小川彩佳アナ(写真提供:共同通信)

写真拡大

 次期首相を決める、自民党総裁選の真っただ中。各候補者たちはアピールのため、各テレビ局の報道番組に出演している。そんな中、こんな一幕があった。

【写真】『news23』をやめて少しふっくらした小川彩佳の元同僚

「自身が総裁になった場合、“教団”との関係について何らかの再調査を行うという方がいらしたら、挙手をお願いします」

一人も手を挙げなかった総裁選の候補者

 9月17日、TBS系の報道番組『news23』でそう切り出したのは、メインキャスターの小川彩佳。旧統一教会の問題について、改めて切り込んだ。しかし、出演していた9人全員がダンマリ。挙手した候補者は1人もいなかった。

「ちょうどこの日、朝日新聞が自民党と旧統一教会の“蜜月関係”があったのではないかというスクープを報じたのです」(テレビ局報道記者、以下同)

 旧統一教会の問題は、2022年に安倍晋三元首相が山上徹也被告に暗殺されたことで表面化する。山上被告の犯行の背景には、旧統一教会への恨みがあった。

「山上容疑者の父親は、彼が4歳のときに自殺。兄は小児がんを患い、片方の目を失明。家庭に不幸が重なり、疲弊した母親は、旧統一教会に入信。1億円にのぼる献金を重ね、自宅を売却。生活は困窮し、2002年には自己破産。旧統一教会によって、山上被告の家庭は壊れてしまったのです。山上被告は当初、教団幹部の暗殺を考えたが難しかった。そこで、教団と深い関係があった安倍元首相を狙ったのです」

 この事件を機に、自民党が旧統一教会から選挙支援を受けていた“疑惑”が、盛んに報じられる。

「組織的な癒着があったならば、山上被告のような“教団被害者”を生んだことに、自民党にも多大な責任がある。しかし、自民党は“組織的な関係はない”と否定してきました。そこに朝日新聞は、2013年当時に首相だった安倍氏が、参院選直前に自民党本部にある総裁応接室で教団幹部らと面談していたと写真付きで報じたのです。国民にしてみれば“また自民党は嘘をついたのか”という感じでしょうか。小川さんも、朝日新聞の報道を受けて、追及したのでしょう」

 SNSでは、こうしたキレのある質問をした小川を称賛する声が多数あがった。

小川彩佳キャスターすごいねぇ。自民党に忖度せずに質問してくれた》

《小川アナよくぞ言ってくださった。自民党の本来の姿が見えたのでは》

《小川アナみたいにガツンと言える人がテレビ界にも増えてほしい》

《小川アナ、痺れる質問! 勇気ある発言に鳥肌立った》

 2019年に『news23』のメインキャスターに就任した小川だが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。

視聴率2%台の日もあった

「小川さんがメインキャスターになってから視聴率はボロボロで、同じ時間帯の『news zero』や『報道ステーション』に大差をつけられていたんです。視聴率2%台の日もありましたから。あまりにも数字が悪いので、小川さんの降板が内定したとか、『news23』が終了を検討なんて報道も飛び出しました」(スポーツ紙記者、以下同)

 2021年にはテコ入れのため、人気のあった国山ハセンが同番組に加わったが、

「国山さんは2022年末にTBSを退社しました。理由の1つとして“テレビ番組が見られていない感じがあった”と明かしていました」

 こうしたピンチに小川が力を発揮する。テレビ局関係者が話を引き継ぐ。

「実は、2023年に話題となった旧ジャニーズ事務所の性加害問題で、民放番組で最初に大きく扱ったのが『news23』だったんです。各局がジャニーズタレントを起用していましたから、大きく報じたことで“タレントを引き上げる”なんて言われたら大変になる。だから、報道しても小さな扱いだったところ、『news23』が切り込んだのです。TBSが特集として報じると決めたのは、小川さんのひと言がきっかけだったと聞いています」(テレビ局関係者、以下同)

 いったい何があったのか。

「発端は2023年4月12日にあったカウアン・オカモトさんの会見。これを報じたのは、民放ではテレビ東京と日本テレビだけ。そこで会見のあった日、番組の内容を決める会議で、小川さんが“ジャニーズの性加害問題はやらないんですか?”と発言したそうです。これを受けて、報道部長が悩み抜いた末に報じることを決めた。ただ、TBSは会見にカメラを出していなかったので、映像を確保して別番組で取り扱うことになりました。局の内部では報じることに反発もあったようです」

 テレビ局は、巨大な組織でもある。さまざまな人間の思惑が交差する中、小川もそれに翻弄されたようだ。

「ただ、『news23』で“報道しない”ということではなく“独自ネタが取れたら報じる”という流れにシフトしたそう。こうした経緯があり、2023年5月11日の放送で、複数の被害者による証言などを10分間にわたって報じたのです。かつて“報道のTBS”と言われたことを立ち返るいい機会になったのでは。これは小川さんの功績だと思いますよ」

 性加害問題を報道した当時、小川は番組内でこう語った。

「果たして報道機関は、どれだけこうした被害を報道してきたのか。少なくとも私たちの番組ではお伝えしてこなかった。今後、番組ではこうした訴えをしっかりと受け止め、報道していきたいと考えています」

 この発言から約1年半。今度は旧統一教会の問題に切り込んで“報道の小川”を体現する――。