『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』©︎日本テレビ

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 元警察官の兄・渡良瀬貴一(竜星涼)と天才ホワイトハッカーの妹・優貴(八木莉可子)が、父親を殺した犯人の手掛かりを追いかけて、犯罪組織「幻獣」へ身分を偽って潜入する。日本テレビ系列の新土曜ドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』が10月5日にスタートした。

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 2019年2月。貴一と優貴の目の前で、警察官だった父親が右手首に“鳳凰”のタトゥーが入った人物によって殺害される。それから5年後、ある詐欺行為の現場で大立ち回りを繰り広げた貴一は県警に捕らえられ、捜査二課長の吉野(長尾純子)から「幻獣」への潜入を命じられる。一度は拒否したものの、優貴がハッキングで犯した罪をちらつかされたことでやむなく引き受けることにした貴一。早速末端アルバイトの説明会へと出向くのだが、そこには貴一を追ってきた優貴がおり、2人はチームを組んで詐欺の受け子をすることになる。

 この第1話序盤、県警の捜査官たちが詐欺行為の現場をマークするシーンのなかに、『大病院占拠』(日本テレビ系)と『新空港占拠』(日本テレビ系)の両作で捜査支援分析センターの情報分析官として活躍した志摩(ぐんぴぃ)の姿が。さらに会話のなかで和泉管理官(ソニン)の名前も登場しているように、本作は脚本が福田哲平でチーフ演出が大谷太郎、そしてプロデューサーが尾上貴洋と、『占拠』シリーズのチームが再結集した、同じ“ユニバース”に属した作品ということになるだろう。

 とはいえ詐欺の末端バイトに応募して貴一と優貴と共に働くことになる女性、芦田なお美を演じているのは『大病院占拠』で“鬼”と通じていた看護師を演じていた呉城久美。見たところまったく異なるキャラクターのようなので、彼女については同ユニバース内の同一キャストによる別の役柄と、シンプルに捉えていいかもしれない。いずれにせよ、『大病院占拠』では色分けされた“鬼”、『新空港占拠』では干支を模した“獣”が敵役として立ちはだかったが、今作では鳳凰を頂点とした青龍・白虎・朱雀・玄武の“幻獣”たちが、例によって顔が見えない存在として待ち受ける。

 その前2作では、エピソードを重ねるごとに一人ずつその素顔が明らかにされていき、ちょうど中間のエピソードで全員(これまでは10人ほどいたが、今回はその半分)が出揃ったのち、後半戦では彼らのバックグラウンドを追っていくという二段構えが用意されていた。今作でも案の定、第1話から“白虎”を演じているのが吹越満だと明らかにされる。もっとも、中盤で彼の声が流れた瞬間にすぐにわかってしまうような見せ方を、あえて選んでいるようにも思えてならない。

 また、同様に前2作を振り返ってみれば、第1話の段階から終盤の展開にも大きく関わってくるような様々な伏線がちりばめられていたわけで。今回の『潜入兄妹』第1話は、貴一と優貴が“幻獣”に潜入するまでの流れと、彼らを取り巻く周囲の人間関係がスピーディに提示されている。もうすでにここに何かしらのヒントが隠れていたのだろうか。『占拠』シリーズのチームが作っている以上、“仕掛けだらけ”のドラマだと思いながら観ても差し支えはないだろう。

(文=久保田和馬)