今季もスタミナ不足は課題に

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ネット裏に陣取っていた大物GM

 9月15日の埼玉西武戦で、千葉ロッテ・佐々木朗希(22)が「危険球退場」により、7回途中4失点で5敗目を喫した。この日は自己最多に並ぶ9勝目を懸けてマウンドに上がったが、球速は158キロ止まり。直球主体のピッチングが裏目に出たのか、制球に苦しみ、いつものように「走者を出しても三振で切り抜ける」ことができなかった。

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「試合後、今シーズン限りで現役引退を表明した西武・金子侑司(34)のセレモニーが行われ、西武ファンから惜しみない拍手と声援が送られました。佐々木の退場理由となった頭部死球を喰らった野村大樹(23)は、自分の足でベンチに下がりましたが、もし大事に至っていたら、セレモニーの雰囲気は変わっていたかもしれませんね」(スポーツ紙記者)

 ネット裏では、いつものように複数球団のメジャースカウトが陣取っていた。そのスカウトたちはもちろんだが、NPBの関係者も驚いていたのは、レンジャーズのクリス・ヤングGM(45)が観戦に訪れていたことだった。メジャーリーグのペナントレースはまだ終わっていない。シーズン終盤での編成幹部、それもトップの来日は異例であるのは間違いない。しかも、日本時間の前日に自身の「契約更新と来季からの編成本部長への昇格」が発表されたばかりである。

今季もスタミナ不足は課題に

「近年のレンジャーズの大型補強はヤングGMが陣頭指揮を執って進めてきました。その本人が直接視察をしたんです。もし、佐々木が今オフにポスティングシステムに掛けられるのであれば、既に名が挙がっているドジャースだけでなく、レンジャーズも要注意です」(米国人ライター)

「独断で選手獲得を決められる」とまで言われているヤングGMの前で、残念ながら佐々木は“醜態”を晒してしまった。しかも同日の敗戦により、チームが優勝する可能性は完全消滅した。

「千葉ロッテの残り試合は13(同時点)。吉井理人監督(59)が温情であと2試合を投げさせ、2桁勝利へ到達させてくれるかもしれませんが、シーズン後には佐々木の背信登板 で優勝を逃がしたと言われそう」(前出・スポーツ紙記者)

 ヤングGMを始めとするメジャー関係者たちは無言で球場を後にしたという。

成長が見られない

 ヤングGMは元MLB投手で、与四球の多いタイプだった。ストライクを取りに行った甘いボールを打たれて大炎上した経験もあれば、粘り強く投げて最少失点に止めた試合も少なくない。そんな制球難を克服してきたGMの眼に、この日の佐々木がどう映ったのかが気になるが、メジャースカウトたちは別の観点からも佐々木を見ていた。

「スカウトの間では、グラウンド外のことも話題になっています。昨年オフ、早期のポスティングシステムによるMLB挑戦の意向を明らかにして以来、日本国内で『球団に恩返しをしてから行くべき』といった声が多く出始めました。当初、スカウトたちは期待の裏返しと見ていましたが、スタンドで佐々木の降板がアナウンスされる度に聞かれるファンのため息が気になると話していました」(前出・米国人ライター)

 スカウトたちは、スタンドにいるファンの厳しい声も感じ取っていたという。昨季も佐々木が途中交代すると、ため息は聞かれた。しかし、それは「もっと見たかった」という好意的なものだったが、今季は批判的な雰囲気に変わった。

「成長が見られないからですよね。毎年、シーズン途中に蓄積疲労で先発ローテーションを外され、100球前後で交代となります。今年も去年と変わらないから、日本のファンもヤキモキしているんだと思います」(前出・同)

 体力面での不安は一向に解消されていない。そのため、スカウトたちは「佐々木に伸びしろが残っているのか」という観点でも見るようになったという。

「体力面での不安が解消されない原因を探るためですが、佐々木の練習環境に関する情報も集めるようになりました」(ア・リーグ中部地区スカウト)

 基礎や反復どれくらい丁寧にやっているのか、練習の様子を探る一環だろう。吉井監督を始めとするロッテ首脳陣の佐々木評にも眼が向けられるようになった。「危険球退場」となった15日の試合後の吉井監督だが、ピッチング内容そのものについては何も言っていない。しかし、前回登板の東北楽天戦後(8日)では、

「朗希は5回(降板)じゃダメですよ。今日は真っすぐがシュート(回転を)してコントロールできなかったみたいで、凄く苦労していました」

 と、辛らつなコメントを発していた。吉井監督の言う通りなのだが、15日の不甲斐ないピッチングの原因は、この楽天戦にあった。

「8日の最速は159キロ、160キロには届きませんでした。スライダーが全投球の半分くらいを占めていたと思います。変化球でかわす逃げのピッチングになってしまいました。初回からヒットと2四球で満塁と攻め立てられ、先制点を許し、5回を投げ終わった時点で98球に到達していました。3失点で収まり、本当に良かった」(前出・スポーツ紙記者)

 味方打線の援護に恵まれ、8勝目が転がり込んだものの、ファンは球速160キロ強の剛速球で相手バッターをねじ伏せるイメージも抱いている。佐々木は変化球で逃げることしかできなかった反省から、15日は力みすぎてしまった。

 8日の試合後、吉井監督は「真っ直ぐが操れていなかったと思います。シュートしてコントロールできなかったので、すごく苦労していました」と総括していた。ストレートがピッチングの生命線であることは佐々木も分かっているはず。次回登板までにそれが修正できなかったということは、まだ独り立ちができていないのだろう。

「今季から調整を佐々木自身に任せています。ストレートが走っていないときはどういう練習をすればいいのか、まだ本人も分かっていないのではないでしょうか」(前出・同)

孤高の雰囲気も……

 また、先発投手は一度登板すると、次回登板に向けて調整するため、単独行動になりがちだ。不甲斐ないピッチングの連続、厳しめのコメント、メジャースカウトの影……24年オフのポスティングシステムによる米球界挑戦の希望が明らかになってからというもの、孤高の雰囲気も漂ってきた。

 チーム関係者に佐々木の話を振ると、決まって返ってくる言葉が「知らない」である。「腫れ物に触るような」と言ったら大げさだが、昨季までとは打って変わって何も教えてくれなくなった。

「制球難に苦しんだ8日の楽天戦ですが、センターを守っていた藤原恭大(24)が攻守交替でベンチに帰ってきたとき、佐々木に『真っ直ぐが狙われていると思う。変化球を早いカウントから使ったほうが』とアドバイスしていました」(チーム関係者)

 チームが逆転に成功したのはその後だった。こうしたやり取りを聞く限り、チームで孤立していることはないようだ。

 ただ、危険球退場となった西武戦もそうだったが、得点圏に走者を置くと、佐々木の表情は悲壮感でいっぱいになる。10代の頃は初々しく見えたが、こういうときこそ堂々としてもらいたいものだ。体力強化、調整法の見直しの前に自信を取り戻すべきだろう。

デイリー新潮編集部