Jリーグは24日に理事会を行い、選手契約制度について2026シーズンからプロ契約初年度の年俸上限を1200万円まで引き上げることを決定した。基本報酬の下限も26-27シーズンから新設され、ABC契約は26年2月1日から撤廃される。

 現在のJリーグでは基本年俸をC契約は460万円まで、A契約初年度は670万円までとするなどの契約制度が施行されている。Jクラブの経営難が相次いだ1999年から継続されているものだが、新人選手の年俸に上限を設けることで自由競争の欧州との乖離が生じ、高卒・大卒選手がJクラブを経由せずに海外挑戦を選ぶ要因の一つとなっていた。

 この問題を巡っては日本プロサッカー選手会(JPFA)会長のDF吉田麻也が就任当初から「ちょっと時代にそぐわなくなっているんじゃないかと感じている」などと述べ、見直しに意欲を示していた。Jリーグによれば日本サッカー協会(JFA)なども交えて「『海外クラブとの競争』や『クラブライセンス制度の浸透』、『日本のプロスポーツの発展』等の環境変化が起きている」として議論を行ったという。

 議論の結果、Jリーグは「『プロサッカー選手のステータス向上』『Jクラブの競争環境の促進』、『海外クラブとの選手獲得競争や海外クラブ移籍による移籍金獲得額の向上への寄与』等の目的に向けて、制度の改定を実施すべき」と判断。以下のように改定した。

■改定内容(Jリーグでの方針決議後、本改定に関係する各種規則等を見直し、JFAにおける理事会の決議を経たうえで施行)

▼登録区分(2026シーズンから)

改定前: プロA、プロB、プロC、アマチュア

改定後: プロ、アマチュア

▼プロ契約初年度の基本報酬上限(2026シーズンから)

改定前: プロCは年額460万円、プロA初年度は年額670万円

改定後: 年額1,200万円

▼プロ契約締結初年度の変動報酬上限(2026シーズンから)

改定前:プロA/制度の主旨を逸脱しない範囲で設定

プロB/初年度に限らず、出場プレミアムは1試合当たり47,620円

プロC/初年度に限らず、出場プレミアムは1試合当たり47,620円

*その他、勝利給に関する上限ルールあり

改定後: 同クラブ内で基本報酬が同等の選手と同水準を上限に設定

▼支度金(2026シーズンから)

改定前:「独身/既婚」、「扶養の有無」に基づいて区別する上限金額を設定。上限金額:380〜500万円

改定後: 全選手一律で上限金額500万円

▼プロ契約の基本報酬下限(2026-27シーズンから)

改定前: 下限なし

改定後: J1/年額480万円、J2/年額360万円、J3/年額240万円(18歳以下のプロ契約選手は例外対象とすることもできる)

▼プロ選手の最少登録人数(2026-27シーズンから)

改定前: J1/20人以上うちプロA15人、J2/プロA5人、J3/3人

改定後: 各クラブ20人

■野々村チェアマン

「プロABC契約制度が始まってから約25年が経ち、現在は「海外リーグとの競争」や「日本のプロスポーツ界の発展」など、当時とは大きく環境が変わっています。サッカー選手になりたい、Jリーグで活躍したい、と思ってもらえるような制度の改革が必要だと考えていました。今回、吉田麻也会長をはじめとした選手会の皆さんと多くの議論を重ね、プロ選手のステータス向上や競争を促進していくことを目的に、新たな制度を設計いたしました。昨年のシーズン移行検討と同様、60クラブや多くの関係者とも「Jリーグの未来」について時間を掛けて何度も話し合いをしました。国内・海外の選手や、サッカー選手を目指す子どもたちから、Jリーグが選んでもらえる存在となり続けられるよう、引き続き、様々な制度改革・環境整備を進めていきたいと思います」

■吉田麻也JPFA会長

「選手契約制度の改定に向けて、Jリーグ、Jクラブ、JFAの関係者の皆さまには、真摯に弊会とお話し合いいただき、全選手を代表し、深く感謝申し上げます。プロABC契約の撤廃は、歴代選手会長から引き継ぐ悲願でもあり、弊会会員、役員とたくさん意見交換してまいりました。今回の改定は、世界トップレベルのリーグ、クラブ、選手を目指す今後の日本サッカーにとって、とても大きなことと感じています。引き続き日本サッカーの未来のために、しっかり話し合っていきたいと思います」