも感じ取れる。

石破総理は「戦後最短内閣として歴史に名を刻むのを嫌がっている」のではないか

 そして、自公が過半数割れした。石破総理は勝敗ラインについて自ら「自公過半数維持」を設定していたので、当然、誰もが石破総理は退任すると思っていた。しかし、辞めなかった。それどころか森山幹事長も辞めていない。いくら言い分があるとはいえ、現職閣僚が2名も落選するなか、森山幹事長が一切責任とらないというのは自民党内でも大きな反発を呼んでいる。選対委員長だった小泉進次郎氏はいち早く辞任を申し出たが、「これはお前たちも辞めろというメッセージだ」と小泉周辺は説明する。どう考えても小泉氏だけが辞めればいいという話ではないはずだ。しかし石破総理は辞めない。一説には「戦後最短内閣として歴史に名を刻むのを嫌がっている」とも言われている。

 だが、旧安部派関係者は「本人が自ら辞めないなら、辞めさせるしかない」と話す。

石破おろしはいつ始まるのか

「このままでは来年の参議院選挙は戦えません。そしてその前に都議会議員選挙もあります。少なくともそれまでには石破を下ろさないと自民党が崩壊します」

 現在も一部自民党議員から公然と石破批判が飛んでいる。しかし表立って「石破おろし」が本格化しているようには見えない。

「さすがに予算を通してからです。国の専決事項だから、さすがにこれに関しては野党も予想を通すまでは石破おろしには動かないでしょう。しかし終わったら石破おろしが本格化するでしょう。このあと石破総理の支持率が回復する見込みもありません。そうなると参議院の自民党議員からしてみれば死活問題です。このままでは多くが無職になるわけですから」

次の総理は誰なのか

 しかしここで一つ大きな問題がある。少数与党となった自民党の総裁に、誰がつきたいのか。石破総理がむちゃくちゃにした自民党を引き継ぎたい人はいるのだろうか。総裁選の決選投票で石破総理と競った高市早苗氏を巡って今回の選挙では、多くの同志たちが落選した。高市氏の党内パワーは明らかに落ちている。と、すると小泉氏か。これに関しても小泉周辺が「この混乱状態で小泉を出すわけにはいかない」と拒否をする。サラブレッドをこんな野戦病院に派遣するわけにはいかない。

 そんな中で注目が集まるのは林芳正氏と茂木敏光氏だ。林氏は9月の総裁選の得票数では小泉氏に次ぐ第4位と党内人気も高い。苦戦が予測されたなかで討論番組でも姿などから注目が高まった。政策通としても知られる。茂木氏に関しては自民党の長老・麻生太郎が担ぐ可能性がある。総裁選では「増税ゼロ」を掲げるなど、国民からの注目が高い。

 自民党の混乱はまだまだ続きそうだ。