斎藤元彦兵庫県知事(写真・馬詰雅浩)

「県政が停滞して重大な支障が生じている状況ではないと思っています」「自分がどういうふうに道を進んでいくかは自分が決めることが大事」

 県職員に対するパワハラの疑いで告発されて以降、連日のように追及されている斎藤元彦兵庫県知事は9日、日本維新の会と兵庫県議会第2会派の「維新の会」などが連名で辞職と出直し選挙を求めたことを受け、記者団にこのように述べた。斎藤知事の選択肢に「辞職」の文字がないようである。

「同日、知事選で斎藤知事を推薦した日本維新の会共同代表の吉村洋文大阪府知事が『(7日の)土曜日に、間違っているところは素直に認め、知事を辞職して県民の皆さんに問うべきではないかという話をしました』と、斎藤知事に電話で辞職を促したことを明らかにしました。しかし知事から明確な答えはなかったと聞いています。まもなく開催される県議会では最大会派の自民党が不信任案を提出すると見られます。他党も追随するでしょう。可決されて知事に辞職の意思がなければ議会の解散です。そうなると県政はますます混乱します」(社会部記者)

 この状況に置かれてもなお、斎藤知事は表情を変えることなく記者団の取材に応じているが、百条委員会では目が泳ぎ、ときに薄ら笑いを浮かべることもあった。これは余裕なのか、それとも追い込まれているのか。東京未来大学副学長で心理学者の出口保行氏に聞いた。

「百条委員会での斎藤知事の様子を見て、知事の不安は非常に強い状態にみえました。自分がどのように見られているかにかなり敏感になっていると考えられます。言葉上の反省は述べるものの、それが心からの内省につながっているかは別物で、今後、自分とどのように向き合うか、注目しています」

 さらに、頑なな態度を貫く「支え」について聞いた。

「斎藤知事にとって、心のよりどころは自分しかないと思います。今の立場をほかに支持する人は少ないでしょう。少しでも他者の指摘を飲んでしまったり、自らの立ち位置を譲ってしまったら自らの心の安寧を維持できなくなると思っているのだと思います。いい意味でも悪い意味でもそういう『頑なさ』がこの人の特徴でしょう。

 この人の場合、回復力や打たれ強さがあります。政治家としては困難に出会っても信念を曲げずにやり遂げるということにもつながり長所ですが、いったんこうした問題が発生すると、なかなか軌道修正が図れなくなります」

 今後、辞職の道を選ぶとすると、どういった心理状況になったときなのだろう。

「発言を聞く限り、まだまだ主観的にしか自分を見ることができていません。自分を中心として考えて、あれこれの言行について『必然性があった』『仕方なかった』と“合理化”(自らの行動を正当化すること)を図っていると考えられます」

 斎藤知事が客観的に自分を見ることができる日は、来るだろうか。