池松壮亮&石橋静河のW主演でリアルな演技を見せた「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」
目黒蓮が初ドラマ主演を務めたことでも話題になったフジテレビ系ドラマ「海のはじまり」。ドラマ公式のインスタグラムフォロワー数は60万人を超え、最終話が放送された現在でも根強い人気を誇っている。このドラマの中で光る演技をみせたのが池松壮亮だ。元々映画を中心として、その確かな実力を評価されてきた池松だがこのドラマを通して更に大衆に魅力が広まったといえるだろう。今回はそんな池松が主演を務めた「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」を紹介する。
■詩集を原作とした「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」
この映画は最果タヒの詩集を原作とした映画で、詩集の中にはストーリーはないが監督の石井裕也がストーリーを書き上げた。作中で登場人物たちが呟くモノローグのようなセリフが詩集から抜粋されているものであったりする。
看護師とガールズバーを兼業する美香(石橋静香)は幼い頃、母が自殺したことによって「捨てられた」という意識と死に対する漠然とした不安を持ちながら東京で生活している。一方、池松演じる慎二は左目がほとんど見えずその影響もあり社会や死へ不安を感じ、日々日雇い労働者としてギリギリの生活をしていた。そんな接点がなかった2人だが客として訪れたガールズバーで出会う。慎二と共に訪れた智之(松田龍平)が美香を気に入り、親睦を深めるが智之は古傷を元にした脳梗塞で急死。身寄りのない智之の葬式で再び出会った2人はゆっくりと親睦を深めていく。
■生活を覗き見している気分にさせるような池松壮亮の説得力
慎二は色々な事象に過剰に不安を覚えてしまうが、その癖はお喋りとなって現れる。TPOをわきまえずに喋ってしまうその癖を周りからは五月蝿いと言われるが、美香には「喋っていないと不安なんだね」といわれた。このたった一言の肯定が慎二を少しずつ変えていく。
慎二は決して変ではない。ただ悪癖としてのお喋りがあるだけで毎日を生き抜こうとする何処かにいる人間なのだ。池松はそれを体現する。池松の芝居には大きな喜怒哀楽はなく、かといって淡々としているわけでもない。お喋りな慎二が喋らないときは目で語り、喋るときは視聴者が不安になるくらいのお喋りをみせる。その余分な要素がない池松の芝居は等身大の慎二で、作中に生きているようにみえるのだ。だからこそ最後に美香がみせる涙と2人の笑顔が、実際生きている我々がそのシーンを街中で目撃したかのような説得力があるのだろう。
生きている中で何かの壁に当たらない人はいないだろう。きっと慎二は誰かではなく、皆なのだ。これまで池松壮亮の芝居をみて一部分でも刺さる場所があるかもしれないと思ったあなたは鑑賞しない手はない。
文=田中諒
放送情報【スカパー!】
夜空はいつでも最高密度の青色だ
放送日時:11月9日(土)03:00〜
放送チャンネル:WOWOW ライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります