年収360万円、40歳独身会社員です。宝くじの「高額当せん」を夢見ていますが、「1億円当たっても一生遊んで暮らせない」と聞きました。NISAなどで運用すれば可能だと思うのですが、実際どうなのでしょうか?

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「宝くじが当たれば、仕事を辞めて遊んで暮らせる」 宝くじを購入するときは、高額当せんを夢見て、こんな妄想を膨らませる人も少なくないでしょう。しかし、仕事もせずに遊んで暮らせる当せん金額のイメージは、人によってさまざまかもしれません。 本記事では、40歳独身で年収360万円の人が宝くじで1億円当せんした場合、当せん金で一生暮らしていけるのかシミュレーションしてみます。また、NISAなどを活用して当せん金を運用するとどうなるかも併せて試算しますので、ぜひ参考にしてください。

40歳以降、独身者に必要な生活費は?

まず、総務省統計局の2023年家計調査年報のデータをもとに、独身の人が40歳から一生の間に必要な生活費を試算してみましょう。家計調査(家計収支編)によれば、単身世帯の消費支出平均は、35歳から59歳で月19万4438円、60歳以上で15万2743円です。
存命期間を平均寿命より少し長めの90歳までと想定すると、図表1の通り40歳から90歳までにかかる消費支出合計は1億165万2600円に及びます。実際には社会保険料などの非消費支出もかかりますが、いずれにしても平均的な生活を送るだけで、1億円を超える生活費が必要です(図表1)。
図表1

年齢 月平均消費支出 月数 消費支出総額 備考 40歳から59歳 19万4438円 240月 4666万5120円 35歳から59歳単身世帯の平均消費支出を採用 60歳から90歳 15万2743円 360月 5498万7480円 60歳以上単身世帯の
平均消費支出を採用 合計 600月 1億165万2600円

総務省統計局 家計調査(家計収支編)単身世帯 詳細結果表2023年 を基に筆者作成
 

40歳で仕事を辞めて、65歳からもらえる年金は?

一方、40歳で仕事を辞めても加入実績に応じた年金は受給可能です。国民年金に20歳から加入し、退職後も60歳まで保険料を支払い続ければ、老齢基礎年金は満額の年81万6000円(2024年度)です。
また、厚生年金の報酬比例部分は、年収360万円で平均標準報酬額30万円、22歳から勤めていれば、加入月数は18年×12ヶ月で216ヶ月になります。これを報酬比例部分の計算式に当てはめると、受給額は「30万円×5.481÷1000×216ヶ月」で約35万5000円です。
つまり、81万6000円+約35万5000円=約116万7000円の年金が受給可能となり、65歳から90歳までの25年間の受給総額は117万1000円×25年間=2927万5000円に及びます。
 

仕事を辞めた40歳以降、「一生遊んで暮らせる」のか?

当せん金1億円に加えて、年金収入2927万5000円があれば、消費支出総額の1億165万2600円を賄うことは可能です。しかし、この試算に非消費支出は含まれておらず、加えて家計調査の調査対象者の多くは持ち家であるため、賃貸などの場合は必要な生活費が増えることが想定されます。
さらに、自身の介護費用、自動車など高額な耐久消費財の買い換え、家のリフォーム費用、万が一の備えなども必要になるかもしれません。何より「一生遊んで暮らす」といえば、平均以上の暮らしぶりをイメージする人もいることを考えると、必ずしも十分な金額とは言い切れないでしょう。
 

NSIAでの投資を活用するとどうなるか?

では、NISAも活用して当せん金の一部を運用するとどうなるでしょう。まず、無理な投資は避け、1億円のうち6400万円は、投資期間中など当面の間、消費支出や自動車の買い換えなども考慮して必要な生活費としてプールします。
残りの3600万円は、NISAの限度額1800万円と、通常の投資1800万円に分け、「長期・積立・分散」を基本に毎月6万円の投資で25年間運用し、それぞれ3%の運用益を得られたと仮定します。
すると、NISAを活用した運用では1800万円の元本に、25年間で約876万円の運用益を非課税で資産に上乗せすることが可能です。
NISAを活用せず運用した1800万円も、売却益課税後で「876万円-876万円×20.315%=約698万円」の収益が残り、図表2の通り運用全体で約1574万円の資産増が見込めます。
図表2

NISA口座
活用有無 積立投資額 売却益
(運用益3%) 元本+
売却益 備考 NISA口座活用 月6万円×12ヶ月×25年
=1800万円 約876万円 2676万円 売却時非課税 NISA口座以外 月6万円×12ヶ月×25年
=1800万円 約698万円 2498万円 売却時
20.315%課税 合計 3600万円 約1574万円 5174万円

金融庁 つみたてシミュレーターを基に筆者作成
ただし、投資にはリスクがあり、図表2の結果が必ず得られる保証はなく、あくまでも1つのシミュレーションに過ぎません。しかし、リスクを抑えながら堅実に資産を増やせれば、「遊んで暮らせる」かどうかは別にしても、経済的な不安を少なくすることは十分可能です。
 

まとめ

宝くじの高額当せんはめったになく、ましてや1億円を超える当せんなどは、極めて低い確率しかありません。また、1億円当せんしたとしても、年齢や思い描く生活スタイルによっては「一生遊んで暮らす」のは無理かもしれません。
しかし、堅実な運用などで、当せん金を有効に活用できる可能性は十分にあります。本記事もそんな当せん金の使い道の妄想に過ぎませんが、宝くじを購入する際は思い切り夢を楽しんでみても良いのではないでしょうか。
 

出典

総務省統計局 家計調査(家計収支編) 単身世帯 詳細結果表 2023年
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:松尾知真
FP2級