森田望智、ハ・ヨンス…『虎に翼』好演の若手たちが“朝ドラ”ブランドでブレイクする「業界事情」

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放送が始まる前から期待度は爆上がり、始まってからも何かと話題に上がったNHK連続テレビ小説、通称“朝ドラ”『虎に翼』が最終回を迎えた。

『女性の立身出世物語』という朝ドラの保守・本流のテーマに変わりはなかったが、主人公の職業が裁判官という、これまでの朝ドラでは見られなかった難易度の高い職業であったことが注目を浴び、また、主人公・佐田寅子を演じた伊藤沙莉の好演が相まって多くの視聴者の引き付けたドラマだったと言える。

朝ドラといえば、主人公を誰が演じるのか、すなわち主演俳優が誰なのか、発表前から注目され予想までされるようになった。

ヒロインの伊藤沙莉は『ひよっこ』に出演

昔は無名の新人か、まだそれほど出演作品のない俳優が主演に抜擢されることが多く、主演俳優の名前が発表されても、それほど盛り上がることはなかったが、最近は知名度のある俳優が選ばれることが多くなり、朝ドラに対する注目度も以前と比べて高くなっている。

伊藤は’17年度上半期放送に放送された第96シリーズ『ひよっこ』に出演しており、当時から注目を浴びていた。

その演技力を認められ、朝ドラ出演後の活躍は目を見張るものがあり、満を持しての主演となったわけだが、今作品で評価はさらに上がり、今にも増して、引っ張りだこになることは間違いない。

ドラマプロデューサーや映画関係者はこう口を揃える。

「『朝ドラ』主演は俳優にとって勲章みたいなものです。最近はすでに主演作が何本かあって、活躍中の俳優が主演となることもありますが、かつて朝ドラは無名の新人の登竜門でした。朝ドラ主演を果たせば、その後の出演作品は次々と決まり、将来が約束されたようなものでした。実際に朝ドラから大躍進した俳優は多い。朝ドラ主演はジャンプ台なんです」

そして“朝ドラ効果”は主演女優に限ったことではない。

映画やドラマのキャスティングを担当する制作会社の社員によれば、

「朝ドラでは毎回、主演女優のほかに脇役やチョイ役で、“この子誰?”という、ちょっと気になってしまう俳優が出演し話題になります。朝ドラがドラマ初出演の人もいれば、それまで何本かドラマ出演経験のある人もいますが朝ドラが契機となって、その後、飛躍的に活躍するケースが多いですね」

今回の伊藤もそうだが、近年は清原果耶、有村架純、黒島結菜など脇役で出演した後に、主演の座を獲得する俳優も増えた。

今作は“金の卵”が多かった

そのため、朝ドラ出演を目標に掲げる俳優は多い。

「映画やドラマのキャスティングをするときに、監督やプロデューサー、テレビ局の編成などにキャストの説明をするのですが、“『朝ドラ』出演経験がある”と言うと、細かい説明が必要ないんです。さすがに、主演俳優ほどの知名度があれば知らない人はいませんが、業界関係者でも朝ドラどころか、テレビドラマを見ない人もいますので、そういう人たちは脇役クラスの新人俳優さんの宣材写真を見てもピンときません。ところが“朝ドラに出ていました”と言うだけで、即決となります。今でも『朝ドラ』は一つのブランドで、しかもかなりの“ハイブランド”なんですよ」(前出・制作会社社員)

新人俳優にとって“朝ドラ主演”は強力な武器なのだ。

そして『虎に翼』では、そんな“金の卵”がいつもと違って多かったのではないかという。

「朝ドラでキラリと光る演技で注目を浴びる人は毎回2、3人、多くても5人くらいでしょう。ところが今回はどんな脇役の人もチョイ役の人も、それぞれエピソードが描かれ、印象に残る演技で、注目されました。『虎に翼』で“あの役をやってた人”と言われれば、名前がわからなくてもすぐに顔が浮かびます。一つのドラマで脇役、チョイ役すべてにスポットが当たるなんてことは、なかなかないですからね」(テレビ局ドラマ制作プロデューサー)

花江役の森田望智や崔香淑役のハ・ヨンスはもちろん、直明役の三山凌輝、道男役の和田庵、玉役の羽瀬川なぎ。『新潟編』で登場した裁判所職員の堺小春(堺正章の娘)や裁判官役の岡部ひろき(寅子の父親を演じていた岡部たかしの息子)、森口美佐江役(終盤東京編では美雪)の片岡凜など、ほかにもまだまだいるが、個性派俳優が一気に誕生し、新ドラマのキャスティングが楽しみだという。

『虎に翼』から羽ばたいたルーキーたちがどんな活躍を見せてくれるか。そしてその中の誰が主演俳優となって朝ドラに戻ってくるのか、そんな予想をするのも朝ドラの楽しみ方の1つだ――。

 

文:佐々木博之(芸能ジャーナリスト)