ガザ中部にある病院の中庭でイスラエルの空爆により破壊された避難所を見つめる少年/Eyad Baba/AFP/Getty Images

(CNN)アブ・ムハンマドさんは、疲れ切った赤い目で立ち尽くしている。女性や若者たちが汚れた小道を歩き、子どもたちが仮設テントの列の間を駆けていく。ここはパレスチナ自治区ガザ中部のデイルアルバラにある難民キャンプだ。

ムハンマドさんたちはイスラエルの爆撃を生き延び、このキャンプに身を寄せている。爆撃によりこの1年でガザの街路は荒廃。住民は破滅的な暴力に耐えてきた。人が殺され、重傷を負うのは日常茶飯事。ひどい飢えも襲いかかる。

イスラエルは今週、イスラム組織ハマスの最高幹部、シンワル政治局長の殺害に成功した。これによりガザの平和に道が開ける可能性があるとイスラエルの友好国は期待を寄せるが、ムハンマドさんを含む多くの人々は依然として懐疑的だ。今後自分たちの日々の現実に変化が訪れるとは考えていない。

ムハンマドさんはCNNの取材に答え、「彼(シンワル氏)の殺害で戦争が終わるとは思えない」と明言。またシンワル氏が死亡したとの知らせを聞いて「悲しかった」と付け加えた。

イスラエル側から昨年10月7日に発生したテロ攻撃の黒幕と目されていたシンワル氏は、今月16日に同国軍により殺害された。

現在ガザ市民の多くは、イスラエル軍に狙われるとの懸念から、シンワル氏やハマスへの支持を公言するのを恐れている。一方で、ガザを実効支配するハマスを非難するのに不安を覚える人たちもいる。

それでも36歳のサマーさんはCNNの取材に対し、シンワル氏の活動は犯罪だとの見方を表明。そうした活動のために、ガザの住民の命が失われることになったと訴えた。

「シンワルはイスラエルの標的だった。狙われて、殺された。彼はイスラエルを攻撃し、犯罪を行ってきた。私たちはその代償を払い続けている。恐ろしい悲劇によって。子どもたちの血、自分たちの財産、家によって」