医師で年収500万円未満も?「勤務医貧乏」避け転職した48歳の夫の「怪しい行動」

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30代の医師の半分が「年収500万円未満」

2024年9月11日、全国医学部長病院長会議は、『大学病院の医師の働き方改革に関する

アンケート調査結果』を発表。これは4月に始まった医師の過重労働を対策のための新制度の影響を、全国82大学とそこで働く医師にアンケート調査したものだ。これによると、労働時間は短縮傾向にはなったが、20%の医師が、年960時間の時間外労働をしていることもわかった。

医師の給与についても調査しており、本務地(大学病院)から支給される年間給与支給総額については、20代医師の87.3%、30代医師の51.3%が、年収500万円未満で働いていることも分かった。働き方改革を実施していくためには、大学病院の医師確保が重要であり、待遇改善への取り組みが必 要となっている。

キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「勤務医の方は、想像以上に給料が安い人もおり、夜勤や当直のアルバイトをされている方も多いです。これを浮気を隠す言い訳にしている人も少なくありません」と言う。

山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載が「探偵が見た家族の連載」だ。

今回山村さんのところに相談に来たのは、通訳の仕事をしている45歳の歩美さん(45歳)だ。「働き方改革で勤務医の給料が激減して、大学病院から転職した夫が、再び当直に出始めて、なんかおかしいんです」と山村さんに連絡をしてきた。一体何があっただろうか……。

山村佳子(やまむら・よしこ)私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。

医師の夫、国立大医学部の息子、医学部を目指す娘

今回の依頼者・歩美さんは、企業の通訳としてフルタイムで勤務している女性です。平日の14時に連絡があり「山村さんにご依頼したいのは、48歳の夫の浮気調査です。来週の水・木・金の3日間のスケジュールでどこか空いてますでしょうか」と理路整然と話していました。

その日の夜に対面した歩美さんは、声のイメージ通り、仕事ができそうな女性でした。白のトップスにグレーのジャケットを羽織っており、セミロングの髪はヘアセットされています。A4サイズのナイロン製のバッグは、さりげなくハイブランド。手元にはアート作品のようなブルーの石が入ったリングをはめていました。

あまりの美しさに見とれていると「これ、インクルージョン(内包物)が入ったサファイアなんです。夫が今年1月の結婚20年の記念日に“いろんなものを包み込み、家族の時間を重ねてくれてありがとう”とくれたんです」と語っていました。

歩美さん夫婦には、高校生の娘と大学生の息子がおり、息子は国立大学の医学部に在学中、娘は名門進学校から、医学部を目指して勉強中なのだとか。

「ウチの子供たちの勉強ができるのは、私が夫のサポートをしているから。大学病院に勤務している夫は仕事が忙しすぎて、家事も育児も丸投げ。私だってフルタイムで働いているのに、ホントに何もしないんですから」

「医師が金持ちなのは開業医のやり手だけですよ」

さらに夫は給料が安い。大学病院からの給料では足りず、当直や検査などのアルバイトでお金を稼いでいたそうです。

「それでもやっと年収1千万円に手が届くかどうかです。医師が金持ちなのは、開業医のやり手だけですよ。夫は経営センスもスタッフを束ねる力もない職人医師です。でもそこが好きで、全力でサポートしていたのに、裏切ったんですよ」

歩美さんは、毎日5時起きで家族3人分の弁当を作り、朝7時に出勤。その途中に、子供達にモーニングコールをしていることなどを話していました。夫婦のなれそめを聞くと「21年前、医療系の学会の通訳をしていたときです」とのこと。

「医師として参加していた夫が、私に一目ぼれをしたとかでしつこく連絡先を聞いてきたんです。断っていたら、ウチまで尾行してきて、真正面から“好きです。付き合ってください”と。私、それまでいろんな人と交際をしてきたんですが、付き合うことをぼかす男性が多いじゃないですか。そこをはっきりさせる夫が好きで、交際1年後に結婚したんです」

夫は歩美さんの通訳としての能力の高さを絶賛。自信を得た歩美さんは、現在勤務する外資系の会社に正社員として入社。2人の子供を授かっても、産休・育休を最小限にし、近くに住む歩美さんの両親の手を借りて、子供を育てます。夫は全く当てにならず、育児はノータッチだったそう。

「35歳あたりから、私にもノータッチで、性交渉もありません。求めたことがあったのですが、“疲れているから、外でやってほしい”と言われて、すごく傷ついたんです。それなのに今、夫は別の女性とラブラブしている。浮気に気づいたのは、最近です。4月に転職するまでは地味で太ったおっさんだったのに、転職してからはみるみるシュッとしてきた。さらに、ため息をついたり、手紙を書いたりしている。女の気配しか感じないんです」

給与が下がるのを避けて転職

夫がこれまでに浮気をしたことはなかったのだとか。

「忙しくてそれどころじゃなかったんですよ。夫は患者さんを助けたり、診察している自分が大好き。急患の対応とか、ドーパミンが出っ放しだったんじゃないですかね」

異変があったのは、4月にそれまで勤務していた大学病院から、別の病院に転職したこと。そのきっかけは、医師の働き方改革で勤務時間も給料も減ることがわかったから。

「だから1.5倍の給料を出すという病院に転職したんです。そこは、介護施設も経営しており、潤沢に資金がある。夫の仕事のメインは訪問診療とのことでした。夜勤がないことも魅力だったそうです」

頼まれると断れない性格の夫は、大学病院時代、夜勤や当直を引き受けていたそう。

「産休の医師などの穴埋め、急患対応なども多く、家族で食卓を囲むことがほとんどなかったんです。4月に転職してからは、家族で夕飯を食べたり、医師を目指す息子と娘が夫と談笑する風景が見られたりと、幸せを感じていました。でも、それが9月に入ってぷっつりなくなったんです。夜勤が頻繁に入るようになり、“3連続で当直になった”とか、“急に当直になった”とか言ってくる。絶対におかしいんです」

歩美さんが理由を聞くと「人手不足なんだ」と言い、逃げるように出ていくのだとか。

「昼の診察が明らかにメインな病院で、夜勤なんてあるわけがありません。あと、娘は潔癖なので、夫の不倫がわかったら“キモい”と言うに決まっています。それに、夫の性格を考えると、明らかにロマンティックな演出をしたプレゼントを渡しているはず。お金、そして家族の時間を浮気相手に割いているのが許せない!」

歩美さんは「夫は結婚している。不倫ということがわかって関係を持つ女性が、まともだとは思えない」と怒っていました。

調査の目的は、夫と女性を別れさせることです。そこで、私たちも調査に入ることにしました。

◇困っている患者さんや同僚のために一生懸命医師として仕事をしてきた夫。そんな夫を尊敬しているからこそ、家事育児を一手に引き受けてきた歩美さん。そもそもそれだけ大変な仕事をしていて給与が低いことも、家族と会えないくらい忙しくせざるを得ないことも問題ではある。ただ、社会のそういう状況で家庭が壊れてしまっていいのだろうか。

夫は本当に浮気をしているのか。そして現実を知ったうえでの歩美さんの決断は……詳しくは後編「「3日間当直だから」勤務医の給与の安さで転職、医師の夫の「最後の恋」の行く末」にてお届けする。

「3日間当直だから」勤務医の給与の安さで転職、医師の夫の「最後の恋」の行く末