Adobeが提供するクリエイター向けソフトウェアには、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorなどのほか、PDFファイルを作成、編集、加工するためのAdobe Acrobatがあります。PhotoshopやIllustratorで作成した作品を印刷所にPDFで入稿する際の注意点として、最新のAdobe Creative Cloudに合わせた「PDF&出力の手引き2025」をAdobeが公開しています。

PDF&出力の手引き2025

https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/10/29/cc-design-print2025



「PDF&出力の手引き2025」は、Adobe Blogのページから「ダウンロード」をクリックすると見ることができます。



手引きの表紙は以下のような感じ。



もくじには、「更新」というブルーのタグと、「New!」というイエローのタグがあります。このタグがついているのは「PDF&出力の手引き2024」から「PDF&出力の手引き2025」での変更点。また、赤く「注意」とあるのは、記事作成時点で「InDesign 2025(20.0)起動後に一部のPDFプリセットが消える問題について」という不具合が公式フォーラムで確認されており、対応中の旨を記載したものです。



更新点の1つ目は、Adobe Expressで入稿する際のポイント。Adobe ExpressはPhotoshopやIllustratorなどの定番ツールの必要最低限の機能を搭載したデザインアプリで、ほかのアプリほど専門的な作業はできない分、プロのクリエイターではなくても画像の加工やデザインの作成などが行いやすいウェブアプリもしくはソフトウェアです。以下は左が「PDF&出力の手引き2024」、右が「PDF&出力の手引き2025」のAdobe Expressで作成したデータを入稿する場合の記載。比較すると、従来はAdobe Expressから書き出したPDFを、Adobe Acrobatで印刷用にマージンや裁ち落とし設定をする必要がありましたが、機能がアップデートされたことで、Adobe Expressからオフセット印刷用のデータの作成がラクラク可能になったことがわかります。



また、かつてDTPでよく使用されていた「PostScript Type1フォント」について、Adobeは2023年1月にサポート終了しました。「PDF&出力の手引き2025」では、各ソフトウェアでType1フォントのサポートが終了する具体的なタイミングを記載しています。



同様のサポート変更による更新部分では、「Pantoneのカラーブック廃止について」が重要です。Pantoneはアメリカニュージャージー州に本社を持つ企業で、「パントン・マッチング・システム(PMS)」と呼ばれる国際的に使用されている色見本帳で知られています。PMSで色指定をすることで、あらゆるグラフィックデザインや印刷物の色を統一できるというものですが、Adobeは2022年8月からPantoneのカラーライブラリのサポートを段階的に廃止しています。そのため、最新のAdobe製品にはPantoneカラーライブラリが含まれておらず、Pantoneの色指定を含むファイルを開くと「一部のPantoneカラーは、Pantoneとアドビとのライセンス契約変更のため、利用できない場合があります」という警告が表示されます。「PDF&出力の手引き2025」によると、Pantoneカラーブックを使うためには別途有料プラグインが必要とのこと。



そのほか、以下の「データの書き出し」ページも更新されています。画像左の「PDF&出力の手引き2024」から画像右の「PDF&出力の手引き2025」で、InDesignの出力手順は変わっていませんが、Illustratorに変更があります。IllustratorのファイルをPDF化したい場合は従来、「別名で保存する際に、ファイル形式としてPDF形式を選択」という形のみだったのが、「PDFとして書き出し」というメニューが追加されたため、どちらでもPDF出力が可能と手引きには記載しています。



更新ポイントの最後として、「PDF&出力の手引き2025」では新しく「Acrobat ProでのPDFチェック」という項目が追加されています。印刷・入稿前のプリフライトに関する記述は「PDF&出力の手引き2024」でもサブメニューとしてありましたが、それがより詳細にわかりやすく更新されたという形。



さらに、2024年10月のアップデートで追加された新機能に関する記載として、「文字組み更新機能」があります。以下の画像赤枠で例示されている部分の左側ように、従来は「テキストの開始や末尾がカギカッコだと、記号の見た目によりテキストが寄って見える」「文字組みの指定により、行の戦闘に句読点が来る」というような問題がありましたが、あたらしい組版プログラムにより、自動的に読みやすく美しい文字組みに改善されたとのこと。



そのほか、「PDF&出力の手引き2025」のページからはIllustrator、Photoshop、InDesignの旧バージョンとの互換性に関するガイドブックや、2024年10月アップデートの新機能一覧などを確認することができます。