82歳料理家・村上祥子 人生100年時代「粗食が理想」は過去のモノで…シニアにオススメ<レンジで短時間・肉じゃが>レシピ紹介
82歳の料理家・村上祥子さん。その元気の秘密は、日々の食事と前向きな考え方にありました。手軽に栄養が獲れる家庭料理を目指した「村上流レンチンレシピ」をはじめ、じぶん時間を目いっぱい楽しむための生きるヒントが満載のエッセイ『料理家 村上祥子82歳、じぶん時間の楽しみ方』より一部を抜粋して紹介します。
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「ちゃんと食べる」で健康を維持
私が82年生きてきて思うのは、「元気のもとは1日3食コツコツ食べる。
食べるが早道、安上がり!」ということ。
毎食、たんぱく質食材130g、野菜100g、ご飯1杯(150g)、そして1日に牛乳1杯が基本。
そして、栄養バランスよく食べること。
こうすると、たんぱく質や炭水化物、ミネラル、ビタミン、カルシウムをバランスよく摂ることができます。
ステーキや鰻など、たんぱく質豊富な食事もいいのですが、経済的に考えても毎日は続けられません。
飽きてもきます。
人間の体は工場のようなもの。
食材を入れ、体内でブドウ糖やアミノ酸に変えてエネルギーを生み出し、筋肉や臓器、血液やホルモンなどを作らなくてはなりません。
料理の基本を知って損はない!
毎日元気に働き続けるためには、コツコツと栄養バランスのよい食材の補給が必要です。
私は仕事をはじめたときから、「うまい」だけでなく、「早い」「簡単」な料理を提案してきました。
専業主婦であっても、働く人であっても、三食毎日作るのは大変です。
早く簡単にできる料理法を紹介して、皆さんに実践してもらえたらと思ってきました。
日本では、料理というものは長い時間をかけて習得するものとされてきました。
女性が家にいて家族のために料理を作ることが建前だったのです。
『料理家 村上祥子 82歳、じぶん時間の楽しみ方』(著:村上祥子/エクスナレッジ)
今は、性別・年齢関係なく、自分自身が生きるために、その燃料を体内に摂り入れるために料理をするという時代になっています。
結婚しない人は、男女問わず自分のために料理を作ります。
また、妻に先立たれた男性も自分のために料理を作らなくてはなりません。
人生、何がどうなるかわからないのですから、料理の基本を知っていて損はないと思います。
たんぱく質、摂ってますか?
日本は野菜を中心とした粗食を理想とする時代がありました。
今はずいぶん変わっています。
人生100年時代になると、いつまでも元気に動ける筋肉を維持する必要が出てきます。
フレイルやロコモなどは、運動不足が原因ですが、食事も大きく影響します。
特に粗食ではたんぱく質の割合が少ないことが心配です。
たんぱく質は、筋肉や骨、皮膚、内臓、血液、爪、髪だけでなく、ホルモンや酵素、免疫細胞など、人間の体を作る元になる栄養素です。
たんぱく質摂取について衝撃的なエビデンスが発表されました。
佐々木敏先生(東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授、医師、医学博士)が指導なさった女性3世代研究です。
全国の栄養士養成学校の新一年生で、母、祖母が健在の人・7000人(つまり三世代で2万1000人)を対象に行った調査です。
たんぱく質の摂取量と虚弱の関連を調べてみると、たんぱく質の摂取量が1日あたり70gを切ると虚弱になるリスクが高いことがわかったのです。
この調査データが発表された2011年までは、体重1kgあたりのたんぱく質摂取量は1gとされてきました。
これでは足りないのではないか?と医師の世界で言われていました。
しかし、根拠となるデータがなかったのです。
そこで、体重1kgあたり1・5〜1・6gが1日に摂りたいたんぱく質の量となりました。
一食では、肉や魚などのたんぱく質食材を130g摂ることになります。
私たちは、体重、身長、年齢により、消化したたんぱく質を吸収できる量が決まっています。
一度に大量に食べても意味がないのです。
1食あたり130gを目安にコツコツ食べることが必要です。
シニアのための実習教室
私は、「シニアの食べ力」を応援できたらと思い、10年前にスタジオを改装し、「シニアのための実習教室」を始めました。
調理器具は電子レンジ。
20人の方が1台ずつ使えるようにスタジオを改装。
東京・西麻布のスタジオ閉鎖で、使っていた電子レンジを福岡スタジオに送りました。
シニアのための実習教室は、40代〜70代の方を対象に、午前・午後2部制でスタートしました。
1クラス20名です。
今ではシニアのための料理教室も(写真提供:Photo AC)
食材を洗う、食べ終えた食器を洗うなど、普段やっていることは、私とスタッフ6名が引き受けます。
生徒さんはレンチンするだけ。
出来上がった料理は食べてもOK。
持ち帰りもOKです。
教室終了後、必須ではありませんが生徒さんにはアンケートも書いてもらいます。
皆さん、自身の食についての質問も書かれています。
赤ペンで答えを記入し、その画像をスマホに送ります。
できない方にはコピーをとって郵送します。
食欲の減る高齢者は、生活の見直しを…
高齢になると、人は「食べ力(R)」が衰えます。
消化器系の臓器は、身体のなかでも加齢の変化が起こりにくいといわれています。
でも、唾液や胃液、膵液などの分泌が減るため、消化酵素が少なくなり、一度に消化できる量が減っていきます。
また、味覚や嗅覚、視覚なども変化するため、食欲自体がなくなる人も多いようです。
「近頃は食欲がなくて、何を食べたらいいかわからない」と悩まれているシニアの方も少なくありません。
そんな方たちに、高齢になると食欲は減ることを前提に、生活を見直すことを提案しています。
自宅でじっとしていてもお腹はすきません。
散歩でも庭の草むしりでもいいので体を動かしてみます。
自然と食欲が湧いてきて「おにぎりが食べたい!」とか「昼はパスタにしよう」など、思い浮かんできます。
できるだけ体を動かして、しっかり食べる。
「村上さん、元気いいですね」と、信号待ちしているときに声をかけられることもしばしば。
「動く」そして「食べる」ことで、いつでも元気でいるのだと思います。
※本稿は『料理家 村上祥子82歳、じぶん時間の楽しみ方』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。