立憲民主党新代表に野田元首相を選出=穏健保守を包含、現実路線で「信頼回復」目指す、中国含めたトップ外交展開へ

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立憲民主党は23日、臨時党大会を開き、代表選の投開票を行った。決選投票の結果、新代表に野田佳彦元首相を選出した。

同党代表選には野田佳彦、枝野幸男、泉健太、吉田晴美の4氏が立候補。党所属の国会議員と地方議員、党員らによる1回目の投票で決着がつかず、上位2人による決選投票で決定した。

4候補は次期衆院選に向け政権交代の必要性を訴えた。物価高対策や外交・安全保障、エネルギー政策、野党間の連携などが争点となった。

野田氏「われわれは夜の闇と夜の冷たさを知っている」

野田佳彦元首相は演説で、能登半島地震の被災地での豪雨被害を受けて、「10月の臨時国会で早急に補正予算を編成し、成立させるのが政府の役割」と主張。自民党総裁選について「早い段階の(衆院)解散があると思うが、受けて立つ」と強調した。「その前に少なくとも、被災地の復旧復興のための予算を作るぐらいの最低限の責任は果たしてから信を問うべきだ」と語った。

その上で、アサガオの開花に夜の冷え込みが必要であると触れ、「落選経験のあるわれわれは夜の闇と夜の冷たさを知っている。そこで積み上げてきた政策体系こそ今の時代の要請ではないか。勝ちっぱなしの自民党にはわからない」と訴えた。

決選投票直前の演説で「(子どもが親を選べず貧困が連鎖する)『親ガチャ』という言葉は死語にしよう。『国ガチャ』で当たったと呼ばれる国をつくろう」と呼びかけ、「教育の無償化をはじめ多くの政策は(自民党が)追随した。この国に生まれてよかったという国にしたい」とアピールした。

枝野氏「新たな国民政党に成長し国民の期待を受け止める」

枝野幸男前代表は演説で「政治不信は私たちにも大きな責任がある。新たな国民政党へ成長し、国民の期待を受け止める。私たちこそが正念場だ」と訴えた。

さらに「人間中心の経済、ヒューマンエコノミクス。その中身は私にもある日々の幸せや不安、暮らしに関する切実な声だ。永田町の内側を向いた合従連衡ではない。国民とつながることで政治に力が生まれる」と訴えた。

泉氏「政権を担え得る政策を立案、統制徐々に回復」

泉健太代表は演説で2021年衆院選の敗北後の党の立て直しに触れ、「地域を応援し野党第一党として政権を担え得る政策を立案し、他の野党との対話を重ねた」と振り返った。

その上で、「地域の皆さんがもう一度声を上げてくださり、党勢は徐々に回復してきた」と実績をアピール。「国民が求めるのは暮らしに寄り添った未来に向けたビジョンと信頼に値する選択肢だ」と語った。

吉田氏「教育格差の縮小めざす」

吉田晴美氏は演説で「国公立大学の無償化によって教育格差をなくし、食料品の消費税撤廃を通じ経済格差の縮小を目指す」と訴えた。

立憲民主党の今回の代表選で外交・安全保障政策の継続を重視する姿勢が強まった。同党は集団的自衛権の限定行使を認めた安全保障関連法に「違憲だ」との立場から反対してきた。自民党政権の方針とは隔たりがあるが、政権交代には政策の継続性を重視すべきだとの声が党内で広がった。

継続性を重視する姿勢の背景には、前身の民主党が政権を取った際の外交・安保分野の政策転換が日米関係を混乱させたとの反省がある。特に野田氏は米国との同盟関係を重視する立場が鮮明。中道保守や穏健保守も包含した戦略が支持されたと言える。

野田新代表「政権交代へ、闘いはこれから始まる」

立憲民主党は集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法について「違憲部分は廃止する」との方針だが、政権を取った場合に直ちに法改正することは難しいとの認識だ。日米関係を基軸とした上で、アジアの平和構築へ中国を含めたトップ外交を展開する方針だ。

野田氏は代表に選出された後、「闘いは今から始まる。本気で政権を取りに行く。ノーサイドで挙党態勢を構築する」と強調した。