今秋配信予定のiOS 18には、身近なプライバシーを守る新機能が搭載される(筆者撮影)

人に見られたくないアプリ、人に見られたくない写真を隠せる機能が9月にローンチとなるiOS 18で新たに搭載される。あまり深刻な秘密を隠すのには向かないが、“ちょっと恥ずかしい”というようなものを隠すために、この機能を使えば、余計なトラブルは避けられるかもしれない。

“万が一”をどう考えるか

みなさんのスマホの中に“秘密”はあるだろうか?


秋公開のiOS 18から、スマホのアプリを隠せるようになる(筆者撮影)

この記事を書くにあたり、筆者のFacebookで「スマホの内容って、パートナーの人にも見られないようになってますか?」と聞いたところ、半日で61件もの回答が集まった。

筆者に近い年齢(50代)が多いこともあり、「万が一のことを考えて、パートナーとはパスコードを共有しているが、普段は互いに見ることはない」との回答が主流だったが、「絶対見せられない!」「親しき中にもプライバシー」という回答もあった。

少し解説すると、筆者の周りのコミュニティには、IT系メディアの人が多く、古くからデジタルデバイスや、ウェブサービスを使いこなしている人が多いので、銀行口座はもちろん、さまざまなウェブサービス、業務関係、保険関係の資料などが、すべてクラウド上にあるという人が多い。

家族がいるなら、このあたりを共有しておかないと、万が一急な病に倒れたり、事故に遭ったりした際に、妻子が来月の家賃の支払いに困るなんてことにもなりかねない。また、亡くなった後も料金が引き落とされ続けるサブスクリプションや、株式などの契約がウェブ上にあり、資産が変動する可能性もある。

筆者は、8年前に『デジタル終活──もしもに備えるデータ管理術』という本を執筆・出版する機会があり、万が一に備えるデータ管理、パスワード管理などについて当時いろいろと調べた。8年の間に、さらに多くの人が、多くの情報をスマホの中に入れるようになり、個人データの扱いに関する問題はより大きくなったと感じている。

秘密にしておきたいこともある

というわけで、家族やパートナーがスマホの中を見られるようになっている人が筆者の周りには多かったわけだが、そうはいっても見られたくない、見せないほうが双方にとって幸せというアプリや情報もあるだろう。

今回のiOS 18の新機能はそういうシーンで役に立つものだ。

具体的に何が隠せるだろうか? ちょっとムフフなアプリとか、あまりプレイしてるのを知られたくないゲームとかが該当する。パスワードをメモしたアプリを隠しておくという使い方もある。


アプリを長押しして、『Face IDを必要にする』を選択するとアプリを非表示に(筆者撮影)

まず、『ロックされた非表示アプリ』という機能は、特定のアプリを『非表示』という秘密のエリアに隠しておく機能だ。

アプリアイコンを長押しすると表示されるコンテキストメニューで『Face IDを必要にする』を選択すると、非表示になる。

アプリを表示するには、アプリライブラリの下端にある『非表示』の領域をタップし、あらためてFace IDで認証する(パスコードの入力でも表示できる)。


非表示エリアのアプリは、『非表示』の領域をタップして、Face IDで認証すると現れる(筆者撮影)

この設定をしたアプリはホーム画面に表示されないだけでなく、設定画面にも表示されなくなる。しかし、バッテリー消費を示す部分に非表示にしたアプリの姿が現れることがあった。現在、パブリックベータとして提供されている機能なので、公式リリースの際に仕様が変更される可能性はあるが、油断はならない。

見つかったら人間関係を破壊しそうないアプリは、そもそも入れておくべきではないが、あえて人に見せたくない、見られてもいいけど説明が面倒そうなアプリを隠しておくのにちょうどいい機能と筆者は感じた。

スマホも画面が大きくなり、いつ覗かれても不思議じゃない。スマホからプレゼン資料をプロジェクターに映し出す機会もありそうだ。ふとした瞬間、見られたくないアプリが表示されることは、いつでもあり得る。

そういうアプリは、後ろめたさなど感じず、この機能を用いて見えなくしておけばいい。Face IDで認証すれば一瞬で再び現れるので、頻繁に使用するアプリでも利便性を損なうことはない。

写真も“一応”隠しておける

写真アプリでも、写真を選択して『非表示』を選択するとサムネイルが見えなくなる。


見られたくない写真を隠しておくことができる(筆者撮影)

iPhoneの画面で直接、写真を人に見せる機会は多い。中には飲み会でハシャギ過ぎた写真や、ちょっと恥ずかしいけど削除したくないなんて写真もあるかもしれない。そんな写真が、不意に人の目に触れるのを防げるのだ。

最近のiPhoneやMacには、スクリーンセーバーにランダムに写真を表示したり、『最近、または過去の日々』としてスライドショーを作り、それをウィジェットに表示する機能がある。そこに望ましくない写真が表示され、場の空気を凍らせたり、余計な説明が発生したりするのを防げる。


写真を選択し、コンテキストメニューから非表示を選ぶ(筆者撮影)

写真アプリの場合も、Face IDでロックを解除できるほか、パスコードで再表示できる。

ただし、写真自体は目に付かなくなるが、『非表示』という項目が出現するので、これを見られ、何が非表示になっているか詰め寄られる可能性はある。


隠した写真は非表示エリアにある。非表示エリアはiCloudでも同期される(筆者撮影)

『写真』アプリの場合、非表示フォルダに入れたということは、iPad、Mac、などのほかのアップルデバイスでもiCloudで同期していれば非表示フォルダに入る(この機能に対応した最新OSにアップデートする必要がある)。

理想は「隠す」と「共有する」の分離

筆者が試した感想としては、『ちょっとしたプライバシーの確保』にはいいが、我が家のように互いにパスコードを共有する間柄では、絶対的な隠し場所にはならない。

 そもそもスマホ以前は、ここまでデジタルデバイスにプライベートな情報が集約されることはなかった。プライバシーの守り方も当然変わる。我が家はほかの手段が浮かばず、結果的にパスコードの共有に至ったが、本来はスマホは持ち主が管理すべきものだ。アップルも家族全員が異なるApple IDを取得することを推奨している。

 アップルはとにかくプライバシーを重視する企業なので、画面を覗き込まれた際にも安心を確保する目的で用意された新機能だ。本当に必要なパスワードさえ家族に伝えてあれば、iPhoneは自分だけがログインできる状態で何も問題はない。外的ハプニングは、この新機能が防いでくれることを願おう。

※iOSのPublic Betaには秘密保持契約(NDA)が指定されており、スクリーンショットの公開などは禁止されていますが、本記事は著者がアップルから特別な許可を得て掲載しています。

(村上 タクタ : 編集者・ライター)