グレートバリアリーフの美しいサンゴ礁たちは二度と戻らない形で失われつつある
グレートバリアリーフはオーストラリア大陸北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯で、世界自然遺産として登録されています。グレートバリアリーフ海洋公園管理局が5年ごとに発行する調査報告書によると、グレートバリアリーフは気候変動を主な原因として劣化が進んでいるとのことで、美しいサンゴ礁が回復不可能な形で失われる可能性が示されています。
Outlook Report 2024 | gbrmpa
‘Humanity is failing’: official report warns our chance to save the Great Barrier Reef is fast closing
https://theconversation.com/humanity-is-failing-official-report-warns-our-chance-to-save-the-great-barrier-reef-is-fast-closing-237441
海水の温度が高すぎる・低すぎることや、淡水の流入による海中塩分濃度の減少などでサンゴがストレスを受けると、体内に住まわせている「共生藻」を失ってしまいます。共生藻を失ったサンゴは色を失って真っ白になってもしばらくは生き続けますが、共生藻が光合成によって産みだしていた光合成生産物を受け取ることができなくなるため、やがて死んでしまいます。空中からグレートバリアリーフを調べる調査では、2016年の段階で、全体の93%が白化現象の影響を受けていることが判明していました。
サンゴ礁の白化現象が世界中の海でまん延、「もう元には戻せない」という専門家も - GIGAZINE
グレートバリアリーフ海洋公園管理局が5年ごとに発行している展望レポートは、グレートバリアリーフの健全性や将来の持続可能性などについて調査した結果を報告しています。2024年8月23日に発表されたレポートでは、グレートバリアリーフは依然として世界的なサンゴ礁の危機に直面していることを示しており、主な原因として気候変動や沿岸開発、および違法漁業などの人間による直接的な被害が挙げられています。
展望レポートの中には、過去5年間で一部のサンゴ種の状況が「非常に悪い」から「悪い」に改善したという記載もあります。しかし、クイーンズランド大学環境学部のオーヴェ・ホーグ=グルドベリ教授は、この改善は成長の早い種類のサンゴが回復しつつあることを意味しているのみで、全体的には依然として「悲惨な状況」にあると警告しています。
また、2024年の展望レポートは2023年12月までの5年間を対象としていることも注目すべき点だとグルドベリ氏は指摘。オーストラリアにおける12月ごろから2月ごろは夏であり、2024年は記録的な猛暑の影響で海面の温度が高まり、大規模な白化現象が確認されています。以下の画像は、オーストラリアの複数の大学の海洋生態学研究者らが2024年6月に報告した調査結果であり、画像左が2024年3月、右が2024年6月に撮影されたもの。スライダーを動かすことで見比べることができます。わずか3カ月の間に、同じ場所のサンゴがほとんど死滅していることがわかります。
展望レポートによると、サンゴ礁の状態の悪化は、気候変動によって水温が上昇することのほかに、海洋が汚染されたり、堆積物が流出したり、サンゴ礁をエサとするオニヒトデが大量発生したりといった原因が考えられるとのこと。
グルドベリ氏は「サンゴ礁はひどい被害を受けており、地球温暖化がわずかでも進むと被害はさらに悪化します。人類は地球の気温上昇を抑えるために緊急の対策を取らなければなりません。しかし、現状では私たちは失敗し、グレートバリアリーフ、そして地球全体のサンゴ礁を失い続けています。政府やサンゴ礁管理者が問題の深刻さを認めようとしなかった時代がありましたが、現在はもうそうではないと思います。気候変動は世界的な問題であり、この問題に対処するには、強力な政治的リーダーシップが必要です」と問題の深刻さと改善に向けての姿勢について主張しています。