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お金に苦労しない人生にするために、20代でできることは何でしょうか? ファイナンシャルプランナーの中村芳子氏は著書『【新NISA・iDeCo対応版】20代のいま、やっておくべきお金のこと』で、お金の基本ルールを知ることだと主張しています。一体どんなルールでしょうか? 本書から詳しく紹介します。

クレジットとは借金クレジットカードは1枚が理想。多くても2枚まで

借金がよくない、というのは、誰でも知っているはず。ところが「私は借金はありません」という人に借金がある。クレジットカードの利用残高がそれ。クレジットは「信用」と訳されるが、別の言葉では「借金」。そのカード、借金カードだ。


借金カード何枚持ってる? 多いほど罠に落ちやすい。買い物してカードで払うと、カード会社が店に代金を立て替えて払う。その瞬間、あなたはカード会社から借金をしたことになる。決済日に代金を払い終えるまでは借金。たいていはその前に次の買い物をするから、借金は途切れることがない。


1回払いやボーナス払いは利息がつかないから、1〜5カ月の後払い、といえないことはない。ところが、何かの拍子に一括で払えず、リボ払いや分割払いに変更する人は少なくない。「お得なリボにしませんか」「ポイントをたくさんプレゼント♪」とカード会社から滝のような勧誘も来る。


リボを使わずともカードがたくさんあると、借金が膨らむ。そして、わけがわからなくなる。借金の悩みで相談に来る人は4枚以上使っている。カードごとに締め日も支払い日も違う。請求書が届いて「残高が足りない!」とキャッシングに走ったり、残高不足で決済できないことも。


決済日に払えないと(数日の猶予があることもある)ブラックリストに載る。するとその後、カードが使えない、新しいカードを作れない、住宅ローンが借りられないことになりかねない。


カードが複数枚あると、1枚落としても盗まれても、不正利用されても気づきにくい。すぐに届け出れば、被害額は補償されるが、不正利用されて長く届け出ないと、本人負担になることもある。危険な目にあわないためには、クレジットカードは1枚だけにしよう。


日本でも海外でも、VISA系かMastercard系どちらかがあれば困ることはない。1枚では不安というなら、2枚まで認めよう。3枚以上は管理できない。おまけやポイントにひかれて増やしたら身を滅ぼす。

安全なデビットカードを使おう。クレジットカードはもういらない!

私は原則、クレジットカードは使わない。借金があっという間に膨らんで人生を狂わせる、たくさんの例を見てきたから、「私は大丈夫」と自分を過信しない。使うのは、クレジットカードでしか払えない時に限定している。


その点、デビットカードは怖くない。見かけはクレジットカードとそっくりだが、レジやオンラインで支払うと、代金はリアルタイムで銀行口座から引き落とされる。口座の残高が3万円だと買い物できるのは3万円まで。残高ゼロでも30万円買えるクレジットカードとここが違う。持っているお金以上は使えない、借金にならない。


すばらしい! これがデビットカードの最大の魅力。多くの銀行がキャッシュカードと別にデビットカードを発行している。メガバンク、ゆうちょ銀行、地方銀行など。年会費は実質無料。キャッシュカードにデビット機能がついているものもある。ソニー銀行などネット系銀行に多い。


デビットカードにはVISA 系とMastercard 系、JCB 系があり、それぞれVISA、Mastercard、JCB の加盟店でクレジットと同様に使える。即時引き落としだから安全。デビットカードは海外でも使える。為替手数料などクレジットカードより有利なことが多い。


以前は銀行のキャッシュカードに付帯したJ -Debit というのがあったが、手数料が高く加盟店が少なく普及しなかった。家計管理アプリと連動すると、ほとんど手入力なしで家計管理ができる。借金(クレジット)を使わずキャッシュレス生活ができる。デビットカードばんざい!

クレジットカードのリボ払いは、永遠に続く借金地獄

クレジットカード借金だから、なるべく使わないのが正解。使う時は利息ゼロの1回払いだけ。ボーナス払いも利息ゼロだが、使いすぎになるから避ける。それでも借金であることに変わりはなく、借金はあっという間に膨らむ。


あなたがいま、リボ払いを使っていたら、かなり問題だ。「リボ」とはリボルビング(ぐるぐる回る)の意。1回払いならカードで8万円の買い物をすると、翌月に8万円が引き落とされる。利息はつかない。


でもリボなら、翌月の支払いは1万円+利息(他のコースもある)。ラクチン♡。でも8カ月間、残額に高い利息をつけて払い続けることになる。3カ月後に残高は5万円になるが、ここでさらに4万円の買い物をしても、返済額は1万円のまま。


まるで魔法のよう。このぐるぐるの魔法にかかると、1回目の代金を完済する前に2回目、3回目、4回目の借金を重ねてしまう。毎月の支払いは増えないけど、借金の額は増え、期間が長くなり、払う利息は増え続ける。


リボの金利は驚くほど高い。大手クレジット会社で15% くらい。住宅ローンの金利0.5〜2%(2024年7月現在)と比べると、7〜30倍だ。リボ払いの平均残高が30万円なら、利息は1年で約4万5000円、10年で合計45万円の利息を払うことに。


この間にパンク(破産)する人もめずらしくない。リボ払いにすると高いポイントやおまけが付くのは、その何倍もカード会社が儲かるからだ。このカラクリに気づくべし。いまリボ払いをしているなら、1日も早く全額を返し終えること。ATM で入金して返済できる。

キャッシングは身を滅ぼす。利息は15〜20%とベラボーに高い!

銀行やコンビニのATM、街のキャッシングマシンで、カードで現金を引き出す。オンラインやアプリでも(カードなしで)申し込み手続きができる。危険だぞ! キャッシングとカタカナでごまかしても実態は借金。最も簡単に身を滅ぼす方法の1つだ。


利息は15〜20%とベラボーに高い。フツーの人が借金でどう滅んでいくか、伝説の漫画『ナニワ金融道』を読んでほしい。20代で読んでおきたい。最初は3万円とか5万円とか小さい金額を借りて返済する。返せたと安心して、次は大きい額を借りる。


ところが10万円を超えると返済が難しくなり、会社Aからの借金を、会社Bからのキャッシングで返済してしまう。これを繰り返すと、借金が数百万円に膨らむまでわずか数年。住宅ローンは、返済期間が長くて金利が低いから2000万円借りても返せるが、キャッシングは高金利の上、返済期間が数カ月〜3年と短い。残高が年収の3分の1を超えると、まず返せない。


人を借金の苦しみから守るためのルールに総量規制がある。消費者金融、クレジット会社、信販会社からの借入れ、キャッシングは合計で年収の3分の1までという決まりだ。年収300万円なら上限は100万円。


でも、銀行からの借入れは含まれない、併用すればこの天井を超えられる。「もっと借りられるよ」と誘惑するウェブサイトもたくさん! 絶対ひっかからないで。万一キャッシングをしてしまったら、1日も早く全額を返してしまう。そして二度と利用しないこと。

多重債務に陥ったら、1日も早くSOSを

ここまで「クレジットカードは2枚まで」「リボ払いや分割払いは使ってはいけない」「キャッシングは絶対だめ」とお話しした。でも、すでに複数の金融機関のクレジットカードとキャッシングで、返済に苦しんでいる人がいるかもしれない。


気をつけていても、将来、何かの拍子に多重債務で苦しむことになるかもしれない。そんな時は1人で悩み続けず、1日も早く専門機関に相談することだ。ぐずぐずしない。いますぐ相談だ。


借金って相談しにくい。「自分が悪い」と感じてる人も多いから。貸す方の責任も大きいぞと私は思っている。多重債務が怖いのは、日に日に借金が膨れ上がってしまうところ。解決が1週間遅れると1週間分、1カ月遅れると1カ月分借金が増える。


絶対にやってはいけないのは、友人から借りて返済したり、友人に保証人になってもらって新たに借金することだ。問題に巻き込んで、大切な友人を失うかもしれない。市区町村の相談窓口や、各地の消費者生活センターでは、無料で専門家が相談に乗ってくれる。財団法人日本クレジットカウンセリング協会でも相談を受け付けている。


法テラスもある。有料だけど、弁護士や司法書士に依頼する方法もあるし、NPOなどが相談窓口を設けているところもある。これらの機関は、実行できる返済プランを考えてくれたり、有料サービスでは貸し手と交渉して返済の条件を変えたり、最終手段として「自己破産」の手続きをしてくれる。借金の問題は、専門家の助けで必ず解決できる。必ず解決できる。決して自殺してはいけない。

中村芳子
ファイナンシャルプランナー