読者諸兄もご存じのように、今世界中で流通している腕時計には、2本~3本の針がレガシーな雰囲気を醸し出すアナログ腕時計や数ケタの数字だけが並ぶデジタル腕時計、そしてそれらの両方の良さを一覧すべく開発された、アナデジとかデジアナとか呼ばれるアナログとデジタルのハイブリッド腕時計の3種類がある。

 そして、腕時計は基本的には文字盤上に表示されているアナログ針やデジタル数字を人が目で見て、現在時間や経過時間これからの予想を脳みそで考えるシンプルなツールだ。しかし、視覚障害者の人にとってはそれらの表現は全く意味を持たない。

 そんな人達のために開発されたユニバーサルな腕時計が昔からいくつかある。現在時刻を知りたい時に腕時計の風防(ガラスの蓋)を開けて長短2針の位置を指先で触れることで時刻を知ることのできる“触針腕時計”はその代表だ。昨今では2本の針をベアリングのボールに置き換えた新しいデザインの腕時計も登場してきている。

 一方、触針操作ではなく、任意のボタンを押すことで現在時刻を発話してくれる通称“Talking Watch”(トーキングウォッチ)も視覚障害者向けの便利な腕時計ソリューションのひとつだ。もちろん、音声発話してくれる腕時計は健常者にとってもけっこう便利な腕時計でもある。

 夜間のタクシーの中や、停電時などにデジタル腕時計によくあるLEDライトを点灯させて現在時刻を知るようなシーンでも、その機能は極めて有効だ。

 現在時刻を知りたくなったら、あらかじめ決められた任意のボタンを押すだけで、腕時計が現在時刻を即座に読み上げてくれる。バッテリー切れや故障さえなければUIとしてはより洗練されている。

 かなり以前から筆者は、触針腕時計やトーキングウォッチが好きでそれらをいくつかコレクションしている。すでに壊れたり電池がなくなったりしてしまって放置したままのモノもあるが、今もお気に入りの3台のトーキングウォッチはバッテリーを何度か交換して今も愛用している。

 ひとつは海外の露店で超安く買ったCYBEATと名付けられた白いトーキングウォッチ。いろいろなカラーモデルがあってなかなか楽しいモデルだ。そしてあとの2個はセイコーがずっと出し続けている2種類。

 すでに生産終了となってしまった、鉄仮面イメージのシルバーカラーの“音声デジタルウォッチ”と、操作設定のためのUIがより洗練された、その後継機種である丸い外観のモデルだ。ほかとは形状の異なる大きな赤いボタンを押すことで現在時刻を音声で教えてくれる。

 ほかのモデルもあらかじめ決められた位置のボタンを押すことで、現在時刻をすぐに発話してくれる。セイコーの最新モデルなどでは、時刻合わせのガイダンスや操作ガイドも音声発話してくれるの極めて便利だ。

 しかし、どのトーキングウォッチも目で見て時刻を知ることはサブ支援機能であるので、液晶画面が極めて小さいことが健常者にとっては少し不満でもある。

 なので、トーキングウォッチの液晶画面は表示の小さなオマケのような存在だとずっと思っていた。しかし、友人と待ち合わせているときに上野のヨドバシカメラで時間を潰していたら、なんと文字表示部分の液晶サイズが従来より3~4倍大きなトーキングウォッチを見つけてその新鮮さに驚いて衝動買いしてしまった。

 商品名は、機能をそのまま文字にしたようなベタな「Digital Talking Watch」(デジタルトーキングウォッチ)。本体カラーは白とブラウンがあったが、トーキングウォッチには珍しいブラウンモデルを悩むことなく購入した。パッケージ内には、デジタルトーキングウォッチ本体と日本語取説が入っている。

 デジタルトーキングウォッチのストラップは、シリコンラバー系で柔らかくフレキシブルな腕に装着しやすいタイプで、しかも軽量だ。筆者が多くのカラーモデルを愛用している超々軽量のカシオF-91Wの20gに対しても、実測29gとたった9gプラスするだけの極めて軽量なモデルだ。

 トーキングウォッチは例外なく、内蔵スピーカーがアプリケーションを通じて時刻データを音声変換し発話する機能を前提としている。基本的には、防水機能は装備されていないのが一般的だ。

 今回のデジタルトーキングウォッチも、発話音をはっきりと分かりやすく出すために、背面蓋の上下に直径2mmほどのけっこう大きな穴があけられている。

 デジタルトーキングウォッチの基本機能は、現在時刻の読み上げだ。サブ機能としてあらかじめ設定できる1回のアラーム設定とそのサウンドを“電子音”“カッコー”の鳴き声、日本の童謡・唱歌の“さくらさくら”“桃太郎”“荒城の月”の中から好きな音楽を操作ボタンで選ぶことが可能だ。安価に提供するために採用された動揺・唱歌はすでに著作権切れのものだ。

 基本機能である現在時刻の読み上げは、デジタル時刻表示のすぐ右下にある一番大きな正方形のTALKINGボタンを押すことで操作する。そして、右側のMODEボタンで、“時計モード”、“時刻変更モード”、“アラーム時刻設定モード”、“時報・アラームON/OFFモード”の4つをトグルで切り替える。

 横長のモードボタンの下にある左側の丸いHOURボタンで、12時間・24時間の切替を行うことができるが、セイコーのトーキングウォッチのように切替後の読み上げがどっちなのかは発話してくれないので、確認のためにTALKINGボタンを押して確認が必要だ。右側の丸いMINボタンは、押すたびにアラームサウンドを実際に鳴らして切り替えられる。

 今回、筆者が衝動買いしたデジタルトーキングウォッチは、大雑把に言うなら茶色(ブラウン・カラー)だが、砂漠系のイエローからブラウンにまたがるアース系カラーを細かく見てみると、どうもマスタードイエローやグリーニッシュブロンズ辺りの色に近い。

 格好良く言うなら、砂漠を爆走する戦車や装甲車のカモフラージュカラーに近い。炎天下で装着してみたら意外と似合った。

商品 購入 価格 デジタルトーキングウォッチ ヨドバシカメラ マルチメディア上野 1980円