日本時間2日に1日延期で実施されたパラリンピックのトライアスロン(C)共同通信社

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 また汚れたらしい。

【写真】「控えめに言っても最悪」なパリ五輪選手村の食堂

 1日にセーヌ川で行われる予定だったパリパラリンピックトライアスロン競技が大雨による水質悪化で2日に延期された。セーヌ川の水質をめぐっては、五輪でも公式練習と男子トライアスロンが延期に。最終的には水質基準を満たしたとして開催されたが、レース後に体調不良を訴える選手が続出した。東京五輪のお台場もそうだったが、そもそもなぜ水質が問題視される都市部で実施するのか。郊外でやればいいのに、と思うのが自然だろう。

「IOC(国際オリンピック委員会)は『トライアスロン競技は絶対に街中でやりたい』という強い思いがあるのです」

 そう話すのはスポーツライターの小林信也氏だ。

「なぜなら、トライアスロンは開催地の風景とスポーツが融合できる数少ない競技だからです。トライアスロンは2000年のシドニーから採用された競技ですが、そのときオペラハウスをスタートとゴールに設定し、IOC関係者がその風景にとても感動したという。屋内競技はどこでやっているかひと目では分からないですが、トライアスロンマラソンはその国や都市を象徴した景色と一体になれる。東京五輪のときも当初は皇居周辺も候補でした。セキュリティーの問題で実現できなかったが、日本の象徴的な場所でやりたいというのがIOCの思惑だった。トライアスロン側からしても、IOCが力を入れる競技になっているという事実を絶対に手放したくないと思っています」

 小林氏はパリ五輪後にワールドトライアスロンの大塚真一郎副会長を取材。そこでは、問題となった水質に関してこう話していたという。

「大塚さんは『すべては間違いなく基準値以下で実施した』『何か問題があったときに選手が通報できるシステムがあるが、パリ五輪に関して、世界の選手からのクレームや通報はゼロだった』と話していました。そもそもが非常にタフなスポーツ。水質チェックから2時間後に実施の可否が決まるというのもマニュアルに沿ったもので、普段から過酷な環境でレースに臨む選手にとっては当たり前のこと。水質に関しても、事情を知らない周囲が大げさに印象操作をして報じている部分も否めないようでした」

 セーヌ川浄化のため、フランス政府は総額14億ユーロ(約2400億円)の巨費を投じた。IOCが“映え”にこだわる限り、水質汚染問題はこれからも繰り返すことになりそうだ。