詐欺広告から誘導されたフェイクニュース

写真拡大 (全5枚)

 著名人がテレビ番組内で失言をし、騒動に発展している――こんな内容がかかれたニュース記事体裁の詐欺広告がSNS上で横行している。

 記事をクリックすると実在するニュースサイトを模したページに誘導され、最終的には投資を持ちかける……という手口だ。もちろん名前を使われている著名人は無関係。勝手に名前や写真を使われているだけである。

【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】

 弊媒体ではこれまで数々の詐欺広告に潜入している。もちろんニュース記事風広告をフックにしたパターンも経験済み。堀江貴文さんと北野武さんが対談の中で仮想通貨を勧める偽記事や、「小島よしお逮捕」という驚きの見出しでクリックをさせて、やはり怪しい投資サイトへと導くパターンなどがあった。

 こうしたサイト上では、名前や電話番号など個人情報を抜き取るのが目的。入手後にこちら側とコンタクトを取り、手数料などと称した数万円のお金を振り込ませようとしてくる。

 そんな芸能人を無断で広告塔として使用している詐欺広告。今回新たに見つけたのは「鶴瓶選手の生放送での発言で日銀が提訴」というパターン。

 内容は過去に紹介したものとほぼ同じだった。ニュース記事体裁の詐欺広告から偽の記事ページにとばされ、次に「偽の仮想通貨取引サイト」に誘導。個人情報を登録するよう促される。

▼8月1日掲載記事:偽gooニュース?ホリエモンと北野武が「仮想通貨」を勧める記事のその先を見てきた
https://otakuma.net/archives/2024080104.html

▼小島よしお逮捕の記事はデマ!SNSに横行する詐欺広告の手口
https://otakuma.net/archives/2024090505.html

 ただ折角見つけたので、「偽の仮想通貨取引サイト」の登録フォームに、名前と電話番号を入れてみることにした。いつもどおりなら、すぐに海外から電話が掛かってくるはずである。(※一般の方は絶対に真似をしないでください)

 すると“いつもどおり”すぐに電話がかかってきた。声や発音から察するに、相手は日本人ではなく「日本語がしゃべれる外国人」なのだろう。これも毎度恒例。どうやら日本人が少ない職場らしい。

■ 突然かかってきた謎の電話

【相手】投資をご希望ですよね?初期費用2万5000円払っていただければ口座を開設します。

(筆者)いや、2万5000円持ってなくてですね。

【相手】いつ入りますか?

(筆者)ちょっとわからないので投資をやめたいんですけど。

【相手】わかりました

 これで終わったと思いきや、数日後ニュージーランドから電話があったので出てみた。声は片言の日本語で話す女性だ。後ろでヒップホップが流れていてうるさい。

【相手】以前ご登録された口座に利益があるのですが、おろしますか?

 ん?口座開設は断ったはずだが…。

(筆者)だってお金入れてないので、利益があるわけないですよ。てか後ろで流れてる音楽は何ですか?

 少し、突っ込んでみたところ、無言で担当者が別の男性に変わった。流暢に日本語を使いこなすが、外国訛りである。

【相手】お客さま、口座にお金が入っているのですが出金されますか?

(筆者)いや、口座は作ってないので、お金入ってないはずですが。

【相手】え?口座作ってありますよね?

(筆者)いや、作ってないです。なのに口座に金が入っているとか言うの、これ詐欺ですよね?警察に通報しますよ。

 すこし無言になった。すると……

【相手】捕まえられるものなら捕まえてみろよ。

(筆者)じゃあ、いま警察署の近くなのでこのまま向かいます。

【相手】は?お前殺すぞ!俺たち山口組だぞ?

(筆者)山口組?

【相手】お前の家はわかっているんだ。舐めているとこれから殺しに行くぞ!

(筆者)いや、住所教えてないし無理でしょ。あといまニュージーランドでしょ?

【相手】絶対殺してやる。ツーツーツー…

■ 裏社会の事情通に聞いてみた

 なんと、殺害予告をされてしまった。この件について裏社会に詳しいAさんに話を聞いてみた。

 「まず、山口組っていうのが嘘だね。山口組にもいろいろ、何々組とかあるじゃない。山口組って言うのは企業でいう親会社みたいなものだから、そこに所属している人がそんなちまちました仕事なんてするわけない。やるなら三次団体、四次団体だと思うし、仮に絡んでいたとしてもそういう人たちは脅し文句に山口組なんて名乗らないよ。あと詐欺なんてやったら国際問題とかにも絡んでくるだろうから、そんなビジネスはやらない」(裏社会に詳しいAさん)

 あれからまた電話がかかってくるが、出ても無言で切られるか、また投資で増えた金額を降ろしませんか?との話題ばかり。

 これらの問題がなぜ生じるかというと広告を掲載する媒体側の広告審査が緩いことにある。

 中でも詐欺広告が多いとされるFacebookやInstagram運営のMeta社では、2024年7月より“やっと”詐欺広告に対する取り組みを強化。しかしながら完全とはいえず、他のサービスよりもいまだ多く目にすることができる。これからも詐欺広告とのイタチごっこは続いていくのだろうか。

<参考>
Meta「詐欺広告に対する取り組み強化について」(2024年7月16日公開)

(山崎尚哉)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山崎尚哉 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024100805.html