「白髪を抜くとまた生えてくる?」「髪を染めると白髪になりやすい?」など白髪の科学を専門家が解説

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マリー・アントワネットの頭が処刑前夜に一晩にして真っ白になったという逸話の真偽や、白髪の予防のためにできることなど、科学的に解明されている白髪についてのエビデンスを、オーストラリア・ウーロンゴン大学医学部准教授のテレサ・ラーキン氏が解説しました。

Is stress turning my hair grey?

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◆なぜ髪が白くなるのか

髪を生成する毛包には、髪の原料となるタンパク質のケラチンを作る「ケラチノサイト」という幹細胞と、髪や肌の色素であるメラニンを作る「メラノサイト」という幹細胞の2種類があり、加齢などによりメラノサイトの活動が低下すると、メラニンの生成が減って髪の色が落ちてきます。

髪から色素がなくなると、髪は淡い黄色の光を反射するケラチンの色になるため、灰色や白色、銀色に見えます。

ラーキン氏によると、白髪は20代から50代の間に生え始めるのが一般的で、男性はこめかみともみあげの部分の髪から、女性は前髪などの生え際から白くなり始める傾向があるとのこと。

白髪は色が付いている髪より太く、硬くてごわごわしていますが、これは加齢で幹細胞が変化し、毛包の形が不規則になるのが理由です。また、興味深いことに白髪は色がついている髪より成長が早く、その過程で消費するエネルギーも多いことが判明しています。



◆髪が白くなるメカニズム

白髪の原因は加齢だけではなく、酸化ストレスによって毛包やその中の幹細胞が損傷を受け、メラニンの生成が阻害されることによっても髪は白くなります。

酸化ストレスとは、体内の有害なフリーラジカル化学物質が多すぎることや、それに対抗するための抗酸化物質が不足することによって起きる不均衡のことで、主に心理的・感情的なストレスや自己免疫疾患によって引き起こされます。

ほかにも、紫外線や大気汚染への暴露、喫煙、一部の薬物などの環境要因も影響を及ぼす可能性があります。

2021年の研究により、ストレスで白髪が増えたり、ストレスがなくなると白髪も元通りになったりすることが証明されました。

ストレスによる白髪はストレス解消で元の色に戻る可能性がある - GIGAZINE



また、ストレスは抜け毛の原因にもなりますが、メラニンの生成プロセスは複雑で、メラノサイトはケラチノサイトよりもダメージを受けやすいとされています。脱毛より先に髪の色が抜けるのはこれが理由です。

ラーキン氏は、白髪に関するよくある言説とそれに対する科学的な見解も紹介しています。

◆1:白髪を抜くとまた白髪が生える

ラーキン氏によると、白髪を抜くとそこからまた白髪生えてくるというのは間違いだとのこと。しかし、毛を抜くとメラノサイトが傷つくおそれがあるため、頻繁に毛を抜くと頭が白くなるペースが早くなる可能性があるそうです。

◆2:一晩で頭が白くなることがある

フランスの王妃であるマリー・アントワネットは、ギロチンでの処刑前夜に髪が真っ白になったという伝説があります。しかしこれは間違いで、髪の中のメラニンは化学的に安定しているため、一瞬で白くなることはありません。



マウスの実験では、激しい精神的ストレスがメラノサイトを急速に枯渇することが判明していますが、その影響が一晩で表れることはないとのこと。その代わりに、毛髪の成長速度である1カ月あたり約1cmのペースで白髪が目立つようになります。

また、髪は成長したり停止したりするサイクルを繰り返しており、すべての髪が同時に成長期を迎えることはないので、髪の毛が一斉に白髪になることもないそうです。

◆3:染めると白髪になるのが早くなる?

白髪を促進してしまうかどうかは、染料によるとのこと。髪の染料は、大きく分けると一時的に着色する「一時的染料」、少量の染料が毛に浸透して数回の洗髪に耐える「半永久的染料」、過酸化水素などの酸化剤が化学反応を起こすことでメラニンを脱色する「永久的染料」の3つに分類されます。

3種類のうち、一時的染料と半永久的染料は問題ありませんが、永久的染料は毛包の幹細胞にダメージを与えて白髪や脱毛につながるおそれがあります。

◆4:赤毛の人は白髪になりにくいというのは本当?

髪の色素であるメラニンには、黒褐色の「ユーメラニン」と黄赤色の「フェオメラニン」の2種類があり、毛髪中のユーメラニンが多いと黒色や茶色に、フェオメラニンが多いと赤毛に、どちらも少ないと金髪になります。



2種類のメラニンのうち、ユーメラニンの生成プロセスは複雑でエネルギーを要するので、メラノサイトはダメージを受けやすくなります。一方、フェオメラニンはユーメラニンよりシンプルでダメージを受けにくいため、加齢によって細胞の機能が低下しても色素を生成しやすくなります。従って、赤毛の人も加齢によりメラニンが減少しますが、黒髪やブラウンの髪の人に比べてそのペースは緩やかです。

◆白髪を予防する方法

ラーキン氏によると、白髪が生え始める時期は遺伝で決まるとのこと。ただし、健康に気を配ってストレスを減らし、喫煙や過度の飲酒、紫外線を避けることで、白髪になるのが本来より早くのを防げる可能性があります。また、メラニンの生成にはビタミンB12、銅、鉄、カルシウム、亜鉛といった栄養素が関連しているため、健康的な食生活を送ることも、若白髪の予防に役立つと考えられるとのことです。