【対談】千秋(DEZERT) × 葉月(lynch.)、<This Is The “FACT”>直前に語る異色の存在感「ずっと謎で、だからこそ怖い」
DEZERT主催<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>が、10月5日の名古屋公演を皮切りに11月15日の東京公演まで、東名阪3ヵ所3公演で開催される。同ツアーはDEZERTが対バン相手の地元に討ち入るべく、名古屋DIAMOND HALLにlynch.、大阪BIGCATにSadie、Zepp ShinjukuにMUCCを迎えて行われるものだ。
◆千秋(DEZERT) × 葉月(lynch.) 画像
2017年1月29日に新木場スタジオコーストで行われた<DEZERT PRESENTS 【This Is The "FACT"】>開催前の対談取材時にDEZERTの千秋は、「コンセプトとしては、“This Is The FACT=ここ以外ヴィジュアル系じゃない”っていうもの」と語っていた。当時は、武道館を経た先輩バンド3組と武道館を目指す同年代バンド3組、計6組から成るイベントだったが、7年半が経過した今、DEZERTは年末に武道館ワンマンを控えていることに加え、ヴィジュアルシーンには当時からの変化がみられる。
◆ ◆ ◆
■7年前の<This Is The FACT -EXTRA->は
■ずっと心残りだったんですよ
──千秋さんが初めてlynch.のライヴを観たのが2007年だったそうですが、どういうきっかけだったんですか?
千秋:僕が高校生のときだったんですけど、大阪MUSEで、Sadieとlynch.とギルガメッシュのスリーマンライヴを観に行ったのが初めてでした。まだ自分がバンドを始めるとは思っていなかった頃ですね。僕らの高校でヴィジュアル系が流行っていて、インディーズバンドを掘り下げていこうみたいなブームがあったんです。僕はSadieが好きだったから、学校帰りに友だちとSadieを観に行ったのが2007年4月6日の大阪MUSE(イベント<BARKING LOUD EMPIRE>)。その頃はlynch.もギルガメッシュも数曲知っていたという感じで…当時インディーズバンドのCDはレンタルもなかったし、かといって専門店に行く勇気もないので、基本的には友だちから回ってくるというのが多かったんですけど。
葉月:そうなんだ。
千秋:友達から借りたCDで、数曲知っている感じでしたね。それでライヴを観に行ったんですけど、lynch.のときはフロアの後方で観てたのを覚えてます。
──そこからDEZERTというバンドとして、lynch.と会うことになるのはいつ頃ですか?
葉月:いつだろう。<Over The Edge>(2007年〜2016年まで開催されていたV系年越しイベント)とかで会ってるのかな?
千秋:2014年のSHIBUYA AXですね(イベント<MOSH presents TOKYO MOSH PIT vol.2>2014.1.4)。僕らはオープニングアクトで出演したんです。忘れられないのが、僕が挨拶をせずに、玲央(G)さんから怒られたという。それも“挨拶がない。オラァ!”っていう感じじゃなくて、態度というか、そういうことで普通にお叱りを受けたっていう感じで(笑)。
葉月:ああ、あった気がするな。っていうことは、大阪で初めてバンドのライヴを観てから、7〜8年でSHIBUYA AXまで辿り着いてるってことでしょ? それもバンドを始める前から数えてって考えるとすごいスピードだよね。
▲千秋 (DEZERT)
──それがDEZERTとlynch.の初共演でもあったわけですね。
千秋:そうだったんですけど、僕らは当時、共演だとは思ってなかったんですよ。オープニングアクトっていう枠も好きじゃなかったというか、主催の方が推してくれて、全然実力が足りてない状態で棚からぼた餅みたいな感じで出演したのもあったから、僕は正直、“挨拶するのもな”っていう感じだったんですよ。当時、尖っていたのもあって、どうせ誰も僕らなんか相手にしてないだろうっていうスタンスだったし。そうしたら怒られたっていう。
葉月:はははは。
千秋:「すみませんでした」っていう。
──葉月さんがDEZERTを認識したのは、その頃ですか?
葉月:たしかにそのイベントでオープニングアクトのバンドがいるというのは知っていたんですけど、まだ印象はなかったかもしれないですね。勢いがある若いバンドが出てきたっていう感じで、その直後くらいから名前を知ることになったと思うんですけど。「「変態」」っていう曲があるじゃないですか?
千秋:はい。
葉月:あの曲のミックスをギルガメッシュのЯyoくんがやってるとかで音源を聴かせてもらって。「こんなバンドがいるんだ、いいね」って言ってたのは覚えてます。それが2016年あたりかな。“面白い人たちが出てきたな”って思いましたね。
──そこから早い段階で、2018年にはDEZERT主催のツーマンで対バンしているんですよね。
千秋:それこそ、<【This Is The “FACT”】-EXTRA->(2018.6.16@渋谷CLUB QUATTRO)です。当時は僕が完全にバグってた時期だったというか、自分らでマネージメントして、苦しんでいたときのような気がするんですよね。<EXTRA>はツーマンで会場ごとに、己龍、lynch.、LM.Cの3バンドに出ていただいたんですけど、そのときの記憶がないというか。
──DEZERT主催イベントで、その3バンドとツーマンしたのはどうしてですか?
千秋:“どうしても倒さなきゃいけない”っていう感覚が、そのときはすごく強かったんです。lynch.先輩に限らずMUCC先輩に対してもそうだし、“対バン相手には嫌われなきゃいけない”っていうか、何か残さなきゃいけないっていう固定観念が強くて。DEZERTというバンドが行き詰まっていたのもあるかもしれないし。それも発端となって、今回の<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>にもつながるんですけど。
▲葉月 (lynch.)
──なるほど。当時、DEZERTが抱えていた焦燥感のようなものって、葉月さんも理解できるところはありますか?
葉月:僕らも当時、同期とか先輩とかで対バンする相手がいなくなっていて。というのも、解散しちゃってたり、MUCCとは逆に対バンし過ぎていたので、若いバンドとたくさん対バンしていたんですね、その頃は。DEZERTとかアルルカン、R指定もそう。呼んでくれたライヴには全部出ていたし、もう少し前に遡れば、BORNとMEJIBRAYとDIAURAのスリーマン(2013.9.15@恵比寿LIQUIDROOM)に、こっちから「前座で出してくれ」と言ってシークレット出演したことがあったり。とにかく“若い人を全部刈り取ってやろう”と思ってもがいていた時期でもありましたから。それができていたかわかりませんけど(笑)。焦りとか、そういう気持ちはすごくよくわかります。
──2018年頃というと、lynch.は幕張メッセ(<lynch. -13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]>2018.3.11@幕張メッセ国際展示場)であったり、大きな会場でワンマンをやっている時期ですよね。
葉月:それでもやっぱり、僕らのことを観たことがない人も多かったので。DEZERTファンのような若い方は僕らのことを観たことがないと思っていたから、“獲りにいくとしたら、まずそこしかない”っていうのはあったかな。他のジャンルにいったり、大きなフェスに出演するよりも、まずそこにいこうっていう。だからDEZERTが僕らを呼んでくれたのは嬉しかったですね。
──千秋さんは「行き詰まっていて、記憶がない」とおっしゃいましたが、葉月さんは<This Is The FACT -EXTRA->のDEZERTや、そのときのライヴで印象に残っていることはありますか。
葉月:会場が渋谷CLUB QUATTROだったので、舞台袖に観るスペースもなく、ステージ本番はモニターで観たくらいなんですけど。ただ千秋くん、なかなか会場に来ねえなっていうのは印象的でした(笑)。
──会場入りが遅かったと(笑)。
千秋:ははは。たしかそのときも、挨拶はひと言ふた言だった気がします(笑)。本当に内容はあまり覚えてないんですけど、lynch.から迸る“客を獲ってやろう”感がすごかったのは覚えてます。
葉月:はははは。
千秋:対バンやイベントに呼ばれて、わかりやすくそういう感じを出すバンドって、当時のシーンにいなかったんですよ。“シンパシーを感じて”とか“同じ匂いを感じる”とか、みんな言い訳がましいことを言って、対バンやイベントに出てるわけじゃないですか。本当は、“相手の客を獲ってやろう”って絶対みんな思ってるのに。そのときのlynch.はもう明らかに、“マジで客を獲りにきてるやん!”っていうのがあって。俺らも逆に、“獲られまい”みたいな謎のムードもあったような気がします。だから僕的には…こう言うと語弊があるかもしれないですけど、“めちゃいいツーマンだった”とは思えなかったんですよ。
葉月:ほう。
千秋:そのときの<This Is The FACT -EXTRA->でやった3バンド全部ですね。それはDEZERT側の問題で、LM.Cも己龍もめちゃくちゃ優しくしてくれたんですけど、突っぱねちゃったっていうのが僕のなかで心残りで。もともと<【This Is The "FACT"】>というイベントはアルルカンとかNOCTURNAL BLOODLUSTとか、同世代のバンドと回るDEZERT主催ツアーで、そこから派生して、先輩バンドに挑むということで<EXTRA>と名付けた特別なものだったと思うんです。今だったら最高なのに!って思えるのに。
葉月:はははは。今回またできるんだからいいじゃない(笑)。
千秋:そうなんですけどね。“最高なのに”って思っていたものが、当時はできなくて。結構ずっと心残りだったんですよ。
◆対談【2】へ
■ヴィジュアル系のボーカリストとして
■一番強いタイプですよね、千秋君は
──先ほどの千秋さんの発言に「DEZERTというバンドが当時行き詰まっていたのもあるかもしれないし。それも発端となって、今回の<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>にもつながるんです」という言葉がありましたが、“今だったら最高なのに!って思える”という気持ちを果たすのが、<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>ということなんですね?
千秋:<This Is The FACT -EXTRA->から6年の間に、僕ら自身にもいろんなことがあったし、lynch.先輩は日本武道館ワンマンを経験したり、コロナ禍でお互いにもがいている部分もあった。そんななかで、それでもバンドは続いていて。俯瞰で見てもシーンにはいろんなことがあって。というので、やるならここしかないだろうって。
──このタイミングで再び先輩たちとのツーマンを、と。
千秋:lynch.の地元・名古屋で、Sadieの地元・大阪で、東京ではMUCCとやりたいと思ったんです。で、lynch.先輩はいつスケジュールが空いてるのかを、早めの段階でSORA (Dr)君に聞き出してもらって。lynch.先輩からは二つ返事で快諾いただきました。それも一番最初にOKしてくださったのかな。僕は嫌われてると思ってたから、意外だったんですけど。
葉月:ははは! そんなことないから。
千秋:すごくありがたく思っています。
▲lynch.
──お二人共フロントマンでありボーカリストですが、そういう視点で、千秋さんは葉月さんのスタイルについてどう感じていますか?
千秋:葉月さんはシャウトが独特っていうのが、最初に聴いたときの第一印象としてありましたね。僕のなかでは、lynch.の葉月さんはひとつの技術としてシャウトを使っているという感じがあって。…これは媚び売ってるとかでなく、僕のシャウトの仕方は葉月さんの真似からでしたね。だから、シャウトがすごくカッコいい人っていうイメージ。
葉月:へええ。
千秋:特にlynch.は最初から、サビでシャウトするっていう海外バンドみたいなことをしてたと思うし。
──たしかに葉月さんにはシャウトのイメージがあります。
千秋:うん。あとはまず、手足が長いなっていう。
葉月:はははは!
千秋:ボーカリストとしてノースリーブでステージに出られるのがすごい。たぶん、これはいろんなボーカリストが感じてると思うんですけど、出れないんですよ、ノースリーブでステージに。カッコつかないから。
葉月:そう?
千秋:ノースリーブが似合う人と似合わない人がいて。本当は僕もノースリーブで出てみたいんですけど、ちんちくりんになっちゃうから出れないっていう(笑)。手足長いなぁと思ってます。
──スタイリッシュですよね。逆に、千秋さんというボーカリストを葉月さんはどう見ていますか?
葉月:ヴィジュアル系のボーカリストとして、一番強いタイプですよね。言い方を変えれば、変わったタイプというか。千秋君本人はどう思っているかわからないけど、いい歌を歌おうとか、そういうことへの興味はもうなさそうで、そんなことよりも“ステージでバンドをやってる俺を見ろ”みたいな、そういうタイプに見えて。それがすごく美しい、というかね。
──なるほど。
葉月:言葉は悪いですけど、ただ歌が上手いだけの人って、ものすごくたくさんいるんです。だけど、その逆というか、圧倒的な存在感を見せられる人は少ないから。そういうタイプなのかなっていうのは、勝手に思っていましたね。もちろん上手くないとかじゃないですよ、そういうことを超えている。一番怖いタイプです。
──バンドのフロントマンとして、お二人の存在感は強烈です。それに加えて、お互いがそれぞれのバンドでのメイン・ソングライターというところで、バンドの世界観を作り上げていると思うのですが、それぞれのアプローチについてはどうですか?
葉月:千秋君がメインコンポーザーなの?
千秋:そうです。
葉月:DEZERTももう結成から13年やってきて活動歴が長いけど、今のところ曲には困らない感じ?
千秋:そうですね。僕、あまり書きたくて曲を書いてるわけじゃないので。
葉月:ん? 面白い話きた。
千秋:自然とそうなったんです。たぶんメンバーが、そういうバンドにしようって言ってくれたのかな。俺が持ってきた曲で、俺の説明付きでアレンジをして、歌詞も全部俺が書いて、みたいな感じなんです。なので、特に困らないですね。
葉月:なるほどね。千秋君のイメージがそのまま投影されているから、困らないということか。lynch.も僕がほぼ音源と変わらない状態まで作って、それをみんなに渡して。「変えたいところがあれば変えてもらってもいいですけど、ここだけは変えないでください」っていうところをメンバーに伝えたり。で、みんなに覚えてきてもらって演奏するっていうパターンなんです。仕上がりはそんなにデモと音源は変わらないと思いますね。
──変わってもかまわない?
葉月:バンドらしさみたいなものはlynch.はステージで出ているから、そのほかは別にいいかな、という感じでやっているんですけどね。ただ、lynch.は活動が長いっていうのもありますけど、“もうこれ、曲できねえぞ”っていう時期もあって、結構困りましたね。今は、二周くらい回って大丈夫になってきたんですけど。新しいものを生み出そうとし過ぎた時期があって。そのときは無理でしたね。
千秋:そういうときはどう乗り越えたんですか?
葉月:“今までやったものをやってはいけない”という考え方をやめようと。それが自分たちが作ってきた“らしさ”でもあるはずだから。それをいじくりまわしながらやっていくのも、別に悪くないなという思いがあって。だから今のほうが、もがいていた時期よりもファンの人も楽しめていると思うし。いい感じだと思いますけどね。
▲DEZERT
──DEZERTでも制作面での大変さはありますか?
千秋:うちはまず、別の問題があるというか。曲作りや音楽面に関しては、みんな信頼してくれてる自信があるんですけど。まあ、僕の性格面だったりは…。
葉月:ははは!
千秋:という部分を乗り越えた上での、武道館ワンマンだと僕は思っているんです。
──12月27日にDEZERT初の日本武道館ワンマン<DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」>が開催されます。
千秋:だから、僕らの武道館も前途多難になるはずなんですよ。順風満帆じゃないっていうか。武道館って、さっとやるか苦しんでやるかのどちらかだと思っていて。lynch.も後者だと思っているんです。
葉月:そうですね。一度中止になりましたし(2021年2月3日に開催予定だった<15TH ANNIVERSARY THE FATAL HOUR HAS COME AT 日本武道館はコロナ禍の緊急事態宣言で中止に。<“THE FATAL HOUR HAS COME” AT 日本武道館>を2022年11月23日開催)。
千秋:2018年に幕張メッセをやったときの話も聞いていて、“何人も入ったんだ、すげえな!”みたいな。そこから決まっていた武道館ワンマンがコロナ禍の影響で流れてしまったり、というストーリーがあるじゃないですか。lynch.が歩んできた道は、わりと他のバンドと違うんですよね。セルフマネジメントや、メジャーデビューの仕方とか、その後の歩みもそう。言うてもDEZERTって、自主でやってから事務所に所属してっていう、実はど真ん中を歩いてきているバンドなんですよ。僕にとってlynch.はずっと謎で、だからこそ怖い(笑)。lynch.が対バンにいると、誤解を恐れず言えば、“ええっ…”てなる。
葉月:はははは。
◆対談【3】へ
◆対談【1】へ戻る
■絶対にトゲトゲしないって決めてます
■俺は嫌われないぞって気持ち
──lynch.とDEZERTの道のりは対極だし読めない部分があると?
千秋:“うまいこともっていきそうやな”っていうバンドでもあるんです。アルルカンとか、MUCCとか他の先輩が相手だったら、別のところで戦えるんですよ。その人のパフォーマンスを見て…まあ、あまりそんなことしないですけど、その人がMCでこう言ったから、こうしようかなとかも思えるんです。だけど、lynch.に関しては、触れんほうがいいっていうか。
葉月:でも、前回の対バンでモノマネしてなかったっけ(笑)?
千秋:それ、めっちゃ怒られたんですよ、lynch.ファンの方から(笑)。かといって、めっちゃ怖いファン層でもないし、ライヴでちゃんとノッてくれたりするし。“これはちょっと、あまりこすらんほうがいいな”っていう。触れんほうがいいっていうのは、今までずっとそう。相性がいいとも思ったことがないですけど、悪いとも思ったことがないですし。うちのお客さんはもちろんlynch.の曲を知ってると思うんですけど、“DEZERTとlynch.のライヴ、両方に行っているお客さんっているのかな”って。いるんだろうけど、僕の肌感ではあまり聞かないんですよね。ってことは、今やったらすごくいいじゃんっていう。
葉月:うん、わかる。
千秋:特に、僕自身がもうギスギスしてないから。お客さんを獲ってやろうとかじゃなくて、お互いにいけるところまでいけばいいじゃんっていう。たぶん絶対いいもの観せてくれるからっていう。だから、今回がスタートになればいいなって、僕はすごく思っているんです。仲良くなるためのスタートというよりは、こうしてバンドを続けて、同じステージに立っていることって、わりと奇跡に近いような気もしてきてて。今、ヴィジュアル系に限らずですけど、いろんなものが淘汰されてきているじゃないですか。
葉月:そうだね。続けることが難しい時代でもあるだろうね。
千秋:この間、MUCC先輩のツアー(<MUCC TOUR 2024「Love Together」>)に呼んでもらって、対バンさせていただいたんですけど、長く続けているバンドってやっぱりすごいんですよ。僕らも13年なので、続いているバンドになってきたんですけど、その年月の持つエネルギーっていうのはやっぱり違うんですよね。
──と言いますと?
千秋:僕ら自身も昔、“若いほうがエネルギーが強い”と思っていたんですけど、そういうものとはまた違う形になってきていると思うので。間違いなく、それはいいエネルギーになっていると僕は踏んでいるんです。
葉月:だから今、<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>をやることに意味があると。
千秋:はい。今回の<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>は、Sadieに関しては僕がファンだったというのがあるので別ものではあるんですけど、絶対にトゲトゲしくはしないって決めてます。
葉月:はははは。
千秋:内容は置いておいて、いい意味でピースフルであるべき。“俺は嫌われないぞ”って気持ちで挑もうと思ってます。
──「lynch.はずっと謎で、だからこそ怖い」という発言もありましたが。
千秋:稀有な存在だと思うんですよね、lynch.は。若いバンドの子たちからしたら、モデリングになるべきバンドでもあると思う。バンドって昔はまず、有名な事務所に所属してとか、プロセスがあったと思うんですけど。「lynch.の事務所ってどこ?」って言われても、わからないじゃないですか。ということは、モデリングすべきバンドだし、結構モデリングできるはずだと思うんですよね。『lynch.が武道館やるまでのマネージメント力』っていう本を出したら、バンドマンにとってはありがたいと思いますね。僕自身、読みたいし。
葉月:ははははは。
──葉月さん自身は、変わった歩みだったという自覚はありますか?
葉月:ありますけどね。本当は僕も、有名な事務所に入って、スパーンと売れて、デビュー1年で武道館ワンマンをやりたかったんですよ。だけどlynch.は、いろいろあって最初に入った事務所をすぐ辞めちゃったんです、“ろくなもんじゃねえ”って。当時は事務所に入ってなんぼみたいな時代でしたけど、「とりあえず、自分たちでやろう」ってみんなで話して。結成から7年くらいは全て自主でやっていたのかな。ただ、それも結果的にそうなったという感じなんですよね。
──意図して進んできたというよりも。
葉月:うん。事務所からいろいろな誘いがあったとしても、自分たちのやりたいこととか、自分たちでやるメリットを超えてくるような話がなかったというかね。簡単に言えば、自分たちでマネージメントすると、好きなようにできるじゃないですか。リリースのペースもそうだし、曲調も作品形態もそう。そういうことを他の誰かに決められるのも嫌だったから。まぁ、単純に自分たちでやったほうが、当然ですけど身入りもいいじゃないですか。
──レーベルに関しては?
葉月:メジャーからリリースしたいという話が、2010年とか2011年にあって。そのときも「別にもうメジャーにいかなくてよくない?」って言ってたんですよ、僕は。だから、当時は相当わがままを言ってたと思いますよ(笑)。「自分たちだけでこれだけやれてるから、これより良くならないと嫌です」とか。
──実績を把握しているから、より具体的な交渉もできるわけですね。
葉月:そうしたら、それよりもいい条件を提示してくれたから、メジャーでやっているというだけなんですよ。
千秋: lynch.のやり方は今の時代、特に参考になると思うから。やっぱり若いバンドは絶対に話を聞いたほうがいいと思う。
──<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>は、両バンドにとっていいタイミングでの開催となりそうですね。改めて、ライヴへの意気込みを聞かせてください。
千秋:ぶっ倒します!
──あれ、「絶対にトゲトゲしくはしない」んですよね(笑)。
千秋:ぶっ倒します。それは絶対そうですよ。以前の<【This Is The “FACT”】-EXTRA->でlynch.が、「「変態」」をコピーしてくれたんですよ、サプライズで。それがまたいやらしくて、ちょっとカッコよかったんですよね。リスペクトのかけらも感じなかったんですけど(笑)。
葉月:ははははは!
千秋:だから、今回は勝ってやろうっていう(笑)。俺らは、そのとき用意してなかったんですよ、lynch.の曲を。っていうのも、“そういうんじゃねえだろう”って思ってたからなんですけど、しっかりlynch.が1曲用意してきていたので。僕らも今回は1曲、しっかりと準備して持っていこうと思ってます。
葉月:マジで?
千秋:何やるかは、教えませんけどね(笑)。
葉月:僕は今、2018年当時ほどの貪欲さとか“全部搾り取ってやる”みたいな気持ちはあまりなくて。むしろ、“対バンが久しぶりで緊張するな”くらいの感じなんですよ(笑)。でも、そう言ってもらえると、“じゃあ、頑張らなきゃな”って改めて思いました。
──カバーもありそうですか?
葉月:DEZERTがやってくれるんだったら、僕らもやらなきゃいけないね。今、lynch.はツアーを回っていて、バンドとしていい状態なんですよ、演奏もすごくいい。それをそのまま持っていきたいですね。2018年のときとは全然違うので、頑張って大人のいいところを見せますよ。
千秋:lynch.の地元である名古屋でやるいうのも、僕のなかで心踊るというか。敵地だと思って乗り込むので。だから、ぶっ倒します!
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎西槇太一(DEZERTライブ)/Ryota Tsuchiya (lynch.ライブ)
■<DEZERT Presents【This Is The "FACT"】TOUR 2024>
vs lynch.
open16:15 / start17:00
10月20日(日) 大阪BIGCAT
vs Sadie
open16:15 / start17:00
11月15日(金) Zepp Shinjuku
vs MUCC
open17:00 / start18:00
https://www.dezert.jp/news/detail/28549
■<DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」>
OPEN 17:30 / START 18:30
(問) SOGO TOKYO 03-3405-9999
▼チケット
全席指定 ¥6,600(税込)
※未発表音源「オーディナリー」CD付き
※営利目的の転売禁止
※未就学児童入場不可
特設サイト https://dezert-budokan.com/
関連リンク
◆DEZERT オフィシャルTwitter
◆lynch. オフィシャルサイト
◆lynch 20th ANNIVERSARY PROJECT 特設ページ
◆対談【2】へ戻る
◆対談【1】へ戻る