「猛練習が逆効果に…」イップスが起きた時のパターのコツって?

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“イップス”は 「自分はならない」と思っていませんか?決して他人事ではなく、ゴルファーなら誰でもかかる。しかもゴルフを一生懸命やるほどかかりやすいんです!

なぜイップスにかかるのか、どんな症状が現れ、どうやって克服するのか。それを事前に知ることが、イップス予防の 最善策になります。

電気のような衝撃に突然、襲われた

結果が悪くなくてもイップスへの不安感が消えなかった
「猛練習でイップスを克服しようとしたが、かえって逆効果でした」(田島)

右手に走る電気でパットが外れた

イップスの発端ははっきり覚えていて、2006年のマンシングウェアオープンKSBカップの3日目。12番のパー3で上り1メートルのパーパットを打ったとき、右手がビクンッとなって電気が走りました。ボールはカップの右に逸れて、そのボールはボギー。前日までトップタイの位置にいた私は、結局スコアを伸ばすことができず12位でフィニッシュ。そのとき以降は、イップスの症状は出なかったので、変な感じは残りましたが大きな問題とは感じませんでした。

それから約2カ月後のザ・ゴルフトーナメント御前崎では、3日目が終わって単独トップという好位置につけていました。しかし、スタートホールの1番で3メートルのバーディパットを打った際、バコンッという強い衝撃とともに、また右手に電気が走るような感覚が出たのです。2000年にプロ転向して以来、なかなか成績が出ませんでしたが、2003年に初優勝できて、ようやく結果がついてきたことで、選手としてはまさにこれからという時期でのイップス発症でした。

そのころは、パッティングでつねに電気が走るわけではなく、前触れもなくバコンッとくるのです。いつ出るかわからないから、パッティングになると気持ち悪さがずっとあるんですよね。一方で、ツアーで戦う以上、パットを入れていかなきゃ話にならないわけです。入れにいくために、強めのタッチで打とうとしたときに、右手が反応して電気が走る。そうなると、だんだんパッティングが打てなくなってきてしまい、インパクトで緩むということが頻発しました。

練習しすぎたことを今でも後悔している

その年は結局、QTにいくことになりました。付け焼き刃ではあるもののグリップを変えてみたりして、結果はそこそこうまくいきました。でも、イップスの不安感はなかなか消えないんですよね。グリーンに上がると、心拍数が上がるのが自分でもわかる。結果はともかく「またイップスの症状が出るんじゃないか」「このパッティングも外してしまうんじゃないか」という結果への不安がずっとついて回ります。

それからのキャリアでは、長尺パターも使いましたし、いろんなことを試しながら、ある意味、ごまかしながらやってきました。グリップをクロウグリップにするのは、いい対策だと思います。右手と左手がはっきりと別の動きをすることになるので、脳が混乱しないんです。イップスは、脳の命令から神経を伝わり、筋肉を動かす動作のエラーなので、脳にとってわかりやすい動きをすることでエラーが起きにくくなります。

長尺パターも同様ですね。一般的な長さのパターで行なうスタンダードなパッティングスタイルとはあきらかに異なるメカニズムで打てるので、イップス対策としては有効だと思います。さすがに長尺が "イップスの特効薬" と断言はできませんが。

今でも後悔しているのは、イップスが発症したとき、練習すれば治ると考えて猛練習を積んだことです。とくに、真っすぐストロークすることなどパッティングの形にフォーカスして取り組んでしまったことが、かえって症状を悪化させてしまったと思います。今あらためて考えると、そんな闇雲な練習は逆効果でした。

アマチュアのみなさんもイップス気味になったとき、どうしても打ち方にこだわったり、練習を積んだりすると思いますが、これまでと同じメカニズムで練習を繰り返しても、かえってイップスを進行させてしまうかもしれません。

Lesson

[症状]フェース上部に当たって滑る感覚があった

打てない、転がりが悪いという理由から、ハンドファーストで押し込むようにパットしていたが、球離れが早くて滑るような感覚があった

[対策]長尺パターを応用したクロウグリップ

通常の長さのパターを長尺パター風に構える変則クロウグリップを採用。お腹とヘッドがつながっているイメージで、手を使う感覚をなくした

いかがでしたか? イップスの症状を感じたら田島プロを参考にグリップを変えてみてください。

解説=田島創志
●たじま・そうし / 1976年生まれ、群馬県出身。2003年「久光製薬KBCオーガスタ」でツアー初優勝。2016年から昨年2023年までJGTO理事を務めた。2006年にイップスの兆候が現れてからは、それを克服する研究を続けている。

構成=コヤマカズヒロ
写真=田中宏幸