(筆者撮影)

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アップルが2024年9月9日(現地時間)に発表したiPhone 16シリーズ。アメリカ・カリフォルニア州クパティーノ市のアップル本社にあるSteve Jobs Theaterで発表の映像を視聴し、直後にハンズオンエリアで実機を試すことができた。実際に触れてみて驚かされたのは、iPhone 16の満足度の高さと、まだカメラ機能を実直に進化させているアップルの姿勢だった(筆者撮影)

今年ほど、世界中のジャーナリストが集まったハンズオン会場で「どのiPhoneがいい?」という質問への答えを窮することはなかった。

カメラ機能にこだわれば、5倍望遠ズームが利用できるiPhone 16 Proが魅力的に映るはずだ。選択を悩ませる理由は、iPhone 16のカラー展開だ。

選択を迷わせるカラフルなラインナップ

iPhone 16は、ベーシックなホワイトとブラックに加えて、非常に鮮やかで色が濃い、カラフルなラインナップとなった。

【ピンク】iPhone 15のピンクに比べて、ぐっと色みが濃く、赤みが強い、プラムっぽいカラー。派手でわかりやすい、目立つピンク。

【ティール】青緑色という意味で、iPhoneとしては珍しい雰囲気。濃い青の中に緑の雰囲気を感じられる。

【ウルトラマリン】光の当たり方によっては、しっかりと深い青に見える、深海を思わせるようなブルー。


iPhone 16「ティール」。青緑のカラーがこれまでにない深みを表現している(筆者撮影)

アップルのウェブサイトでは、カラフルというよりは、もう少し淡いトーンに見える。しかしこの見た目は、どちらかというと明るい環境下でしっかり光が当たっている場合の表情で、ハンズオンエリアのように、直接ライティングされていない環境では、もっと色が濃く出る印象だった。

今回、より濃く染色されたインフューズドガラスを採用し、カメラ部分の出っ張りは、ガラスの厚みが高くなって、色がより濃く見える。ガラスそのものの色が濃くなっていることもあり、カメラ部分の出っ張りの境目がぼんやりと浮かぶようなグラデーションとなり、見ていて飽きない。

この印象的な色と対照的に、落ち着いたトーンで展開されるのがiPhone 16 Proシリーズ。新しいデザートチタニウムが投入され、ゴールドを選びたい人のニーズを満たすが、高級感はあるが主張は少ない。

【写真】新しく追加されたカメラボタン「カメラコントロール」。片手で縦に持ったとき、横で持ったときのボタンと指の位置

それだけに、iPhone 16シリーズの「色」は、性能だけではない、生活必需品として毎日持ち歩くiPhone選びを、より複雑化させているのだ。

カメラコントロールの「異次元体験」

もう一つ、iPhone 16の製品力を極めて高めているのが、新たに追加された「カメラコントロール」というユーザーインターフェースだ。これはiPhone 16 Proにも共通して搭載される。

カメラコントロールは、「ボタン」ではない。


iPhone 16 ピンクの右側面にある「カメラコントロール」。感圧センサーを内蔵した押し込めない疑似ボタンだ(筆者撮影)

静電容量のタッチセンサーと、感圧センサー、そして感触フィードバックを備えており、押し込むと指先にボタンを押した感触が伝わるが、サファイアクリスタルのカバーは物理的に上下に動かない。

カメラコントロールは、半押しと全押し、という2段階の押下と、スワイプ操作を行うことができる。この操作方法を使って、半押しで機能選択、スワイプで調整、そしていつでも全押しすればシャッターが切れる、という操作性を提供する。

この操作方法は、多くの人がするように、片手でカメラを構えたときに、明るさやズーム、カメラ切り替え、背景のボケ具合の調整といった調整を、指1本でこなすことができるようになる。


「カメラコントロール」の操作。縦・横、右手・左手ともに、片手で持ったときに自然に指操作が可能な位置に配置されている(筆者撮影)

しかも、この「指1本」というのが、右手で縦に構える場合は親指の位置、右手の小指と人差し指で端末を挟んでの片手持ちをする場合の人差し指の位置に当たっており、特別な持ち方に変えなくても、自然に操作できるのだ。

特に半押しの感触に慣れが必要だが、1分もかからずすぐにコツが理解できるだろう。そのうえで、
・ カメラコントロール半押しでカメラ起動
・ 全押しでシャッター(カメラ起動状態ならいつでもシャッターが切れる)
・ (カメラを起動している状態で)半押しで設定状態
・ カメラコントロールのスワイプで、設定項目を調整
・ 素早く2度の半押しで、設定項目の選択

といった操作を切り替えることができる。

そのため、片手で構えていても、露出調整、背景のボケ調整、倍率切り替え、カメラ切り替え、フォトグラフスタイル(写真の色みなどの仕上がり)といった設定を指1本で操作できる。


片手で横長の写真を撮るときでも、ちょうどいい位置でコントロールが可能(筆者撮影)

また全押しすればいつでも写真が撮れるため、設定を変えながら何パターンも撮影する、という複雑な操作も、指1本で1秒に1枚のペースで行える。

iPhoneのカメラに慣れてくれば、明るさやフォーカスなどを調整しながらの撮影を取り入れる人も多いだろう。しかしこれまでタッチパネルでの操作が必要だったため、どうしても片手で構え、空いた手で操作するという、両手が必要だった。

これが片手でこなせるようになり、iPhoneのカメラの操作性は劇的に向上する。

カメラ体験の充実は、相当強い

カメラ機能で選ぶなら、iPhone 16 Proを検討している方も多いだろう。
これまで、大画面モデルにのみ、光学5倍カメラが用意されてきたが、iPhone 16 Proシリーズでは、6.3インチモデル・6.9インチモデルの双方に、5倍カメラが搭載された。

加えて、超広角カメラが1200万画素から4800万画素に向上したため、1倍のマクロ撮影や、0.5〜1倍の倍率の画質向上が期待できる。

そしてカメラコントロールは、iPhone 16 Proシリーズにも追加された。iPhone 16よりも詳細なカメラ機能の設定が可能で、今後のソフトウェアアップデートで、シャッターボタンのような動作、すなわち、半押しでフォーカスと明るさを固定し、構図を調整して、全押しで撮影、という従来のカメラの操作性も取り入れる予定だという。

ただ、iPhone 16 Proが5倍ズームになったことで、かえってiPhone 16のキャラクターが際立ったかもしれない。

扱いやすい2倍ズームは広角カメラの中央部分を切り出すクロップで高画質を維持している。また3倍ズームは、iPhone 16でもProでも、いずれも広角カメラのデジタルズームとなる点は共通だ。

そしてカメラコントロールで明確に撮影体験の快適性が向上し、iPhoneのカメラの楽しさ、充実度が高まる。


iPhone 16とiPhone 16 Plusはブラック、ホワイト、ピンク、ティール、ウルトラマリンの5色展開(筆者撮影)

となるとiPhone 16のカラフルなピンク・ティール・ウルトラマリンの個性的なカラーを選択なのか、落ち着いたナチュラルチタン・デザートチタンの色合いを選択するのか、というカラーでの選択になってくる。

従来通り、Proモデルで最高のカメラ性能を得る、という選択は存在する。しかしiPhone 16のカメラ体験の高さは高く、性能差を忘れるほどだった。そのため好みのカラーで選択したくなるiPhone 16。2024年のiPhone選びの難しさが増しているのだ。


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(松村 太郎 : ジャーナリスト)