緊急J1デビューで町田の猛攻阻んだ札幌27歳GK児玉潤「諦めずにやり続けることが大事」3年前は“6部所属”の苦労人
[9.21 J1第31節 町田 0-0 札幌 Gスタ]
首位の相手に押されながらも0-0で耐えていた後半42分、出番は突然に訪れた。「率直に来たか、と」。社会人キャリアの大半をアマチュア選手として過ごし、3年前は広島県1部(実質6部)でプレーしていた“苦労人”の北海道コンサドーレ札幌GK児玉潤がこの日、堂々とJ1デビューのピッチに立ち、安定したパフォーマンスで勝ち点1をもぎ取った。
東京Vユース、桐蔭横浜大出身で27歳の児玉は今年3月、すでにシーズンが始まっていた中でJ3のY.S.C.C.横浜から札幌に加入。GK高木駿の大ケガを受けての緊急加入だった。J3リーグ屈指のビルドアップ能力を買われ、札幌のスタイルに合致するという評価での大抜擢。ここまでは天皇杯とルヴァン杯のみの出場にとどまり、J1リーグ戦の出場機会はなかったが、日々の努力を怠ることはなかった。
この日は終盤にGK菅野孝憲がポストに当たって負傷し、緊急でのチャンスが到来した形。それでも日々の準備を続けていたからこそ動揺はなかった。「残り時間少ない中、スクランブルでの出場でやることは明確だった。シンプルにノーリスクでプレーし、いい内容でゲームが続いていたので自分が出てゼロで終われるようにと意識した」。積極的に前へ出るスタイルでもおなじみだが、まずは堅実なプレーで試合に入った。
首位のFC町田ゼルビアは試合終盤、勝ち越しを狙ってクロス攻勢やロングスローを使ったパワープレーを展開してきたが、児玉は「DFとコミュニケーションを取って、自分がプレーする時と味方に任せる時をはっきりするように意識していた」という的確な判断を徹底。また「パンチングで逃げてもスローインになってロングスローで二次攻撃となるので、キャッチできるボールはマイボールにしたいとずっと思っていた」というキャッチングも光った。
その結果、相手のヘディングシュートがポストに弾かれるという幸運にも助けられ、クリーンシートのまま試合終了。9分間の表示ながら13分間近く取られたアディショナルタイムにも「実はアディショナルタイムが何分かわからないままプレーしていた。時間を気にせず目の前のことに集中していた」と揺らぐことなく、勝ち点1をもたらした。
児玉にとっては社会人キャリア5年目でのJ1デビュー。JFLの横河武蔵野シティFC時代には給食センター、広島県1部〜中国リーグの福山シティFC時代はレストランや不動産会社での勤務を経験し、J3のYS横浜でもアマチュア契約のため別の仕事をしながらサッカーに取り組んできた過去を持つ27歳が悲願のステージにようやく立った。
同様の境遇で奮闘する選手たちにとっても大きな励みになる第一歩。児玉は「自分は底辺のカテゴリから這い上がってきて、今年J1に移籍して、なかなか出場機会を得られない中でも目標を見失わず、自分だけは自分自身の可能性を信じようとずっと取り組んできた。これまで諦めずに続けてきてよかった」と心境を口にしつつ、「諦めずにやり続けることが大事」とこのステージに導いた努力の一端を明かした。
「シンプルだけど続けることが一番難しい。少ないチャンスの中でそのチャンスを掴み取らないといけないし、チャンスが来ないことも全然ありうるポジション。でも出られない時も出ている時もやることを変えず、目標をぶらさず、毎日の取り組みを続けることが全てだと思う。今日のJ1デビューまでの過程は本当に長い道のりだったけど、今まで積み上げてきたものが今日こうやって出場という形でつながったと思う」
もっともこの第一歩は、次につなげるからこその第一歩だ。「これまで支えてくれた人たちのためにももっともっと頑張らなきゃいけない」と決意を口にした児玉は、現在降格圏に沈むチームの逆転残留にフォーカス。「まだチームは残留を諦めていないし、可能性があるわけなので、自分が責任を持って目標に貢献できるように変わらずに頑張っていきたい」と継続出場に意欲を示し、敵地町田を後にした。
(取材・文 竹内達也)
首位の相手に押されながらも0-0で耐えていた後半42分、出番は突然に訪れた。「率直に来たか、と」。社会人キャリアの大半をアマチュア選手として過ごし、3年前は広島県1部(実質6部)でプレーしていた“苦労人”の北海道コンサドーレ札幌GK児玉潤がこの日、堂々とJ1デビューのピッチに立ち、安定したパフォーマンスで勝ち点1をもぎ取った。
東京Vユース、桐蔭横浜大出身で27歳の児玉は今年3月、すでにシーズンが始まっていた中でJ3のY.S.C.C.横浜から札幌に加入。GK高木駿の大ケガを受けての緊急加入だった。J3リーグ屈指のビルドアップ能力を買われ、札幌のスタイルに合致するという評価での大抜擢。ここまでは天皇杯とルヴァン杯のみの出場にとどまり、J1リーグ戦の出場機会はなかったが、日々の努力を怠ることはなかった。
首位のFC町田ゼルビアは試合終盤、勝ち越しを狙ってクロス攻勢やロングスローを使ったパワープレーを展開してきたが、児玉は「DFとコミュニケーションを取って、自分がプレーする時と味方に任せる時をはっきりするように意識していた」という的確な判断を徹底。また「パンチングで逃げてもスローインになってロングスローで二次攻撃となるので、キャッチできるボールはマイボールにしたいとずっと思っていた」というキャッチングも光った。
その結果、相手のヘディングシュートがポストに弾かれるという幸運にも助けられ、クリーンシートのまま試合終了。9分間の表示ながら13分間近く取られたアディショナルタイムにも「実はアディショナルタイムが何分かわからないままプレーしていた。時間を気にせず目の前のことに集中していた」と揺らぐことなく、勝ち点1をもたらした。
児玉にとっては社会人キャリア5年目でのJ1デビュー。JFLの横河武蔵野シティFC時代には給食センター、広島県1部〜中国リーグの福山シティFC時代はレストランや不動産会社での勤務を経験し、J3のYS横浜でもアマチュア契約のため別の仕事をしながらサッカーに取り組んできた過去を持つ27歳が悲願のステージにようやく立った。
同様の境遇で奮闘する選手たちにとっても大きな励みになる第一歩。児玉は「自分は底辺のカテゴリから這い上がってきて、今年J1に移籍して、なかなか出場機会を得られない中でも目標を見失わず、自分だけは自分自身の可能性を信じようとずっと取り組んできた。これまで諦めずに続けてきてよかった」と心境を口にしつつ、「諦めずにやり続けることが大事」とこのステージに導いた努力の一端を明かした。
「シンプルだけど続けることが一番難しい。少ないチャンスの中でそのチャンスを掴み取らないといけないし、チャンスが来ないことも全然ありうるポジション。でも出られない時も出ている時もやることを変えず、目標をぶらさず、毎日の取り組みを続けることが全てだと思う。今日のJ1デビューまでの過程は本当に長い道のりだったけど、今まで積み上げてきたものが今日こうやって出場という形でつながったと思う」
もっともこの第一歩は、次につなげるからこその第一歩だ。「これまで支えてくれた人たちのためにももっともっと頑張らなきゃいけない」と決意を口にした児玉は、現在降格圏に沈むチームの逆転残留にフォーカス。「まだチームは残留を諦めていないし、可能性があるわけなので、自分が責任を持って目標に貢献できるように変わらずに頑張っていきたい」と継続出場に意欲を示し、敵地町田を後にした。
(取材・文 竹内達也)