Microsoftが「Mono」をWineチームに寄贈、Microsoftの手を離れることでMonoが再び活気を取り戻すと期待する声も
Microsoftが、.NET Frameworkのオープンソース実装であるMonoの管理を、Unix系OS上でWindowsアプリを実行するためのソフトウェア「Wine」のWineHQチームに移管したことを発表しました。
Thank you to all the Mono developers! · Issue #21796 · mono/mono · GitHub
Microsoft Hands Mono Over to the Wine Project - OMG! Ubuntu
https://www.omgubuntu.co.uk/2024/08/microsoft-mono-project-to-wine
Microsoftのジェフ・シュワルツ氏は、Monoプロジェクトの公式サイトとGitHubリポジトリへの投稿で「この度、WineHQがMonoプロジェクトのアップストリームの管理を引き継ぐ運びとなりました。既存のMonoプロジェクトのやそのほかのリポジトリにあるソースコードは引き続き利用可能ですが、リポジトリはアーカイブされる可能性があります。バイナリは最長4年間利用可能です」と発表しました。
シュワルツ氏は、MonoプロジェクトがAndroid、iOS、LinuxなどのOSにおける.NET実装の先駆けとなり、クロスプラットフォームでの.NETの活用に貢献してきた実績を称賛した上で、「先人たちの取り組みと、すべてのMono開発者に感謝します」と述べました。
Ubuntu関連情報を扱うニュースブログ・OMG! Ubuntuによると、この発表は一部の開発者コミュニティに驚きを持って受け止められているとのこと。その理由は、Monoプロジェクトが経験した騒動とMicrosoftの傘下に入ることになった経緯にあります。
もともとMonoは、Unix系OS向けのデスクトップ環境・GNOMEの開発で有名なミゲル・デ・イカザ氏が2001年に立ち上げたオープンソースプロジェクトです。
メディアプレイヤーのBansheeなどさまざまな人気ソフトウェアの開発に活用されたMonoですが、やがて多くの批判を浴びるようになってしまったとのこと。というのも、MonoにはMicrosoftの.NET FrameworkやC#言語、および関連ライブラリの一部が再実装されていたため、Linux開発者の間で「少しでもMonoを使うと、Microsoftから特許侵害で訴えられるのではないか」との懸念があったからです。
当時、Microsoftは特許の保護に積極的だったため、Monoの使用に関する懸念は現実的なものだったといわれています。
その後、デ・イカザ氏のMono開発会社であるXimianは2003年にNovellに買収され、2011年にはNovellごとAttachmate Groupに買収されましたが、Attachmate Groupはデ・イカザ氏を含むNovellのMono開発スタッフの大半を即座に解雇しました。
そこで、デ・イカザ氏はMonoを開発するために2011年にXamarinを設立しましたが、Xamarinはさらに2016年にMicrosoftに買収されました。
Microsoftが正式にMonoプロジェクトの所有者となり、ライセンス関係を整理したことで、特許関連の懸念は取り越し苦労に終わりました。そして、Monoは多くのWindows、macOS、iOS、Android向けアプリで使用されていきましたが、Linuxでの人気は戻らなかったとのこと。また、2016年にMicrosoftから無料で使えるクロスプラットフォームかつオープンソースの.NET Framework実装として.NET Core(現.NET)が登場し、Monoと同様の機能を次々と実装したことでMonoの存在意義が低下していきました。
Microsoftの手を離れたMonoの今後について、OMG! Ubuntuは「MonoがWineプロジェクトに移管され、特許問題は解消され、より伝統的なコミュニティ中心の開発モデルに戻りつつある今、Monoが再び活気を取り戻す可能性は十分にあります」と述べました。