「見てて気分悪くなる」「はい、ここは泣くところね」に不快感…『24時間テレビ』でやす子、YOSHIKIが好感度爆上がりもの演出に批判殺到!それでも二桁視聴率の謎

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 8月31日~9月1日の日本テレビ系特番「24時間テレビ」が放送終了後も話題を呼んでいる。チャリティーマラソンで4億円を超える募金を集めた一方で、実施のあり方やハプニングなどに批判が集まっているのだ。「はい、ここは泣くところね」と要求するような演出もネガティブに働き、経済アナリストの佐藤健太氏は「せっかくの感動シーンも台無し。24時間テレビが嫌われる理由は視聴率で計れない虚しさにある」と指摘する。ネットでは「見てて気分が悪くなる」という辛辣の意見もみられたがーー。 

「無茶させるな」やす子のマラソンシーンに批判殺到

 毎年恒例の「4時間テレビ」の今回の平均世帯視聴率は1.5%で、昨年の11.3%を上回った。スマホで動画配信を視聴する人が増加している今、二桁をコンスタントにたたき出すのはさすがと言える。ただ、放送日は台風接近のため自宅にいる人が多かった上、夏休み終了前最後の休日だったことも少なからず影響しているだろう。

 率直に言えば、今回の放送にはガッカリ感を抱いた人も少なくないのではないか。最大の見せ場であるチャリティーマラソンは勇気と感動を与えたのだが、その実施方法や制作サイドの不必要な演出、ハプニングなどが批判されているのだ。マラソンは、お笑い芸人・やす子がランナーを務め、自らを育んだ児童養護施設への募金を呼びかけながら80キロ超を走破。ゴールした直後のシーンは瞬間最高視聴率5.4%を記録した。 

 ただ、当日は台風10号が日本列島を縦断中という悪天候。横浜・日産スタジアムでトラック(400メートル)をひたすら周回させるシーンには、「台風の中、そこまで無茶なことをする必要があるのか」「どれだけ同じところをグルグルさせるつもりか」などの批判コメントが殺到した。

放送終了までに集まった金額は4億3801万円

 やす子は、トラックを80周近く走った後にスタジアムから両国国技館に向けて出発したが、白色の薄いTシャツを着用していたため雨と汗でインナーのタンクトップが透けてしまう始末。「スタッフは一体、何を考えているのか」「ハラスメントではないか」との声も相次いだ。 

 やす子は左足を痛めながらも80キロ超を完走し、放送終了までに全国の児童養護施設への募金額は4億3801万円に達した。昨年の募金総額は約8億5000万円だったことを考えれば、単独企画で半分近くを集めた計算だ。少女期を過ごした施設で恩師と再会し、子供たちの夢を受け止める姿は感動的で、今後の寄付によって施設の環境がより良くなることを願いたい。

公道を走っている際に「胸タッチ」

 ただ、マラソンのシーンでは必ず画面上にQRコードが映し出され、キャッシュレスで募金する仕組みに違和感を抱いた人もいるだろう。

 2023年11月、日本テレビ系列「日本海テレビ」(鳥取市)の局長だった人物が「24時間テレビ」の寄付金などを着服していたことが発覚し、再発防止策としてキャッシュレス募金が導入されたのだが、テレビショッピングのように「今すぐやらないといけない」感が満載で、具体的にどのように用いられるのか分からなかったからだ。 

 着服事件の発覚で信頼が傷ついたにせよ、日本テレビ系の「24時間テレビ」という看板がなければ到底お金を集められない仕組みだったと言える。もちろん、懸命に走破したやす子には何ら非はない。やす子が不運だったのは、ゴール直前を走っている時に路上にいた男性から右胸を触られるハプニングが起きたことだ。伴走するスタッフとゴールに向かっていた時、近くにいた男性が右手を伸ばして胸にタッチした。左手に哺乳瓶のようなものを持ち、笑みを浮かべているように見える男性には「これ、痴漢行為でしょ」「20代の女性の身体を異性が勝手に触ること自体が気持ち悪い」「なんで哺乳瓶を持っているの?」といった批判がネット上に殺到した。 

 いつも思うのだが、公道を走っている以上は妨害行為や事故などに遭う可能性はある。番組は伴走スタッフを何人かつけているが、こうしたハプニングも想定できたことだろう。やす子は9月1日の「X」(旧ツイッター)に「ありがとうございました。たっくさんの皆さんのサポートによって無事に完走することができました!!皆様ありがとうございました。終わってみると楽しかったです!!」と投稿し、気にしていない様子だ。ただ、2023年には韓国の女性アーティスト「DJ SODA」が大阪の音楽フェスティバルに参加した際、観客からパフォーマンス中に胸を触られたとして被害を訴えた。台風の中で企画を強行したことにも驚いたが、番組制作サイドはもっと真剣に安全面の配慮を検討すべきだろう。

 チャリティーという看板さえあれば出演者の安全面よりも「募金や視聴率が獲得できれば良い」という感覚を持っているのではないかと疑念を持ってしまう。やす子が無事ゴールし、「X JAPAN」のYOSHIKIらが労いの言葉をかけた場面までは良かったが、番組が生んだ名歌「サライ」を出演者が熱唱するシーンでは新たに歌手やタレントらが登場するわけでもなく、一気に感動が冷めてしまったという人も少なくない。 

何度もCMをまたぐ制作サイド

 今回は、旧ジャニーズ事務所のタレントがメインパーソナリティーを務めることなく、お笑いコンビ「くりぃむしちゅー」の上田晋也が総合司会を務めたものの、バラエティー番組と同じ感覚で出演者にツッコミを入れ、失礼な対応をしていた時にはチャンネルを変えてしまった。これまではマラソン終盤に歌われてきた「負けないで」(ZARD)も流れず、特に盛り上がるわけでもないままゴールを待ち続けた最後には「えっ、このまま終わり?」と発してしまったほどだ。 

 神奈川・横須賀の子ども食堂をタレント・ヒロミがフルリフォームしたのは見ごたえがあったが、何度もCMをまたいで「はい、ここは泣くところね」というような制作サイドの演出には不快感を持ってしまった。せっかくのヒロミの成果を台無しにしてしまったと言えるだろう。 

押し付けがましい感動演出は視聴者も求めていない

 あらゆる情報がスマホ1台あれば簡単に入手できる時代、テレビの不必要な演出に辟易としてしまう人も多い。ネットの動画配信サービスを利用し、YouTubeで面白い動画などを見ていればテレビは不要という人もいる。そういう中で「24時間テレビ」が二桁の視聴率を獲得しているのは、いまだネットでは見られないシーンを求める人々が存在しているからだ。

 高視聴率をたたき出している最近の例で言えば、サッカーやラグビーのワールドカップ、野球のWBC(ワールドベースボールクラシック)といったスポーツが多い。その背景には、ネットでは見られない「リアル」「超一流」といったキーワードが浮かび上がる。

 やす子のマラソンもヒロミのリフォームも、こうしたキーワードに少なからず当てはまっていたからこそ一定の評価を得ているのではないか。「24時間テレビ」の制作サイドが視聴者に「泣きどころ」を押し付けてくるようなことがあれば、せっかくの感動シーンは台無しになる。くれぐれも、二桁の視聴率は制作側の演出が期待されて得られたわけではないことを心に刻んでもらいたい。