【スプリンターズS/追い切り診断】打倒サトノレーヴの一角に「S」の最高評価 「筋力パンプアップ」でGI戴冠へ視界良好
第58回スプリンターズS(29日/GI、中山芝1200m)には、3連勝でGI初制覇に挑むサトノレーヴ、連覇を狙うママコチャ、昨年2着のマッドクールなどが出走予定。
本記事では、出走各馬の追い切りを診断し「S」「A」「B」の3段階で評価した有力馬や穴馬をピックアップ。ここでは「ナムラクレア」を取り上げる。
■ナムラクレア
【中間調整】3歳秋にスプリンターズSでスプリントGIに初挑戦し、0秒2差5着。以降スプリント界の中心的存在として走り続け、春秋のスプリントGIは2着、3着、2着。高い地力はもちろん、常にいい健康状態を維持できる強靭さ、周りの左右や馬場状態を問わない対応力も強みだ。今年も昨年同様下半期はキーンランドCから始動。1番人気に推されたものの、サトノレーヴに0秒4差5着と案外な結果に終わってしまった。ただし、1週前追いを行った函館がかなり悪い馬場コンディションで調整負荷が思うように掛けられなかったこと、そして実戦では2番ゲートから窮屈なレース運びを強いられ、直線では他馬と接触するアクシデントもあった。悲観すべき内容ではなく、能力の減衰はないと考えていい。
キーンランドCから中4週でスプリンターズSに進むのも昨年同様。9月頭に栗東へ戻り8日に坂路14-14の初時計を出した。1週前は今回初コンビを組む横山武騎手が栗東へ駆け付け、坂路で併せ馬。準オープン馬を3馬身追走、追い比べから力強く抜け出すと逆に3馬身差の先着フィニッシュとした。時計も4F50秒4(一杯)なら申し分なし。
【最終追い切り】レース当週は指揮官・長谷川師が騎乗し坂路単走。負荷は1週前の時点でしっかり掛かっており、最終追いは終い重点の微調整となった。坂への入り際でミスステップがあったようだが、ご愛敬レベル。即座に立て直され正対すると気迫十分に加速していき、手前を替えてからのラストでさらに回転数を上げて切れた。踏み込みはパワフルでいかにも体調は良さそう。
【見解】悲願のGI獲りへ、いつも通り順調な調整過程で臨んでくる。今春の高松宮記念はCW主体の調整に切り替えて臨んでおり個人的に違和感を覚えたが、結果はアタマ差2着。その時の馬の課題、状況に応じた調整パターン変更で結果を残すあたり、長谷川師の確かな手腕を物語るものと認識させられた。今回はこの馬にとってかなり久々となる坂路オンリー調整。これも「全体的な筋力のパンプアップを意図して」と師はコメントしており、明確な理由付けがあるようだ。“若き名伯楽”の柔軟な発想、調整術を信頼したい。不動の主戦・浜中騎手で臨めないのは残念だが、代打が横山武騎手なら問題なし。悲願達成へ万全の状態。
総合評価「S」
著者プロフィール
西村武輝(にしむらぶこう)
【重賞深掘りプロジェクト】調教ライター。競走馬の追い切り評価を専門として、ネットメディア中心に執筆を続けているフリーライター。UMAJINでは「競馬サロン」開設以前から毎週の重賞出走全頭のレポートを執筆、担当。またプロレス関連業界にも関わっており、週刊プロレスや書籍等への寄稿歴もある。