ボーイングが開発中の「世界一長〜い旅客機」客室も規格外!? ANA現主力機の進化系…その全貌とは
実用化されれば全長で世界最大の旅客機となる、ボーイング「777X」の開発が進行中です。この機は現行の「777」から客室のアップデートが図られたとのこと。どのように変わったのでしょうか。
現状では2025年に就航予定
ボーイングの新型旅客機「777X」は、2020年に初飛行し、現状は2025年の就航に向け各種テストが行われているところです。この機は、大型双発旅客機として成功した777の名を引き継ぎつつ様々な改良が加えられました。
そのひとつが「客室」です。現行の777と比較して、どのように変わったのでしょうか。
ボーイング777-9(画像:ボーイング)。
“先代”となる777-200、-300シリーズは双発のワイドボディ(複通路)機として1994年に初飛行。「ジャンボ機」として知られる747の旧型と匹敵する性能を持ちながら、747よりエンジン数が少なく燃費効率が良いことなどから、JAL(日本航空)・ANA(全日空)をはじめとした世界中の航空会社で、747に変わるフラッグシップ(旗艦)機として重宝されてきました。
777Xは、その777シリーズを改良した新型機として2013年に開発スタートが正式発表されました。標準型の「777-9」では胴体の長さも、実用化すれば旅客機としては世界最長となる77mまで延長。またシリーズを通して、新しい複合材料を主翼に用い、エンジンも燃費の良いものに換装してナセル(エンジンカバー)も空力的に改善したといいます。このことで、飛行時の燃費や二酸化炭炭素(CO2)排出量はライバル機より10%低く、騒音も更新の対象となる前世代の機種より40%低くなったと、ボーイングがアピールしています。
こうしたスペックの向上の一環で、777Xの客室もこれまでの777シリーズより改善が加えられています。
ボーイングによると、777Xの客室は、胴体直径そのものは“先代”と同じながら内装となるインテリアの構造部材を変更し、客室の横幅は4インチ(10.16cm)広がりました。窓もライバル機より30%大きく、天井の荷物入れも大きくなったほか、これまでより約40%少ない力で開け閉めができるようになったと言うことです。
「現在の777より広い」はホント?
こうした様々な改善が加えられた客室インテリアの実物大模型が、2024年7月に英国で実施されたファンボロー航空ショーで公開されています。
展示されたのは横に10席が並ぶエコノミークラスですが、高くなった天井と大きくなった窓も合わせて室内に開放感が生まれたこともあるのでしょう。これまでに世界の航空各社で現在飛んでいる777シリーズよりも広く感じました。
2本ある通路も、正確な幅までを測る時間まではありませんでしたが、既存機よりもいくぶん広いように見えます。こうした「わずか」でも増えた横幅は、日本〜北米や欧州線などの長時間国際線で、乗客の疲労軽減に効果があるのだろうと感じました。
なお、国内航空会社ではANAが777-9を発注しており、将来の国際線主力機になると見られます。
ANAのボーイング777-300ER。将来的に777-9へと更新される予定だ(乗りものニュース編集部撮影)。
機内インテリアはこのほか、巡航中の時間経過に合わせて日の出や日没、星空をLED照明により客室内に映し出す仕組みを取り入れています。これは既に導入している航空会社もありますが、視覚的に時間の経過が分かり気分が活性化します。
また、ボーイングの最新鋭ワイドボディ機「787」では客室内の気圧を上げ地上に近い環境にすることで、乗客の居住性を向上させる工夫を取り入れています。777Xでも787と同じレベルである約1800m相当の客室気圧を確保しています。なお、現行の777シリーズの客室気圧は約2400m相当とされており、ここもかなりの改善が図られているポイントでしょう。
なお、展示では合わせて個室形式のビジネスクラスの内装も展示されていましたが、こちらはプライバシーが守られつつゆったりとした空間になっていました。
ANAをはじめ777Xを就航させる各国の航空会社が、こうした新しく広くなった客室を活かして、どのような座席仕様やサービスをそれぞれに打ち出してくるかは、注目すべきポイントでしょう。