〈解散か、それとも…迫る決断の日〉「コスパを考え失職?」「維新に“報復”の解散?」斎藤兵庫県知事が画策する“続投”へ向けた仰天プラン「収録や編集はNG」不信任決議後のテレビ出演行脚の狙いとは?

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公金不正支出疑惑やパワハラなどの告発者への弾圧を理由に、兵庫県議会から退場を求められた斎藤元彦知事。9月29日までに県議会解散か辞職、または失職の選択を迫られる中、不信任決議が通った翌日からはテレビ局をハシゴし、自身の正当性を訴え始めた。反応を見て出直し知事選で勝てるかどうかを探っているとの見方があるが、見過ごせないのは、ここでも告発者のネガキャンを繰り返したことだ。

<決定的瞬間>不信任決議案が全会一致で可決された瞬間の斎藤知事

 

「生き残りをかけ、知事は辞職か失職を選ぶ」

9月19日の県議会で不信任決議案が全会一致で可決された斎藤知事は、10日以内、正確には29日深夜12時までに議会を解散しなければ失職する。その間に、辞職をするか、議会解散と辞職を同時に行なうこともできる。

不信任決議の可決直後、どの選択をするかについて「しっかりと考えることが大事」と明言しなかった知事はその後4日間登庁せず。連休明けの24日に県庁に姿を見せたときにも記者団に「白紙ではなくて、だいぶ固まってはきています。重い決断ですからすごく思い悩みますね」と、決めていないことを強調しながら、決断と発表は「基本的にはやっぱり平日の間にできればいいなあと思ってます」とも言い、27日金曜までには明らかにすることをにおわせた。

斎藤知事は周辺に相談する参謀もいないようだ(♯19)。このため心中は依然漏れてこない。現状を県政界関係者が解説する。

「不信任決議に賛成したとはいえ、維新は知事の隠れ応援団です。少なくとも知事はそう思っている。

昨年の県議選で4議席が21議席に激増した維新ですが、解散すれば大惨敗は必至。このため解散はやめろと知事に泣きつく構図で、知事はこれを逆手にとり、解散を見送って次の知事選に再出馬すれば裏からの維新の支援が期待できると考えているとみられます。

解散をすれば“知事派”の県議が当選するはずがないので、再構成される次の議会が知事の首を切るのは確実。斎藤氏が知事でい続ける道は100%閉ざされます。知事として最後の生き残りをかけるなら辞職か失職を選ぶでしょう」(県政界関係者)

県政界でもこの見立てが多いようで、「情報力のある県議は解散に備えた選挙の準備をしていない」(地元記者)という指摘も。

「解散しない場合は、29日深夜までに辞職手続きをとるか、30日付となる自動失職を待つことになります。辞職なら出直し選挙後の知事の任期は現在の残り分で来年7月末に切れますが、失職なら選挙で勝てば任期は通常の4年いっぱいあります。“コスパ”を考えれば当然、失職を選ぶでしょう」(県政界関係者)

ただ、不確定要素もある。

「維新から、出直し知事選では斎藤氏以外の候補を擁立するという声が出始めています。斎藤氏がこれを真に受ければ、知事職にとどまる戦略の前提が崩れるので、維新に報復するための解散だとか、その後の知事選不出馬だとか、なんでもありになりますね」と、県政界関係者はカオス状態もあり得ることを指摘する。

テレビ出演行脚は再出馬への布石 

これらの戦略を3連休中にいろいろ練ったとみられる斎藤知事は、この期間にテレビに出まくるという新たな動きを見せた。不信任決議が通った翌日の9月20日から連日である。目を引いたのは生出演にこだわったことだ。

「収録や編集はNGで、話す相手もアナウンサーか記者との1対1と条件を付けられました」

在阪民放の記者はそうぼやくが、出演はいずれも放送局側から依頼している。知事が出した条件を番組側がほとんど丸のみしたというのが実態だ。

「疑惑を告発した元西播磨県民局長・Aさんを特定し、懲戒処分にする報復人事を行なったことは、告発者の特定や不利益を与えることを禁じる公益通報者保護法違反との見方が強まっています。

しかし知事は、処分後に自死したAさんへの調査や懲戒人事に問題はなかったとのこれまでの持論を各局で繰り返し、県政運営の実績アピールを続けました。知事選出馬に備えた事実上の事前運動といっていいでしょう。視聴者の反応を見て勝てるかどうか測ろうということでしょうね。

 こうした言動をメディアは検証して伝えるべきですが、知事に発言の問題点を指摘したのはNHKとテレビ朝日系列のABCだけ。他の局は批判もせず言い分を垂れ流していました。知事出演を『視聴率が取れるコンテンツ』程度にしかみていないのでしょう」(県政界関係者)

特に問題とみられるのが、告発とは無関係なAさんのメールの文言を知事が切り取って出演のたびに言及し、新たな罪状を作りだそうとしたことだ。
例えば24日のABCでの番組では「知事自身の疑惑が書かれた告発文書の発信者探しと処罰をなぜ知事が行なうのか」というアナウンサーの質問にこう答えた。

「誹謗中傷性の高い文書ですので、当事者が調査をしっかりやって事実認定をしていくのは私は問題ないと思います。調査の中でクーデターであったりとか革命とかですね、そういった不穏当な言葉も出てきたので…」(斎藤知事)

必死に告発者をネガキャンも…

ここに挙げられた「クーデター」「革命」というのは、斎藤知事の命(めい)を受けて告発者探しの陣頭指揮を執った片山安孝副知事(7月末に辞職)が「Aさんのパソコンの中のメールにあった」と、9月6日の百条委での証人尋問で口にした言葉だ。

だがメールは告発文書とは別の私的なもので、真偽への疑念とともに片山氏が公の場で口にしたこと自体が問題となっている。どのような文脈で出ていたのかも分からない「クーデター」という言葉があったと口にすることで、Aさんには県政を転覆させる意図があったと印象づけ、調査や処分の正当性を強調するのが斎藤、片山両氏の狙いとみられる。

そもそも、法で禁じられた告発者探しを正当化するためにこれらの言葉をもてあそぶことは順序からいっても説明がつかない。こうした言葉は、違法な調査を始めた後でパソコンから片山副知事らが見つけ出したものだからだ。

ABCのアナウンサーも、知事の暴言を「事実が逆ですよね。調査をして分かったことですよね。クーデターとか革命という文言が出る前に調査を決めている」と遮った。すると知事は「そこは、やっぱりあの文書が、私以外の(人や企業の)名誉を傷つける内容がたくさん含まれてたんで、ここは放置をすることは県としてはできない。だから、誰が作ったか、どういう意図で書かれたかを調べなければならない責任は県にあった。その対応は問題はなかったと思います」と反論。

自身の発言の問題は認めず、新たな理由を挙げるのだ。だが、告発文書の内容は多くが事実と判明しており、知事や知事以外の名誉を傷つけたという主張は説得力を失っている。

記者団からテレビ局をハシゴした理由を聞かれた斎藤知事は、出演のオファーに応じたのだと強調しながら「この間、辞職というものも選択しなかった理由も含めて聞かれたりしましたんで、そこは自分の思いというものを、そしてこれまでやってきた改革を続けたいという思いを伝えさしていただいたということで、機会を頂いたということです」と答えた。

知事を続けたい気持ちに変わりがないことは確かなようだ。兵庫県の混乱は依然収まりそうにない。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班