約8か月ぶりに復帰をしたマチェイ・スコルジャ監督【写真:轡田哲朗】

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ヘグモ監督からチームを引き継ぐことに

 浦和レッズは9月7日、さいたま市内でマチェイ・スコルジャ新監督の就任会見を実施した。

 約8か月ぶりの復帰でもあり、その第二章がどのようなものになるのか。ベースとなる昨季のことを振り返りながら見通してみたい。

 浦和は昨季にスコルジャ監督が就任して、決勝のみ年をまたいでの開催だったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2022を優勝。リーグ戦ではJ1最少失点を記録しながら4位、ルヴァン杯で準優勝の成績を残した。年末にはクラブ・ワールドカップ(W杯)に出場し、4位という成績だった。しかし、スコルジャ監督は家族の事情で1シーズンで退任に。そして今季はペア・マティアス・ヘグモ監督が率いてシーズンがスタートしていたが、浦和は8月末に解任を決断。スコルジャ氏が新監督として復帰することを明らかにしていた。

 記者会見の席上で指揮官は「(昨季とは)攻守のバランスが変わっていると思うが、素晴らしい試合をプレーしている姿も見た。マティアスさんが残していった哲学も取り入れながら行いたい。特に攻撃面で非常に興味深いことも行ってきた」と話した。これは、昨季の冒頭に「(前年に指揮を執った)リカルド(・ロドリゲス)監督の非常にいい仕事を感じることができる。いいところは残していきたい」と話したことと重なる。

 実際に守備ブロックの構築に関してはより厳格さを求めたが、全体的に見ればベースを流用しながらスタートした。それはスコルジャ監督の得意とする部分の1つなのだろう。今季についても「これから私が行う作業は攻守のバランスを取っていくこと」と話しているが、ソフトランディングと表現すべきか、ゼロからの構築で必要以上に時間を要することなくチームを整える手腕には大いに期待が持てるだろう。指揮官が話したように、最初の4試合をそのフェーズに当てるのではないだろうか。

 そのうえで、すべてにおいてベースになるのは「チームのストラクチャー、構造の部分を維持することが大事だ」という言葉だ。これは昨季の就任時も今回の会見でも触れられた。ピッチ上に秩序のある状態を好む指揮官は、メンバー選考にもその要素が反映された。一例を挙げるなら、少し自由にポジションを移すことで試合に影響を与えるMF中島翔哉を使う際は必ずトップ下で起用し、サイドには置かなかった。ACL決勝を念頭に置いて守備から組み立てたチームはシーズン後半に強烈な過密日程となったが、常に大崩れしないチームであり続けたのはこのベースの考え方が大きいと言えるだろう。

スコルジャ監督の最大の長所は統率力

 一方でリーグ34試合中11試合が無得点という得点力不足でシーズンを終えたのも事実だ。過密日程や夏の移籍ウインドーとの関連で、シーズン後半に思ったよりも攻撃的な部分に手を付けられなかったのも事実だろう。うしろからつないで崩していく質も不足したが、それと同じく「浦和レッズで私が変えたいと思っているポイントの1つに『ハイプレスを増やしたい』ところがある。ボールを失ったらできるだけ早く取り返す、できれば相手のペナルティーエリアの近くで取り返すことをしたい」と宣言していた部分が表現されず、低い位置で守る試合が多くなったことにも要因がある。

 今回の会見では改めて、「いい攻撃をするのはもちろん、そこからどれだけ短い時間で奪い返せるのかも重要になる」と繰り返し、さらに「ゲームを支配して、相手を支配するチームを作りたい」とも話した。相手がうしろからつなぐ場面に対するハイプレスと言うよりも、いい形で押し込んだ攻撃から即時奪回の部分を強調している。ここが表現できるかどうかが、第二次スコルジャ監督時代の大きな焦点になるだろう。そしてこれは、今季ヘグモ監督の指揮下でいい内容の勝利を収めたゲームで多く見られたものだ。前述したスコルジャ監督の「流用する」ことの上手さが手助けになるかもしれない。

 何よりも、スコルジャ監督の最大の長所は統率力と呼ぶべきものかもしれない。選手だけでなくクラブスタッフ、コーチングスタッフの心も掴み、一体感のあるチームにしていく。それは、わずか1年の指揮にもかかわらずシーズン後半には「監督のために」という言葉を発する選手が多かったことからも強く感じられた。また、試合前後の記者会見ではどんな質問にも真摯に答える姿が印象的であり、自分にベクトルを向けるような言葉が多く、審判団や相手チームへの紳士的な態度や言動も目立った。

 だからこそ、昨季終了時の退任は非常に惜しまれながらのものになった。もっとも、それらすべてが今季就任したヘグモ監督にとって必要以上に高いハードルとなった面もあるのかもしれないのだが。

 いずれにせよ、再び秩序のあるチームを作っていくのは間違いないだろう。8か月遅れとはなったものの、望まれていたスコルジャ監督の「2年目」がどこに最適なバランスを見つけていくのかが注目される。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)