2024年10月9日に袴田巖さんの無罪が確定したことで、今後、捜査機関による捜査や公判の問題点の検証が進むのか注目されます。捜査機関は文書などで謝罪をしましたが、弁護団は「検察がいまだに袴田さんを犯人視していて検証の期待はできない」と批判しています。

【写真を見る】捜査機関による検証は進むのか 「袴田事件」の焦点は捜査・公判の問題点の洗い出し 過去の再審無罪事件では「教訓は生かされている」

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>

「我々としては、この談話は、法律としてもおかしいし、事実の認識としてもおかしいし、きちんとした謝罪もなされていない」

10月10日の会見で怒りをあらわにした袴田さんの弁護団。矛先が向いたのは検察のトップの言葉です。

いわゆる「袴田事件」の再審=やり直し裁判では静岡地裁で袴田巖さんに無罪判決が言い渡され、10月9日、検察が控訴する権利を放棄したことで無罪が確定。裁判所が証拠のねつ造を認定したことについて日本の検察のトップ畝本直美検事総長は「捜査機関のねつ造と断じたことは強い不満を抱かざるを得ません」として上で、再審請求手続きが長期間に及んだことについて「所要の検証を行う」としています。

冤罪となった袴田事件での次の焦点は、捜査機関による検証がどこまで進むのかという点です。

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>

「今回の無罪判決で指摘された検察官も警察と連携したねつ造ということを深刻に受け止めていただいて、これからこういうことが二度とないように検証をすべき。国会に調査機関を設けるべきだとかっていう議論もなされているということは聞いていますし、少なくとも、さっきから話がでているように、検察、警察の調査はなかなか困難なところはありますので、別の組織で、別の形で調査していかなければいけないだろうということは考えています」

日本の警察のトップは10月10日、無罪確定について「重く受け止めている」と言葉にしました。

<警察庁 露木康浩長官>

「静岡県警察においても、可能な限り改めて事実確認を行うという報告を受けています。警察庁としても、今後の教訓とする事項があれば、しっかりこれを受け止めて、一層緻密かつ適正な捜査に取り組んでまいりたい」

過去に再審無罪が言い渡された裁判でも捜査機関による自己検証が行われています。

1990年に栃木県足利市で当時4歳の女の子が殺害、遺棄された「足利事件」では無期懲役だった菅家利和さんの再審無罪が言い渡されました。

その4日後には検察庁と警察庁が捜査・公判の問題点を検証した報告書を公表。不十分なDNA鑑定結果を過大評価したことなどに触れられていて、菅家さんの弁護を担当した佐藤博史さんは検証の重要性を訴えます。

<足利事件を担当 佐藤博史弁護士>

「今は刑事裁判でDNAが証拠になっているときに、裁判所は再鑑定というのをいとわないで、再確認する手続きが一般的になっている。その限りでは、足利事件の教訓は生かされていると思う」

ただ、58年の時間が経った袴田事件の検証は相当な時間がかかると話します。

<足利事件を担当 佐藤博史弁護士>

「一番大事なことは証拠の開示、再審の手続きに規定がないということについて。どういう風にスピードアップして再審の結論を出すかということも含めて、法制度の改革に繋げていかなければいけない」

弁護団は10月10日、静岡地検を訪れ、検察側の発表した袴田さんを犯人視する内容は不当だとして声明を提出。現在の姿勢では「検証に期待できない」として、厳正かつ真摯な対応を求めています。