[9.25 天皇杯準々決勝 横浜FM 5-1 山口 ニッパツ]

 横浜F・マリノスは天皇杯準々決勝でレノファ山口FCに5-1で圧勝し、7年ぶりの準決勝進出を決めた。9月は初戦のルヴァン杯準々決勝第1戦・札幌戦に6-1で圧勝した後、第2戦は1-3敗戦で辛くも突破を果たしたが、そこから泥沼の公式戦3連敗。4試合の失点数も「18」を数えており、そんな負のサイクルをようやく止めることに成功した。

 特に17日のAFCチャンピオンズリーグ・エリート第1戦・光州戦(●3-7)、22日のJ1第31節・広島戦(●2-6)の敗戦は重要な試合だっただけにショックが大きく、この天皇杯は「再出発」の意味合いも込められた一戦だった。試合後、大敗した2試合を負傷欠場していた主将のMF喜田拓也はサポーターの振る舞いについての話題から切り出し、連敗脱出への思いを明かした。

「まずアップに入った時に、サポーターの考えていること、思いが感じ取れたのでそれをチームに共有した。彼らはたぶん、(ウォーミング)アップの半分くらいはチャントを歌わないで無言でいたと思うんですが、それが彼らからのメッセージだと全体に共有した。『見せてくれ』と言ってるんだと思って。もちろん真意はわからないですけど、ただ『見捨てたわけじゃない』という意味も受け取った」

「雨の中これだけ来てくれたこともそうだし、あれだけの声量で後押ししてくれたのは、『選手として感じないといけない』というのは全員に共有する必要があると思った。それを共有して試合に入ったことで、みんなの気持ちとか悔しさみたいなものもピッチで表現できたゲームだったと思う」

 これまでもチームの調子にかかわらず、サポーターからの思いを受け取れるように手を尽くし、時には自らがサポーターの前に立って発信する姿を見せてきた喜田。あえて口にせずともその振る舞いは日々示してきているが、今回はJ1リーグ奪還の希望が大きく遠ざかっている中、彼らの思いを意識的に背負い、そして周囲に伝え、一発勝負のカップ戦に臨もうとしていたようだ。

「この状況だからというよりは、一緒にチームを作っていく仲間として、彼らがいまどんな思いでいるのかは選手もしっかりと理解するべきだといつも思っている。別にそれはこの状況だからではなく、自分たちが誇れるチームを作っていきたいなら、選手だけでも作れないし、スタッフだけでも作れない。そういう意味で彼らのそういう思いは一緒に持って進んでいくべきだと思った。それは選手たちもすごく理解して今日臨んでいた」

 ただ、この1勝で何かを掴み取ったわけではないのも事実。この日、後半14分までベンチから、それ以降はピッチからチームを支えた喜田は何度も「この1試合で終わってはいけない」と繰り返し、すでに前を見据えていた。

「一つで終わっているようじゃいけない。一つ示せたのはポジティブだとは思うけど、続けないと意味がない。そうやってみんなの基準が高まっていくと思う。でも一歩目としては大事な勝利だった」

 残りのJ1リーグ8試合だけでなく、ルヴァン杯、天皇杯、ACLEとタイトルレースはここからが本番。懸命に這い上がって掴んだこの1勝を、より大きな栄光への足がかりにするつもりだ。

(取材・文 竹内達也)