平手友梨奈

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 所属事務所からの退所が報じられた、元欅坂46・平手友梨奈(23)。かつてはカリスマ的なイメージで人気を博した平手が失速気味な理由をライターの冨士海ネコ氏が分析する。

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 古今東西を問わず、男性から人気のある女性のタイプの一つに「生意気な妹」キャラというものがある。もちろん美少女であることが大前提だが、もしかするとこの手の女性、最近では敬遠されるのかもしれない。

 例えば、平手友梨奈さん。2022年、海外進出を視野に入れ、韓国の大手事務所HYBE 傘下のNAECOに移籍した時は話題になった。しかしその後、ドラマ「うちの弁護士は手がかかる」主演以外に目立った活動はないままに退所が報じられている。

平手友梨奈

 欅坂46時代は孤高のカリスマとして君臨し、出演するドラマや映画もほとんどが「人となじめない天才美少女」役ばかりだった平手さん。一方でそのイメージ戦略が悪い方向に行き過ぎたか、撮影中に気が乗らずディズニーランドに行ったとか、遅刻やドタキャンの悪癖とか、「もっとレベルが高い現場かと思ってた」とスタッフに漏らした苦言など、いろいろな悪評も立ち始めている。

 気まぐれで型破りな一面を出すことで、常識の枠にとらわれない天才少女と印象付けたい。もしかするとそういう事務所戦略だったのかもしれないが、奔放さが許されるのはギリギリ10代までではないだろうか。まだまだ若いとはいえ、平手さんも23歳。「生意気な妹キャラ」を免罪符にするには、そろそろ潮時だろう。

 韓国アイドルグループでは、「マンネ」と呼ばれる最年少メンバーは末っ子キャラとしてかわいがられる。ちょっと生意気だったり、おっちょこちょいだったり、だけどステージに立つと気迫みなぎるパフォーマンスで観客を魅了するというポジションだ。もともと平手さんも、欅坂加入当初はあどけない末っ子キャラというイメージが強かった。といっても韓国では兵役や後輩アイドルの出現といった世代交代を経て、「末っ子」特権を卒業し大人の魅力を身に付けていく。

 でも平手さんの欠点は、わがままをつけあがらせた関係者らが悪い、というよりは、年を重ねても末っ子キャラとして扱ってくれるような現場にしか立たなかったということではないかとも思うのだ。

 目を引く存在感、高い表現力。平手さんの天才性はよくそう描写される。でも実は、「最年少」という冠が一番重視されていたように思う。「グループ最年少センター」や、「最年少座長」。天才は天才でも、早熟の天才というインパクトをつけるため、平手さんは常に年上のタレントにばかり囲まれていた。

年上の俳優たちとは仲良しでも……平手さんの天才性を担保する「最年少」に迫る賞味期限

 会見やドラマの番宣でも笑顔を見せないことが注目されがちな平手さんだが、だからといって孤立しているわけではないらしい。映画「さんかく窓の外側は夜」で共演した岡田将生さんや志尊淳さんとは仲良しで、「響-HIBIKI-」で共演した北川景子さんも非常に平手さんをかわいがっている。「うちの弁護士は手がかかる」でも、ムロツヨシさんの気遣いに励まされた、と平手さんが語っていた。共通点は皆、平手さんより年上ということ。ちょっとくらいの不機嫌さも、「小生意気な妹キャラ」としてかわいがってくれる現場であれば、うまくいくということだろう。

 同じようなタイプとして山本舞香さんがいるが、彼女もまた、藤森慎吾さんや松岡昌宏さんなど、お兄ちゃんキャラの庇護によって許されてきた人だ。平手さん同様にアンチも多いが、不思議と仕事は途切れない。

 しかし年を重ねるにつれ、どんどん後輩は増えてくるもの。顔がかわいくて歌や演技がうまい「天才少女」は、平手さんだけの代名詞ではなくなっていく。いつまでも孤高の天才美少女役ばかりでは、演技の幅だって広がらないだろう。「最年少」を外してもなお残る、平手さんなりの天才性を見せられるかが問われている。

「生意気」評価を覆した広瀬すず 立場より結果で見せた天才性の根拠

 翻って、天才的な存在感と美貌を示してきた妹キャラの成功例といえば、広瀬すずさんが思い浮かぶ。まばゆいほどの美少女としてデビューしながらも、「どうして照明さんになりたいと思ったんだろう」という失言で大炎上。他にも、34歳の大野智さんに「40歳くらいかと思った」と言ったり、よく言えば天真爛漫な末っ子キャラならではの発言の数々は、さまざまなところで波紋を呼んだ。

 だからだろうか、バラエティーからは一線を引き、シリアスなドラマや映画ばかりに出るように。やはり役柄は平手さん同様、親や世間から見捨てられた美少女という役どころがやけに多かった。

 しかし「生意気な妹キャラ」から「薄幸で陰のある美少女」にシフトし続けて、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞受賞や紀伊國屋演劇賞の最年少受賞。さらに紅白歌合戦の司会も務め上げた。今では彼女をただの末っ子キャラ扱いする人はおらず、きちんと実力のある女優として見ている人も多いだろう。

 平手さんにしろ広瀬さんにしろ、彼女たちの軽はずみな言動が許されてきたのは、天才的な能力というより、単に若いから目をつぶってもらっていたという面が大きいに違いない。しかしそれは、一人前に扱われてはいないということでもある。

 天才性を強調する「最年少」が、「センター」や「座長」といった“立場”について回る平手さんと、「受賞」といった“結果”についてきた広瀬さん。「生意気な妹キャラ」が立ち行かなくなった時、どちらが説得力を持つのかは明らかだ。

 平手さんの移籍先として候補に上がっているのは、Adoさんというこれまた天才のいる事務所のようだが、Adoさんのほうが年下。妹キャラも最年少という立場も通用しなくなったいま、平手さんが本当に天才かどうかが、はっきりするのではないか。

 スタッフとの「不協和音」を起こすことにかけては天才などと言われるだけでは面目が丸つぶれだ。傍若無人に振る舞う「天才っぽさ」を取るか、多少きゅうくつな思いをしても天才たるプライドを見せるか。年齢的な意味でも精神的な意味でも、大人になった平手さんならではの表現を今度こそ見たいものである。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部