抽選で福岡大大濠・柴田の交渉権を獲得し、ガッツポーズする新庄監督(カメラ・今成 良輔)

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◆2024年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD(24日)

 魂の雄たけびが会場に響き渡った。「っしゃー!」。日本ハム・新庄剛志監督(52)は3回目にして初めて引いた当たりくじを右手で握りしめ「すごくない? テレビ見ながら『この子欲しい』って思ってた。もしドラフトにかかった時は僕がくじ引くぞって決めてたんです」。1位指名後には来季続投を自ら表明。「劇的なドラフトになった」とピッカピカの歯を光らせた。

 引き当てたい理由があった。明大・宗山を外した1巡目に続きくじ引き役は小村球団社長に託す予定だったが、テーブルで二刀流右腕の名を聞くと急変。「行く」と直訴した。母校・西日本短大付が甲子園出場を決めた今夏の福岡大会決勝。画面越しに目を奪われたのは対戦相手の福岡大大濠・柴田だった。「バットの軌道が(ドジャース)大谷君ソックリ。左中間にも大きいのが打てる」。高校通算19発に、投げても最速149キロ。指名の決め手は、流し打ちで左翼に高々と打ち上げた「ファウルフライ」だった。喜びのあまり交渉権獲得の瞬間は覚えていない。「同じ福岡出身の子と野球がやれる。ものすごくうれしい」。思いは通じた。

 リベンジも果たした。22年は矢沢を一本釣り。昨年は巨人・阿部監督に敗れて西舘のくじを外した。今年、一騎打ちしたのはCS最終ステージで1勝もできなかった同学年の小久保監督。「負けた借りを何とか返そうと。(隣で)ぬああ…って声が聞こえた。確信を持ちながらの『しゃー』」。かねて「人生が大吉」と誇ってきた強運を、ついに発揮した。

 ドラフト当日に、異例の来季続投も宣言。2年連続最下位から2位と躍進した3年目を経て、「今年がまぐれじゃなかったと証明したい。(チーム統轄本部長の)吉村さんから『来年やりますよ。楽しい野球を更にしていきましょう』と言葉をもらって、決めました」。ドラ1で引き当てた柴田こそ、生粋の新庄チルドレン。「『外れ1位』って言い方やめて。当たり1位なんすよ!」。誰よりも選手思いのボスらしく、4年目をスタートさせた。

(堀内 啓太)

 〇…新庄ハムが4位まで身長185センチ以上の大型投手が続くロマンあふれる指名を仕掛けた。1位の柴田(福岡大大濠)は187センチ、2位の藤田(東海大相模)は198センチ、3位の浅利(明大)は186センチ、4位の清水(前橋商)は192センチ。球団OBのダルビッシュ、大谷ばりの長身素材を指名した大渕スカウト部長は「いい選手から獲ろうという基本的な考え方どおりやった。他球団に獲られたりもあって結果としてこうなった」と振り返った。