規定打席到達=盗塁王…金子侑司のすごさ 西武一筋12年の韋駄天は“絵になる選手”
2016年と2019年の2度、盗塁王のタイトルを獲得
西武は1日、金子侑司外野手が今季限りで現役を引退すると発表した。西武一筋で12年間で、2018年と2019年のリーグ連覇にも主力として貢献。2016年と2019年の2度、盗塁王のタイトルを獲得するなど、随所で華のあるプレーを披露してファンを沸かせてきた。今回は、そんな金子のこれまでの球歴と駆け抜けてきた韋駄天の功績を、あらためて振り返っていきたい。
金子は立命館宇治高から立命館大を経て、2012年のドラフト3位で西武に入団。プロ1年目の2013年から94試合に出場したが、内野の守備でやや安定感を欠いたこともあり、入団から3年間はレギュラーの座を確保するには至らなかった。しかし、外野に主戦場を移した2016年に129試合と出場機会を大きく伸ばし、自身初の規定打席到達。打率.265、出塁率.331に加えて、自己最多の53盗塁を記録。当時オリックスに在籍していた糸井嘉男氏と並んで、自身初の最多盗塁を獲得した。
2017年は故障の影響で90試合の出場にとどまったが、2018年には主力として111試合に出場。打率.223と打撃不振に苦しんだものの、32盗塁を決めるなど10年ぶりのリーグ優勝にも貢献した。2019年は自己最多の133試合に出場し、打率.251、出塁率.324と前年に比べて数字を改善させた。打撃の復調に伴って持ち味の脚力も大いに発揮され、41盗塁で自身2度目の盗塁王に輝いた。外野守備でもたびたびファインプレーを見せて投手陣を救い、チームのリーグ連覇にも大きく寄与した。
翌年以降もさらなる活躍が期待されたが、2020年は86試合で打率.249、出塁率.312、14盗塁とやや数字を落とした。2021年は2年ぶりに出場試合数を3桁に乗せたが、打率.192と深刻な打撃不振に陥り、2022年以降は故障もあって出場機会が減少。2024年も打率.220、出塁率.289と苦戦が続き、今シーズン限りでの現役引退を決断した。
スピード感溢れる攻守は「帽子落とし」として代名詞の一つだった
ここからは、金子の数々の好プレーを振り返っていきたい。まずは2019年7月19日、チームを勝利に導く、起死回生の同点3ラン。3点を追う9回1死一、二塁から、オリックスの守護神・ディクソン氏の投球を力強く振り抜くと、打球は本拠地のファンが待つライトスタンドに飛び込む同点3ランに。起死回生の一発は、最終的に僅差での決着となった優勝争いにおいても大きな意義を持つことにもなった。11回の守備でもクッションボールに対して完璧な処理を行い、得点を許さない好守を披露。直後に中村剛也内野手の通算400号となるサヨナラ本塁打で試合が決着したことも含め、金子の12年間のキャリアにおいても、とりわけ勝利に直結する大活躍を見せた試合だったと形容できるはずだ。
続いては、捕手に盗塁阻止の可能性を与えない抜群の脚力。金子は2019年に41盗塁を記録し、自身2度目の盗塁王を獲得した。規定打席に到達したシーズンは2016年と2019年の2度のみであり、規定打席に到達したシーズンは必ず盗塁王に輝いていたという事実も凄みを物語っている。また、2019年の盗塁成功率は.804とセイバーメトリクスの観点から見ても非常に優秀な水準に達している。金子のプレッシャーによってボールが捕手の手につかない場面も存在。相手バッテリーに盗塁阻止のチャンスすら与えないほどのスピードと盗塁技術を持つ韋駄天ぶりはが確かに示された。
帽子を落としながらのスピード感溢れる好守も、金子の代名詞だった。球際に強い華麗なスライディングキャッチや、フェンスを恐れずに激突しながら打球をもぎ取る鮮やかなプレー、左中間の真ん中を破ろうかという打球に追いつく驚異的な脚力といった、見る者の心を奪うプレーは枚挙に暇がないほどだ。また守備時に被っていた帽子が地面に落ちる「帽子落とし」が代名詞の一つにもなっていた。一見するとプレーとは関係ない所作の部分においても、金子はまさに「絵になる選手」だったといえよう。
2度のシーズン40盗塁超えを記録した高い盗塁技術、抜群の脚力と卓越した球際の強さを活かした驚異的な外野守備、左右両打席から生み出される優れた打撃センス。2010年代後半の西武、とりわけリーグ連覇を達成した2018年と2019年のチームにおいて、金子が果たした役割は非常に大きなものがあった。今季もモイネロから敵地で本塁打を記録し、ソフトバンクを相手に勝ち越し3ランを放つなど、随所で存在感を発揮してきた。12年間の現役生活において残してきたスピード感あふれる好プレーの数々は、今後もファンの心に残り続けることだろう。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)